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井の中の恋愛  作者: んーと
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告白の作法を知らず

オタクってめんどくさいですよね。

かくいう私もオタクです。


巣にこもるタイプのオタクなので、声のでかいオタクがこの世で42番目に苦手です。

深夜2時

明日は朝9時から専門学校の授業があるので寝なければいけない。


しかし、そんなことはどうでもいい。

何せ、僕に人生初の彼女ができそうなのだから。

いや、これから確実にできるのだから-------


僕は今同じ学校の女子とメッセージのやり取りをしている。

2か月前に今のイラスト系の専門学校に入学して知り合った同じクラスの女子だ。

名前を杏里という。


専門学校はいい。小中高のように多種多様な人間が集まる場所とは違い

【専門】となるとある程度同じ趣味の人間が集まる。

友達のできるスピードも桁違いだ。


話を戻そう。

今、杏里との会話が以上に盛り上がっている。


最初はクラスのグループで明日の授業が~とか、~~先生が~とか。

入学してからほぼ毎日行われている会話を楽しんでいたのだが

突然杏里から僕宛にメッセージがきた。


「ねぇ。グループの会話面白くないからこっちではなそー。」

「いいよwww」


ちょっと。いやめちゃくちゃドキドキしてる。

なにせ杏里はかわいい。しかも話も合う。正直好きだ。

ちょこちょこ個人間のやり取りはしていたが、その都度ドキドキする。


「明日提出の課題やった?」

「やってないwwwどうしよwww」

「私も(笑)スマホゲームばっかりやってる(笑)」

「わかる・・・今月課金もやばいww」


やり取りは他愛ない。

普段男友達と惰性でしているようなこの他愛ない会話が、たまらなく幸せだ。

もう深夜1時55分。ふっ、あと5時間はいける。


「秀樹寝ないの?」

「まだ寝ないよー。杏里は?」

「まだねない。付き合わせていたらごめんね。」

「全然!てかなんでわざわざ俺にLINEしてくれたの?www」

「えーー。」


そこから3分程返事はなかった。


「あれ?寝た?www」

「おきてるー。」

「起きてるじゃんwどしたの?」

「なんでもないです!」

「え~wwそのなんでもないはなんでもある!」

「う~」

------深夜2時-----

僕は確信した。

【杏里は、僕の事が好きだ!】

ここまで言い淀むのは、もう「好きだから!」でしょ!

押せ!押すんだ!西村秀樹!!


「うーじゃなくて!どーして他の女子じゃなくて俺に連絡したの!」

「言わなきゃだめですか・・・?」

「だめです。言うまで寝ません。」

「う~~~~」


ちょっと待てよ。

ここまで勝ち確な演出があっていいのか?

あれかもしれない。最近動画サイトの広告でよく見る「罰ゲームであのイけてない男子に告白~」のやつでは!?除毛クリームのやつでは!?自信が無くなってきた。


「ごめん意地悪し過ぎたwww言わなくて大丈夫!」

「好きだから!」


送信タイミングが全く同じだった。


「え」

「え」

「えっと、これは、好きとは」

「寝ます」

「僕も好き!!!」


あぁ。送ってしまった。


「勢いで言ってない?(笑)」

「本気で言ってる!」

「私のはほぼ誘導尋問だったんですが・・・」

「ごめん!だからちゃんと言う!好きでう!付き合ってください!」

「好きでう(笑)」

「好きです!!!!!!!!」

「よろしくお願いします(笑)」


僕は両親、弟、犬の順番で報告して回った。

時刻は深夜2時半。祝い半分、怒り半分のリアクション。


そのあとはお互いうまく話せず、3時頃にはおやすみ~と送った。

が、僕は寝れなかった。



翌朝。一睡もせずに学校へ。

教室に入ると杏里・・彼女がいた。


「おはよ!眠そうだね(笑)」

「寝れんかった・・」

「え~(笑)」


会話はそこで途切れた。

いつも通りといえばいつも通りの会話。

が、お互い目を合わせられなかった。


お昼休み。

彼女からメッセージがきた。

「今日学校終わったらデートしない?(笑)」


キタ。デート。初彼女からの初デート。

どこだ?どこに行くべきだ?

カラオケ?いや歌には自信がない。

映画?今なにやってるんだ・・?

図書館?ボーリング?海??

あ、そうだ。


「ウチ来ない?」

オタクくんさぁ・・・

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