食えないやつ
カタカタと揺れる馬車に身を任せながら私たちは王都にある城に向かっていた。
今回出席するパーティーは、この国の第一王子―—―ジオン・ルーゼニアの16歳の誕生パーティーだ。
たく、なんで誕生日だけで王族はパーティーを開くのだか。
「見てください姉様!王都が見えてきましたよ!」
私の正面に座ってピンクのドレスに身を包み、無邪気に外を眺めている少女は、私の妹―—―アリス・クラウディア12歳だ。瞳の色は私と同じ青だが、髪色はお母様と同じ金髪の私に対して、アリスはお父様と同じ白金の髪を授かっている。アリスは肩より少し上にある髪を切りそろえていている。髪にはリボンのついたカチューシャをつけているのでぱちくりとした目と合わせて、人形みたいに可愛い美少女だ。とても12歳とは思えない可愛さと愛くるしさを持っている。
そして今、そんな妹が私に向けてパァと擬音が付きそうな笑顔を向けている。
「やばすぎるだろ…(破壊力が)」
「…?なにがやばいのですか?」
おっと、口に出てしまったようだ。危なかった危なかった。
すると向かい側の席―—―アリスの隣からクスクスと笑う声が聞こえる。
私は笑っている人物をにらむ。
「む…なに笑っているのですか。アルエスお兄様。」
「い~やなんにも。」
白いタキシードのような服に身を包み、足を組み肩を震わせひきつっている顔を隠すように手を額に当てている彼は、私の兄―—―アルエス・クラウディア19歳だ。私と同じ金髪碧眼を持つ美少年で、うちの家の長男だ。
容姿も性格も家柄も実力もいい兄で、外からは評判がよく引っ張りだこだが、私からするとなんとも食えない人である。
「ネルは、本当にわかりやすいな(笑)」
「ちょっと!今完全に笑いましたね!」
「はっはっは」
「むぅぅぅ―—―!!」
「―—―?」
王都に着くまで馬車の中はとても騒がしかったとか。