第一王子と婚約者
白銀の美青年―—―この国の第一王子こと、ジオン・ルーゼニアはライトを浴びて輝く白銀の髪に中のシャツがクリームの白いタキシードを着ており左肩に赤いマントをつけていてそれが足元すれすれまで伸びている。緑色の瞳は遠目から見てもキラキラとしていて、とても17歳とは思えない色気に辺りは恍惚と息を吐きだす。
そして―—―
「今日…私、ジオン・ルーゼニアの17歳の誕生日パーティーに出席していただきありがとうございます―—―」
一言も噛まずに透き通る声で伝えられた挨拶は、とても綺麗だ。
めっちゃハイスペック…国の王子なだけはある。
すると―—―挨拶をしているジオンの後ろのカーテンから人影がぬるりと現れる。
目を凝らして見ると―
ゾク―—―ツ!!
発生した汗、が頬から顎に向かって垂れる。
私はまだ冒険者歴は一年半という短い期間だがアレを見た瞬間、背筋が凍るような感覚がした。
誰だアイツは…
「―—―それでは…私の婚約者を紹介したいと思います―—―カトレナ、おいで。」
挨拶を終えたジオンが、後ろのカーテンに向かって手招きしている。そこから出てきたのは…ワインレッドの髪にジオンと比べるとやや濃い緑の瞳、そして紫のドレスを着た美少女だった。
「初めまして、ジオン様の婚約者のカトレナ・ナッシュヴィルです。」
あの少女が影の正体なのだろうか…一見おとなしそうでとてもそうは見えないが。
それから、カトレナの挨拶が終わり、疑念を心の中で抱きつつもまた食事をスタートした。
持って帰れるなら持って帰りたいなこの料理たちを。
☆☆
父さんと母さんがこっちに近づいてきている気配を感じた。他にも三人こっちに向かって来てるね。
慌ててナプキンで口を拭って二人が半径五メートルに入ったとき、今気づきましたかのようにきょとんとした顔で後ろを向く。
「お父様、お母様と―—―え?!」
え、待って…なんでこんな大物がいんの?まだジオン達ならともかくだけど王様はやばいって!
あ、なんか結構前に王様とは仲がいいとか聞いたことあるような…だとしてもだけど!
心の中では高速でツッコミを繰り出しながらも私は席を立ち、足を交差させ、ドレスの裾を持ち上げごきげんよう―—―と挨拶をした。
「こんばんは、来てくれてありがとう。ネルさん。」
「初めまして。ごきげんようネル様。話はジオン様から聞いておりますわ。」
「初めましてカトレナ様。それにしてもジオン様が婚約者をお決めになられたなんて初耳でしたわ。」
「あぁ、本当はする気はなかったけどさすがに父様にせかされちゃってね。そして、お見合いを何回かしてた時にカトレナと出会ったんだ。」
「はい…わたくし、お父様からナッシュヴィル家の恪が上がるようにいいところに嫁げと言われてしまいまして。」
泣きそうな顔でカトレナは告げた。
「そんなことないさ!カトレナはとても優しいし、家の地位にしか興味がない君のお父様とは違うよ。」
「ジオン様…」
あの謎の人影の正体はカトレナだと思っていたがあれは間違いだったみたい。とても健気で優しい人だ。
だが―—―そんなやり取りをしている二人の後ろでは、王様とお父さんがなにやら「いい男になったねージオン君。」だの「そうじゃろうそうじゃろう」などなんか言ってる。
隣を見ると聞こえたのかジオンが顔を赤くし、カトレナが目に涙をにじませながら笑っていた。