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公爵令嬢

家の敷地内の森に入り、だれもいないこと確認してから顔を隠していたフードを脱ぐ。

フードの中からは、色白の肌、腰まであるだろうふわふわとした金色の髪と海のように透き通った青の瞳が現れる。

そう、最近話題になっている情報屋ネディとは私ネル・クラウディア、16歳なのである。クラウディアとは、【ユニーク魔法】で攻撃力の高い〈光魔法〉を持つ、国でも有名な公爵貴族であり私はそこの長女だ。

もちろん私は〈光魔法〉を持っている。兄と妹もだ。

ではなぜ、〈光魔法〉を持っていてパーティーに入らずに、ぼっちで人気のない情報屋という役職にしたかというと、自分の正体がばれないようにするためと私の持つ()()()()()の【ユニーク魔法】が〈幻惑魔法〉だからだ。


本来人々は一定の魔力を持っている―—―例えれば水が並々入ったグラスだ。そしてその中の一部の魔力が【ユニーク魔法】の発動に必要な魔力へと変わる。けれど稀に生まれる魔力の多い人間は【ユニーク魔法】を複数持つことがあるらしい。私もその一人だ。

そして私のもうひとつの魔法―—―〈幻惑魔法〉は使い手の姿を消したり相手の五感の一部の機能を奪うなど多様性があり、これほど情報屋に向いた魔法はないだろう。


「おかえりなさいませ。」

「ただいま。あぁ~疲れた。」


家の壁を上りあらかじめ鍵を開けておいた窓から自分の部屋に帰還した私は部屋に入りコートを脱ぎ捨て、鉄の胸当てを外し、自分より何倍も広いいわゆるお嬢様ベットに身を投げ出した。


「お嬢様、シーツに汚れが移ってしまわれるので、部屋着に着換えください。」

「めんどくさい~だるすぎて体が動かない。」

「はぁ、だから無理はなさらないようと言いましたのに…」


ベットにうずめていた顔を上げて、自分に呆れているであろう少女を見上げる。

彼女は、サチ。17歳。私のメイドである。

衣装は当然メイド服を身にまとい、琥珀の瞳、肩まで伸ばしたエメラルドグリーンの艶やかな髪、そしてその髪を顔の両サイドで三つ編みにして束ねている。体系は平均的であるが、顔はとても整っていてとても可愛い。

そんな彼女だが、今は腰に手を当て、眉間にしわを寄せ、思いっきり顔をしかめてこちらを見下ろしている。


「今度はどこに行ってらしたのでしょうか?」

「ちょっとね、白亜の塔っていうダンジョンのマッピングかな。」

「白亜の塔って―——え?!二週間ほど前に発表されたS級ダンジョンじゃないですか?!」

「う~ん、そだね~」


わなわなと口に手を当てあからさまに驚いている彼女を尻目に、腰につけていたポーチから1キロ近くあるだろう、お金がたんまり入った袋を取り出す。


「ほら見てよサチ。ギルドでマップ換金したら、こんなにお金もらちゃった!」


袋をぶらぶらさせながら見せつけるとさらに眉間にしわが寄る。なんでだろ。


「お嬢様…あなたは公爵令嬢で学生の身なのですよ。そんな大金を他のメイドや旦那様に見つかると大変なことになってしまうのです。毎回隠している私の身にもなってください。」


うぐ…。それを言われるときつい。たしかに貴族の娘…公爵令嬢である者が冒険者になってやんちゃしてるなんて思いもしないだろう。ばれてしまったらサチの言うとおり大問題だ。


「…気を付けます。」

「よろしい。」


小さいころからずっと一緒で今も私のメイドとして一緒にいてくれるが、サチにはやっぱりかなわない。


「そういえばサチ。今日ってお城でパーティだったよね?たしかジオン様の。」

「はい。旦那様より、先に行ってるから夕刻までには下に降りてアルエスたちと一緒に城まで来るように―—―と仰せつかっております。」


外まだ明るいしまだ、まだ時間ありそうだからシャワー浴びようかな。


「じゃあシャワー浴びてるくるからドレス用意しといてね。」

「かしこまりました。」


そうして私は服を脱ぎ、水浴びがいつでもしたいとわがまま言ってお父様に部屋に作ってもらったシャワーで体に汗と汚れを落とす。本当の理由はこれなんだけど。

タオルを体に巻き、個室からでるとハンガーにかけられている深い緑のドレスを着用する。胸元が控えめだが露出しており、後ろにリボンがついていて、シンプルだけどちょっと大人っぽい。

その後サチに魔法で髪を乾かし整えてもらい、メイクもしてもらう。

なんでもできてしまうサチには毎回驚かされる。


「できましたよ。」

「おぉ!」


ゆるく後ろで編み込みのハーフアップした金髪はとても軽くかんじ、顔はメイクしたはずなのに全然違和感がないほど綺麗にしやがっている。


「やっぱ凄いね!サチは!」

「ありがとうございます。」


時間を見ると五時前になっていたので、サチにお礼を言ってから私は部屋を出た。

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