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小椋夏己の見聞録  作者: 小椋夏己
2022年 11月
11/57

タマスターラー(小説)

 分類は「インド幻想夜話」となっていますので、それで。


 日本ではあまり名前が知られていなくて、私もこの作品しか読んだことはないんですが、イギリスの女性作家タニス・リーのインドをベースにしたファンタジー作品集です。

 今回これを書くにあたって調べてみたら、もう作者は亡くなっていました。

 

 読んだ当時、タニス・リーはインドで育った、みたいな記事か何かを読んだように思っていて、今の今までそう思っていたんですが、ネットで調べるとそういう記述を見つけることができませんでした。勘違いかなあ。でも、そう思うほどインド好きから見てもインドの作品と思える作品群です。


 数話のファンタジーからなった一冊ですが、一番印象が強く残ったのは「輝く星」というインドの映画スターの話です。


 インドはご存知の方も多いでしょうが、映画大国です。「ボリウッド」と呼ばれる旧ボンベイ、現在ムンバイで今も大量の映画が生まれ続けています。

 そんな国ですから、映画スターを夢見る人も多い。今作の主人公も、そんな中で星をつかんだスター女優です。


 日本でもそうですが、スターの私生活を知りたい、少しでも長く見ていたい、ファンならそういう欲求は当然ありますが、このお話の中では今のネット時代を予見するように、スターの生活が有料で配信されています。調べたら日本での発売が1987年ですので、ちょっとびっくりするような話ですよね。

 貧しい人でも小銭を払うと何分かスターの生活を覗き見ることができます。家の中に、どうやっても見られるのが嫌ならカメラのないスペースもあるのですが、スターがずっとそこに閉じこもっていることはできません、会社から注意がきたりもします。ヒロインは夢のスターになったものの、そういう生活に疲れてきます。


 そしてファンがスターからもらいたいものというと、サインだったりもしますよね。これもファンが多すぎて、一人ずつ書いてはいられない、その代わりに本人専用のスタンプを持っていて、それをぽんぽんと押していきます。みんな、少しでもスターから何かをもらいたいんです、私生活を見せてもらうことでも、スタンプでも。

 そんな中、彼女にやはり同じスターの恋人ができます。もちろん公表はできませんが。そして、そんな二人が思わず逃げ出した先でファンに見つかり……


 どういう結末かはあえて書きませんが、こういうことあるかも知れないと思いました。

 日本と違ってインドでは貧富の差も大きい。貧しい人の唯一の心の癒やしが映画であることも多いです。日本よりもっと映画のチケットが安く、ぎゅうぎゅう詰めの映画館で立ったまま見るにしても、それでももっとスターの姿を見ていたい、そう思う人たちがこの作品にはたくさん登場します。

 

 ファンタジーというと西洋風か、今は私もはまっている中国ドラマのような背景が多いんですが、これは珍しくインドっぽくて、すごくエキゾチックで面白かったです。

 

 私はおそらく表紙の絵に惹かれて買ったと思います。漫画家のおおやちきさんの、インド! って表紙に心奪われる人は少なくないでしょう。

 今はもう絶版になってるのか、重版されたかどうかも分かりませんが、ネットで中古で200円ほどでも購入できるようですので、ご興味のある方はどうぞご一読ください。

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