表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/286

第七十八話 謎の銀髪少女

 


「うわぁ……」


「……」


「またですか」


「ツいてるのかツいてないのか……前回のお詫びって感じかな?」


 十六層を探索している時のことだった。

 俺たちの前に、また宝箱が現れる。


 俺は辟易してため息をつき、灯里は神妙な表情を浮かべ、楓さんはうんざりそうにボヤき、島田さんは困ったように空笑いをしている。


 本来ならば喜ばしいことなんだが、前回開けてみて罠転移に引っかかった苦い思い出があるので、誰もが微妙な反応をしていた。


 さて……これどうしようか。


 今度こそ良いものがドロップすると信じて開けるか、罠転移を警戒して開けないか。

 とりあえず皆にどうするか聞いてみよう。


「どうする?」


「罠転移の可能性があるかもしれませんが、そもそも罠転移の確率はかなり低いです。普通ならアイテムがドロップするでしょう。流石に二回連続はないと思うので、開けてみてもいい気がしますが……」


「それってギャンブル理論だよね? でもまぁ、僕も開けてもいいと思う派だけど……」


 そう言って、二人はチラリと灯里の方を見やる。

 灯里は、俺が罠転移でエラい目に遭ったのが自分のせいだと思っているらしい。俺がいなくなった時も、大分取り乱したそうだ。


 だから、彼女に気を使っているのだろう。

 灯里は宝箱をじーっと見つめながら、静かに口を開く。


「開けてもいいよ。私なら大丈夫だから」


「そっか、じゃあ今回は俺が開けてみるよ」


「何が起きても慌てないように、心構えをしておきましょう」


 楓さんの注意に、全員が「うん」と頷く。

 俺はしゃがみこんで、ごくりと唾を飲み込んだ後、恐る恐る宝箱の蓋を開けた。


 宝箱を開けた刹那、目映い光があふれ出す。


 ――またこの展開かよ!?


「士郎さん!!」


 灯里が叫び、俺に抱き付いてくる。

 腕で目を覆って光を防ぎ、成り行きを見守っていると……。


「あれ、何もない?」


「上です!」


 罠転移もなく、宝箱の中身も空で拍子抜けていると、突然楓さんが大声を出した。

 つられて見上げると、真上にポリゴンが輝きながら収束していく。


(これは……)


 ポリゴンの収束する現象はアイテムがドロップする時もそうだが、俺たちはもう一つ知っている。それは、ダンジョン被害者が現れる時だ。


 思った通り、ポリゴンは収束していき人の形を成していく。


 その人は――銀髪の少女だった。


 ふわっと、意識のない少女が落下してくるので、俺は咄嗟に少女を抱きとめる。

 ステータスの恩恵か、それとも少女が軽いからか、尻もちをつかず受け止めることができた。


(綺麗だな……)


 少女は綺麗だった。

 絹のようなサラサラで長い銀の髪に、処女雪の如く真っ白な肌色。人形のような端正な顔つき。身体は小さく細く、子供のような体型だ。

 その身体を包み込んでいるのは、魔導士のようなローブ。


 だけど俺は、そのどの部分よりも目を奪われてしまう箇所がある。

 それは、彼女の耳が長く、横に真っすぐ伸びていることだった。


「うわぁ……すっごく可愛い」


「外国の方ですかね……」


「子供かな?」


 三人が、銀髪の少女を覗き込む。

 すると、少女の瞼がパチリと開いて、俺と目が合った。


「やぁマルクス、助けてくれるのは君だと思っていたよ」


「へ? えっと……俺はマルクスじゃなくて、許斐士郎だけど……」


「随分会わない間に冗談が上手くなったじゃないか。さてはオルドロ辺りに仕込まれたな?」


「いや本当にマルクスじゃないよ」


「え?」


「え?」


「「……」」


「本当だ、君はマルクスじゃない。顔は似ているが少し違う……だが魂の形が……」


 俺がマルクス何某ではないと分かってもらえたのだけど、今度はぶつぶつと呟いてしまっている。


 わけが分からず混乱して三人にどうしようかと視線を投げるも、三人とも俺と同じように驚いていて助けてくれなかった。


 この少女、ダンジョン被害者なのだろうか?

 なんかダンジョン被害者の反応と違う気がするんだけど。


「えっと、立てる?」


「ああすまない。もう少しお姫様気分を味わいたいところだが、状況を把握するにもこの体勢では話しにくいな。下ろしてくれて構わない」


「ああ、うん」


 俺は少女を地面にそっと下ろす。やっぱり、身長は低いな。百五十くらいだろうか。


 少女は俺たちを見回すと、改めて口を開いた。


「まずは挨拶からといこうじゃないか。ボクの名前はメムメム。凶悪なる魔王を滅ぼした勇者マルクスの仲間であり、大魔導師アルバスの一番弟子であり、ただのエルフでもある。よろしく頼むよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] いやー、宝箱からエルフが出てくるのか。痺れるなあ
[気になる点] え?この時も当然ライブ中ですよね?そろそろ、引きの強さ、、、運の悪さが、目立ち始めた感、もしかして、両親との不仲の理由も同じなのかなぁ、 [一言] 絶賛読み捲らせて頂いてます、遂に新た…
[良い点] ・・・おー。なるほど? まってじょうほうかた。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ