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夕霞たなびく街の噺屋さん  作者: 秋丸よう
11/29

【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その6

***


「ああ……そうだ。夕方は逢魔時(おうまがとき)とも呼ばれます。あの世とこの世の境界があやふやになる時間帯ですので幽霊、妖怪といった類に遭遇しやすくなっています。どうか気をつけて帰ってくださいね……」


 質問することや話したいことを話し合った後、帰ろうとした時にふと(さき)さんに話しかけられた。


「どういうことですか?」

「雨で暗くなっていて、見分けにくくなっています。ですからどうか気をつけて帰ってくださいね」


 幸さんは心配そうに見送ってくれた。





***


 ティータイム(実際は質問会)が終わり、外に出ると、もちろんまだ雨は降っていた。

 まだ夕方だと言うのに、視界はかなり悪く、夜のようだ。

 商店街にはアーケードがあるので、傘をさしている人は見当たらなかったが、商店街の外に出ると、街行く人々の顔はさした傘で見えず、異形たちが闊歩しているかのように感じた。


「ねえ……なんか今日一段と暗くない? まだ夕方なのに」


 先に智也(ともや)が話しかけてきた。キョロキョロビクビクしている。


「それな。やっぱ妖怪とか幽霊がいるって分かったから、本能的に怖がってんのかな……」

 


『ああ……そうだ。夕方は逢魔時(おうまがとき)とも呼ばれます。あの世とこの世の境界があやふやになる時間帯ですので幽霊、妖怪といった類に遭遇しやすくなっています。どうか気をつけて帰ってくださいね……』



 ふと幸さんのあの言葉を思い出した。


(あの言葉なんだったんだろ。うわぁ……何もなければいいけどな……怖ぁ)


 俺も少し身震いをした。雨が降っているせいか若干肌寒い。低気圧のせいか空気が重い気がする。





「おい、あれって……」



 街行く人の中には親子連れもいた。仲良く手を繋いでせっせと帰っている。だが、その中に異様な者がいた。

 1人で傘もささずに下を向いている男の子がいたのだ。3、4歳ぐらいで、この雨のせいで肌寒くなっているのにも関わらず、半袖短パンだった。

 まぁこのぐらいの雨じゃ傘をささなくとも、急いで帰れば大丈夫だ。友達に先に帰られたか、親と逸れたのだろう。


「お母さんと逸れちゃったのかな?」

「それに、傘持ってないじゃん。急に雨降ってきたっぽいからな……まぁこのぐらいの雨だったら大丈夫だと思うけどさ……」

 俺たちはヒソヒソと話し合った。結果、男の子に話しかけることにした。


「ねぇ大丈夫?」

 俺たちが話しかけると男の子はゆっくりとこちらを向いた。可愛らしい5歳ぐらいの男の子だった。

 男の子は口を開くとこう言った。

 

「お兄ちゃんたち……僕のこと見えるの……?」

「……っ!」


 まずった。

 やってしまった。

 その言葉を聞いた時、俺たちは理解した。この子は人間じゃないと。よく見れば透けている気がする。


(本気でやばい)


 その時、以心伝心でお互いの思っていることがわかったような気がした。

 俺たちが逃げようと後ろを向くと、男の子は泣き出した。


「……っひっく……誰も見てくれない……僕、ずっと、ここにいるよって言ってるのに……みんな無視するんだ……ママに会いたいよう……うわぁぁぁぁん」


 周りの人には見えていないのか、こんなに子供が大泣きしているのに皆、素通りしていく。

 俺はこの男の子が居た堪れなくなった。だが、幸さんが言っていた通り幽霊にはいろんな者がいる。悪意を持った者や、そうでない者。だからそう簡単に話しかけてはいけないのだ。この男の子も悪霊かもしれない。

 そんなことを考えていると、智也が話しかけていた。


「誰にも気づいてもらえないのは悲しいよねぇ……でも大丈夫! お兄ちゃんたちには君がいること気付いてるよ! だからさ、なんでこんなところで1人でいるか教えてよ」

「ほんと? 僕のお願い聞いてくれるの?」

「うんうん! なんでもと言うわけにはいかないけど、お兄ちゃんたちができることなら、お願い、叶えちゃおうかな〜!」


 男の子は考え出した。その隙に智也に話しかけた。


「おいおい! 大丈夫なんか? 悪霊とかだったらどうするんだよ!」

「も〜はるちゃんは、心配しすぎ! 大丈夫だよ、あの子はそう言うのじゃないと思う。まあ勘だけどね!」


 いつもの勘かよと笑って小突きながらも、俺はいい友達を持っているなと思った。

 こりゃあみんなに好かれるわけだ。まぁ、こいつは恋というものについては全く理解してないけどな。



「ママに会いたい……おうちに帰りたい」

読んでいただき、ありがとうございます。

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