【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その9
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気付くと、俺は病院のベッドの上にいた。
1番最初に見たのが白い天井。腕には、点滴の針が刺さっていた。は? なんで? 何処ここ? 病院?
「ああああ〜はるちゃん! 目ぇ覚めたよ! おーい! 花澄さん! 華乃さん! 爽介さぁん!」
「しっー! 久遠さんっ、もうちょっと静かにしてください!」
「あっすみません……」
智也は看護師さんに大声をだしたことで怒られて、しょぼしょぼと声が小さくなった。
花澄は俺の姉、華乃は俺の母、爽介は俺の父である。皆俺の周りに集まった。全員勢揃いだ。
「渡瀬さん、気分はどうですか? 何処か痛いとか、何かありませんか?」
看護師さんがにこやかに話しかけてきた。
「まだちょっと怠いですけど大丈夫です。ありがとうございます」
俺がそう言うと、看護師さんはニコッとまたもう一度笑いかけてから、病室を去った。
そこから父以外の家族からの罵倒攻めが始まる。
「春翔っアンタまた夜更かしして体調崩したんでしょ! 病院でお世話になるまで遊ぶなんて、情けないわ!」
「はる、アンタ馬鹿だねぇ……嗚〜呼、門限早くなっちゃうわよ」
「はあっ! 俺最近ずっとめっちゃ健康に過ごしてたわ! 決めつけんなよ!」
「まあまあ、そんなに言わなくてもねっ……どうどう……」
母を宥めようとした父はキッと鋭い視線を母に向けられた。すると一瞬で父は萎れてしまった。
母がガーっと俺にキレている、そんな時だった。
「春翔さん、大丈夫ですか? お見舞いに来ましたよ」
幸さん達が来たのだ。
突然の来訪に俺はびっくりした。母達も驚いてる、と言うより、見入っている感じがした。
「おい、幸さん呼んだのお前だろ! 幸さんも忙しいんだから、ちょっとはそういうこと考えろよ!」
「だって、はるちゃん、倒れる前変なこと言ってたんだもん。だから呼んだの! 俺ってば偉いでしょ! 褒めて遣わせ!」
俺は智也を引き寄せ、幸さんに聞こえないように話した。すると智也は自慢げに、幸さんにはっきり聞こえる声で答えた。
こしょこしょ話していたら、母達が興味津々な顔をして聞いてきた。
「ねぇ! あのちょー美人さんと、美少年、誰よ! どういう関係なのよ! 教えなさいよ!」
「あの美少年誰!? ちょー好み! ちょっと紹介してよ! はる!」
「俺まだ気分悪いんだよ……揺らすな!」
俺は母、姉貴にガックンガックン揺らされて、落ち着いていた気分が悪くなる。
その様子をジ〜と見ていた幸さんはクススッと笑いながら口を開いた。
「はじめまして。私は八月一日古書店の店主、八月一日幸と申します。春翔さんのバイト先の店主です。こちらはスタッフの真宮奏多くんです。智也さんから連絡があったので心配で様子を見にきました」
幸さんは丁寧な口調で心配そうな視線をこちらに向けて自己紹介をした。奏多くんはむすっとした顔で何にも話さなかった。
それを聞いていた家族は幸さんの綺麗な声に聞き入っていた。
「八月一日さん、お肌とかめっちゃ綺麗ですね……どうやったらそんなに綺麗になるんですか? あと真宮さんめちゃくちゃかっこよくないですか!?」
「こらっ姉ちゃん! 幸さん困ってんだろ! そんな質問すんなよ!」
1番ポカンとしていた姉貴は開口一番ものすごくどうでもいい質問をした。
幸さんは少し困りながらも答えようとしている。すると奏多くんが痺れを切らしたように口を開いた。
「はー……幸さん、そろそろここにきた目的を果たしましょうよ。というか姉も馬鹿なんだな」
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