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ガチムチ❤️ももたろう

柴野いずみ様主催『ガチムチ❤️企画』参加作品です。


とにかく筋肉と昔話のコラボです。

勢いに任せてお読みください。

 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、上流から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。

 おばあさんは、


「糖質の塊……。しかしウェイトとしては悪くないのう……」


 と、桃を軽々と持ち上げて家に帰りました。

 そこにおじいさんも帰ってきました。


「何じゃばあさん、それは」

「ウェイトじゃ」

「ふむ、なかなかの質感。しかし桃は足の早い果物。腐らせるのは勿体ない。しかし儂らに糖質は毒にも等しいからの。細かく分けて村の者に配ろう」

「そうじゃのう」


 おばあさんが手刀を振るうと、桃は一口大の大きさに切り刻まれました。

 そして中から、


(え、うそ、こんな展開聞いてない……)


 と言いたそうな怯えた目の赤ん坊が現れました。


「おお、めんこい子じゃのう」

「桃から生まれたから大腿四頭筋太郎と名付けよう」

「おじいさん、モモ違いですよぉ」

「わっはっは」

「おっほっほ」

「……」


 赤ん坊は死んだ目で二人を見つめる事しかできませんでした。




 そんな赤ん坊は(もも)太郎と名付けられ、おじいさん、おばあさんの愛情をたっぷり受けて、むきむきと育ちました。

 そんなある日、悪さをする鬼の噂を聞きました。

 (もも)太郎は言いました。


「おじいさん、おばあさん、鬼とは強いのか」

「あぁ、強い」

「そしておっかないって聞くねぇ」

「そんな者を相手にすれば、我が筋肉は更なる高みに近づく。……鬼ヶ島に行く」

「……そうか、男ならいつかそんな日が来ると思っておった」

「……それならこれを持ってお行き。とっておきのお団子だよ」

「感謝する」


 こうして(もも)太郎は鬼ヶ島に向かいました。

 途中、犬に出会いました。


「素晴らしい筋肉のお方……! 貴方のその鍛え抜かれた身体に惚れました……! お供にしてください!」

やぶさかではない」

「ありがとうございます!」

「これを食うと良い」


 (もも)太郎はおばあさんからもらったプロテイン団子を渡しました。

 一口食べた犬は、


「な、何だ……!? 力がみなぎる……!」


 マッスルウルフに進化しました。

 マッスルウルフを連れた(もも)太郎は、更に旅を続けます。

 すると猿に出会いました。


「何て完成された肉体……! 完璧なる黄金比……! あなたと共に高みを目指したい……! 弟子にしてください!」

「吝かではない」

「ありがとうございます!」

「これを食うと良い」


 (もも)太郎はおばあさんからもらったプロテイン団子を渡しました。

 一口食べた猿は、


「これは……! 身体の細胞一つ一つが歓喜の産声を上げている……!」


 マッスルゴリラに進化しました。

 マッスルウルフとマッスルゴリラを連れた(もも)太郎は、更に旅を続けます。

 すると雉に出会いました。


「筋肉の寵児……! 鍛錬のいただき……! 神はここにおわしたか……! その身に仕える事をお許しください……!」

「吝かではない」

「ありがとうございます!」

「これを食うと良い」


 (もも)太郎はおばあさんからもらったプロテイン団子を渡しました。

 一口食べた雉は、


「おぉ……! 光が見える……! これが進化の灯火……!?」


 マッスルウイングに進化しました。

 マッスルウルフとマッスルゴリラとマッスルウイングを連れた(もも)太郎は、とうとう鬼ヶ島に到着しました。

 侵入者を迎撃しようと飛び出して来た鬼達は、


「何て美しいんだ……!」

「あんな身体を一度でも持てたら……!」

「ヒューッ! 見ろよやつのお供を……! まるでハガネみてえだ!!」

「こいつはやるかもしれねえ……」

「くそう、俺の筋肉が嫉妬で泣いていやがる……!」

「勝てない……! 男としても、筋肉探求者としても……!」


 次々と畏敬の念に打たれて戦意を失いました。

 そこに鬼の大将が出て来ました。


「……どえらい男が来たようだな……」

「お前がここの大将か」

「いかにも! 俺の筋肉を見さらせ!」


 大将が全身の筋肉を隆起させ、ポーズを取りました。

 そこには発達した筋肉だけではなく、それを最高の輝きで見せようとする積み重ねからなるそれは、川に磨かれて丸くなった巨石を思わせます。

 それを見た(もも)太郎もおもむろにポーズを取ります。

 それは大将とは対照的な、荒削りで、だからこそ力強い、まるで険しい岩山のようなポージングでした。


「……ふっ、格が違ぇや……」


 鬼の大将が負けを認めました。

 お供が歓喜の声を上げました。




 こうして(もも)太郎は鬼達から宝を取り返した上に、鬼を子分として従え、お供のマッスルウルフ、マッスルゴリラ、マッスルウイングと共に身体を鍛えます。


「おい! まだまだ追い込めるぞ! 筋肉をいじめ、そして愛するんだ!」

「はい! (もも)太郎さん!」


 村には今日も野太い声が響き渡るのでした。

 がちむちがちむち。

読了ありがとうございます。


次話は『ガチムチ❤️きんたろう』でお送りします。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 肉体言語に種族の壁なんて無いんやな( ´∀` )
[良い点] 赤ん坊の頃はおじいさんとおばあさんを死んだ目で見ていた腿太郎がむきむきと育ち、鬼達とポージング対決で勝利しているのが面白かったです! マッスルに育てられるとマッスルになるんですね(笑) […
[良い点] 『大腿四頭筋太郎』 いきなり笑いました! 『がちむちがちむち』 終わったと見せかけてまた笑ってしまったじゃないですか!
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