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小椋夏己の見聞録  作者: 小椋夏己
2024年 10月
51/55

「虎に翼」後半(ドラマ)

 前半で手放しで褒めていた「虎に翼」ですが、一応最後まで面白かった、とまず言っておきます。


 何しろ最後の最後、ドラマが終わる瞬間まで手を抜いてなくて、ラストでは鳥肌が立つほどでした。いや、名作の一つに残るドラマだと言えると思います。


 ただ、後半になって、それこそ「はて?」と思う部分が色々あったので、どう書いたものかと今まで手を付けられずにおりました。


 ストーリーは「前半」で書いたそのまま、主人公が当時は女性が受け入れられてなかった法曹界に入り、道を切り開いていくというお話です。まずはいい点から書いていきます。


 他の評論の方とかが書いていらっしゃって、前半にも書いたんですが、


「無駄な人がいない」


 この点は本当に良かったと思います。


 主人公を持ち上げるだけのためにちょろっと「なんだこれは」と思う人が出てくることもあるんですが、ほぼ全員がきちんとそれぞれの人生があり、きちんと意味があってその生き方をしているのは良かったです。主人公と一緒に大学に入って法律の道を進んだ仲間たち、中には全うできなかった人もいますが、全員の生き方が「貫いて」いました。ただ、その中に「その貫き方はどうよ」という部分もないことはなかったんですが、まあ、それはある程度しょうがないんでしょう。


 その中でも一番濃かったのは「よねさん」です。初登場のシーンから男装で、感じ悪い女性なんですが、


「よねさんはそのままで、感じ悪いままでいて」


 と、主人公がかなり前半で言っているように、そのまま、最後まで自分を貫いて、そしてとても感動させられました。過酷な人生を歩んでいる人ですが、それを決して曲げなかった。本当に拍手です。


 ドラマ全体としては、


「後半になってぶれた」


 との感想や評価ももちらほら耳にして目にして、その部分もなんとなく納得はできますが、全体通してかなり点数が高いドラマであったことは間違いがありません。


 ただ、私がどうしても嫌だったのが、主人公が再婚した週です。あの週だけは、もうどうにかしてくれと本気で思いました。


 LGBT問題。現代あるそれを、戦後間もないと言っていい時期にそのままぶちこんでる。とても違和感がありました。


 一番は、主人公のモデルになった三淵嘉子さんは本当に再婚だったんですが、普通にと言ってはなんですが、さすがに御夫婦共に法律の世界の方なので、普通に結婚なさってます。それを主人公が「結婚でそれまでの苗字を失うのはなんでだ」ということで、事実婚ということにしてしまった。

 本当に三淵さんはそれまでの苗字にこだわられたそうなんですが、それは前夫の「和田」さんの「和田」という苗字に思い入れがあったようで、自分の生まれた時の苗字の「武藤」にはさほどこだわりはなかったようです。ドラマでも主人公は最初の結婚の時にすんなり苗字を変えてますしね。三淵さんは結果、自分は三淵に変わったけど、息子さん(ドラマでは娘)を和田のままにして、和田姓を継がせていらっしゃいます。それほど亡くなった最初のご主人を愛してらしたようですね。


 ですからこれ、かなり失礼だと思います。もしも当時、本当に事実婚なさったのならそれはそれで「あり」だと思います。私の名付け親の大伯父と大伯母も事実婚でしたが、これは昔は家を継ぐ長男長女は婚姻できないということでそうして、戦後も不自由がないのでそのままで、私が2歳になる前に大伯父が亡くなるまでずっとそのままでした。

 当時って今ほど「苗字がー」とかって、いい家とかでないとこだわりのない人も多く、「跡取りがないから養子になって」「いいですよ」みたいのも結構ありました。私の友人の両親も「取子取嫁(とりことりよめ)」といって、養子にもらった子が配偶者を持って家を継ぐみたいのでしたが、そういうの多かったみたいです。私の親戚にもあります。そもそもモデルになった三淵さんのお父さんがそれで「武藤」になった方、とてもそこで「苗字がー」と騒ぐようには思えません。


 なのに、当時「苗字がー」と悩んだ挙げ句、法律遵守しないといけない二人が事実婚にして、仲間たちがなんだか妙な誓約書みたいのを作って、「私達は法律にしばられない二人の結婚を認めます」みたいなのをやって、とっても気持ちが悪かったです。


 このドラマ、主要人物に同性愛者の男性も出てきて、「パートナー」として相手の方もきちんと出てきてるんですから、その祝福するならこの二人にしてあげてほしかった。形としてはいいと思うんです、そういう祝福も。でも、実際に入籍して、法律に則って結婚してる二人に当てはめるのはどないやねん。


 他に、主人公の当時中学生の子どもをLGBTの人の集まりに連れてって、元男性で女性になった方になんか色々「女とは」みたいなことを言って聞かせるのとか、あれはないだろうと思いました。女性に生まれただけが女性じゃないって、いや、女性に生まれたら女性だから。意識しなくても女性だから女性なんだと思います。元男性って意識があるから、あえてそんなこと言うわけで。


 他にも、


「ちょっとその意見は一方的すぎ」


 という場面がちょこちょことあり、その部分では首を傾げる他ないんですが、まあ、そのあたりを「そういう意見もあるんだな」と冷静に見られるのなら、一度見て欲しいドラマではありました。


 何よりのラストは、そこだけでも見る価値ありです。オープニングのアニメと音楽も素晴らしかったけど、2番までの完全版アニメも公開されていますので、よろしければ一度見てみてください。米津玄師さんの歌は本当にドラマにぴったりで、すばらしいオープニングをありがとうです。


 それから感想ではないですが、


「俺には分かる!」


 ドラマでゴリ押ししてた「はて?」や「すん」はすっかりスルーされてしまったけど、今でも主人公兄のこの言葉はつい口から出てくるほどで、


「とらちゃんはわかってない」


 と、花江ちゃんごっこも今でもついやってしまうので、兄夫婦のスピンオフとかやってくれないかなあと真剣に思ってます。あの夫婦、また見たいんですよ。本当によかったです、あの二人。

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