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夕霞たなびく街の噺屋さん  作者: 秋丸よう
9/29

【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その4

『霞の言葉に力を与えよう、我の言の葉を与えよう、今一度逢魔が時に帰しましょう、住み着く者、名はブラウニー。来なさい!』



 そう言うと、経典からにょきっと全体的に茶色い服を着た、髪は伸ばし放題で誰もが多分、第一印象は汚いと感じる、身長は1メートル弱の小さいおっさんが何人か出てきた。

 なんじゃあの汚いおっさんは。


「ブラウニーさん、早速で悪いのですが、1階の本の片付けをお願いできますか?」


 その言葉を聞いたブラウニー達はせっせと1階に行ってしまった。


(さき)さん、あの小さいおっさんはなんですか?」

「くっふふっ……おっさんじゃないですよ……あれは『ブラウニー』と言う家事などを手伝ってくれる妖精です。普通は人のいない時に仕事をしてくれるんですが、使役しているので私の言う事を聞いてくれるんです。普通はまず会えませんよ。そして、先程私が口にした言葉が『呼び出しの言の葉』と言うものです。あの言葉は私がこの経典に封印した力などを呼び出し、顕現させてくれる“鍵”みたいなものです。ゆくゆくは春翔さんと智也さんにも覚えてもらう“言の葉”の1つですね。これは2番目に重要なので、ちゃんと覚えて下さいね」

  


 言い始めは笑いを堪えていた幸さんだったが、最後には真剣な表情になっていた。

 よほど重要なのであろう。俺は頑張って覚えようと思った。ん? てか、覚えないといけない事ってどれくらいあるんだ?というか、妖精もゲッツできるんだな……春の家が抜けてるってのも気になるな……





 はてと思っているとブラウニー達が帰ってきていた。仕事が終わったようだ。

 何やらソワソワとしている。


「手伝ってくださったお礼に、お菓子はいかがですか?」


 幸さんがお菓子の入った皿を近づけると、ブラウニー達はわらわらとお菓子に群がっていった。美味しそうに食べている。


「こいつらってすごく汚い格好をしているんですけど、服とかあげないんですか?」


 幸さんに向かって質問すると、ギョッとした顔で智也(ともや)が答えた。


「えっはるちゃん知らないの? ブラウニーに服をあげると家から出て行っちゃうんだよ。はるちゃんもオカ研部員なんだから、それぐらい知っとかないと。勉強不足だなぁ〜」


 めちゃくちゃ馬鹿にされた。

 俺はムッとした。

 俺に万年勉強で負け続けているやつには言われたくないと思った。

 そういう事ばっかり覚えてるから俺に勝てないのだ。


「確かに基礎的な知識はつけてもらわないといけないですねぇ〜」


 幸さんは少し困った顔で俺を見た。

 幸さんが智也の肩を持つなんて! ショックだ……でも確かに幸さんの弟子になるためにはそういうものの知識をつけなきゃいけない。正論を言われて心に突き刺さる。


「はっ、ざまぁねぇな」


 奏多(かなた)くんもハハッと笑いながら馬鹿にしたような目でこちらを見る。

 ……奏多くん……君は黙ってなさい。


「うぅ……頑張って勉強してきます……」


 いやはや、覚えることがたくさんである。これからの毎日がえらく大変になるぞぉ!



 そうこうしているうちに、ブラウニー達がお菓子を食べ終え、満足そうにしていた。


「仕事もしてもらったことですし、帰ってもらいましょうか。どうぞ、お帰り下さい」


 ブラウニー達はどんどん机の上に開けて置いてあった経典の中に吸い込まれるようにして、帰っていった。


「こういう妖精など生きている者の場合は『お帰り下さい』という言葉で経典の中に戻ってくれます。物の場合は直接経典の中に入れてください。ほらこんなふうに……」


 幸さんはそこら辺にあった本を持って、経典に押し付ける仕草をする。勿論だが普通の本なので経典には入らなかったが、幸さんの動きを見て、理解できた。


「他に覚えてもらう言の葉はですね……束縛、終幕、譲与とかですかね……大体ここら辺を覚えていたら、難なく噺屋として活動できますね。あ、でも、『譲与の言の葉』は幽霊に力を分け与えるものですが、力加減が難しいので春翔さんと智也さんはまだ使わないようにしてください。力を分け与えすぎると、それに耐えられず、消滅してしまう幽霊が出てきたり、悪霊になったりするので経験を積んでから使うようにしてくださいね!」



読んでいただきありがとうございます。

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