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第百八十九話 職業 勇者

お待たせして申し訳ございませんでした!

色々とひと段落したので、更新再開したいと思います!




「シローちゃん達~見てたわよ~、もう最っ高だったわ」


「あはは……ありがとうございます(ち、近いな……)」


 クリエイターズの番場五郎さんことベッキーさんが、昨日のダンジョンライブを見てくれたらしくて褒めてくれる。

 それは嬉しいんだけど、異常に距離が近いのはやめて欲しいんだけど。


 カースシリーズをバラまいていたバグと名乗る犯人を倒して事件を解決した翌日。

 ベッキーさんからナマークのマントを仕上げたと連絡が入ったので、受け取りに二十二階層にある信楽さんの家を訪れていた。


「俺からも礼を言わせてもらう。おめぇらのお蔭で事件は解決した、ありがとな。」


「俺達は当たり前のことをしたまでですよ」


 信楽さんからの感謝に、いえいえと恐縮する。

 あのままバグを見過ごしていたら、多くの初心者達が不幸な目に遭っていただろう。折角冒険者になったのに、そんな風になってしまうのは嫌だった。


 やっさんのように東京ダンジョンの秩序を守ろうってほどの意識はなかったけど、少しでも冒険を楽しんでもらう為にやったまでだ。


「はいこれ、ナマークのマント五人分よ」


「「ありがとうございます」」


「サンキュー」


 ベッキーさんが渡してくるマントを、一人ずつ受け取りながらお礼を告げる。

 もっと時間がかかると思っていたけど、こんなに早く作ってくれてとてもありがたい。


「なんかスベスベしてるね」


「そうですね、ナマークの滑皮を使っているだけのことはあります」


 マントの生地を触りながら感想を述べる灯里に、楓さんも同意する。

 ナマークのマントは若干潤っているのか、ツルツルではなくスベスベという表現がピッタリだった。

 これなら、火竜の炎攻撃も耐えられそうな気がしてくるな。


「ベッキーさん、こんなに早く仕上げてくれて本当にありがとうございました」


「お礼なんていいのよ~。それより火竜に挑むんでしょ? 応援してるから頑張ってね」


「はい、頑張ります!」


クリエイターズ(俺達)もそうだが、火竜戦を初見突破したパーティーはまだ出てねぇ。けど、お前さん等ならクリアできるさ。期待してるぜ」


 信楽さんにそう言われた俺達は、力強く頷いた。

 期待してくれているのは信楽さんやベッキーさんだけじゃない。やっさんや他の冒険者達、それに俺達をいつも応援してくれているネットの人達。

 皆の期待に応える為にも、精一杯頑張んないとな。


 二人に挨拶して家を出た俺達は、火竜戦で使うナマークのマントに慣れておこうと、二十三階層へと向かおうとする。

 その階段を上がる前にふと思い出した俺は、皆を呼び止める。


「ちょっと待って、そういえばバグを倒した時にレベルが上がったんだ。確認していい?」


「あっ、私も上がったんだった」


「私もです」


「僕も上がってたな」


「同じく」


 何だ、皆もレベル上がってたんだ。

 ならモンスターがいる階層に向かう前にここで確認しようと、お馴染の言葉を発する。


「「ステータスオープン」」



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 許斐 士郎 コノミ シロウ 27歳 男 

 レベル:30

 職業:魔法剣士→勇者 

 SP:150

 HP:550/550 MP:450/450

 攻撃力:500

 耐久力:430

 敏 捷:435

 知 力:395

 精神力:450

 幸 運:385


 スキル:【体力増加2】【物理耐性3】【筋力増加1】【炎魔術3】【剣術5】【回避5】【気配探知2】【収納】【魔法剣3】【思考覚醒】


 ユニークスキル:【勇ある者】

 ユニークアーツ:【心刃無想斬】


 称号【キングススレイヤー】

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 使用可能なSP 150


 取得可能スキル 消費SP

【剣術6】   60

【体力増加3】 30

【物理耐性4】 40

【筋力増加2】 20

【炎魔術4】  40


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ついに俺のレベルも30台になった。

 ステータスもそれぞれ上昇しているけど、いつもと違う点が一つだけある。


(何だこれ……勇者?)


 職業ジョブの魔法剣士の右側に、勇者という文字が表示されている。

 これは俺がレベル10になったとき、剣士から魔法剣士にジョブチェンジした時と同じだった。

 もしやと思い、勇者の文字を指で押してみる。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 魔法剣士とユニークスキル【勇なる者】を統合することで、勇者にジョブチェンジが可能です。ジョブチェンジしますか?

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


(やっぱり!)


 思った通り、これはジョブチェンジだったんだ。

 というか勇者ってなんだよ……そんな職業、今まで聞いたこともないぞ。


 しかもユニークスキルと統合してチェンジするなんて……まさかユニークジョブってやつなのか?


「私はいつも通りです。皆さんはどうでしたか?」


「僕も普通にレベルが上がっただけかな」


「同じく」


「えっと……なんか狩人からジョブチェンジできるみたい」


 えっ、灯里もそうなのか!?

 ジョブチェンジできるのが俺だけじゃなかったのに驚いていると、楓さんが灯里に尋ねる。


「凄いじゃないですか! どんなジョブなんですか?」


「うんとね、戦女神って文字でアルテミスって読むらしいよ」


「アルテミスって、確かギリシャ神話に出てくる貞潔や狩猟の女神のことですよね。灯里さんらしいジョブじゃないでしょうか。それにしてもユニークジョブなんて凄いですよ」


「えへへ、そうかな?」


 楓さんから手放しに褒められ照れる灯里。

 へ~アルテミスか。楓さんの言う通り、灯里にピッタリなジョブじゃないか。

 灯里に便乗する形で、俺も手を上げて皆に伝える。


「あのさ、実は俺もジョブチェンジできるらしんだ」


「そうなんですか!?」


「なんで黙ってたんだよ許斐君、もったいぶってないで言っておくれよ」


「えっと、それがそのさ……“勇者”なんだ。俺のジョブチェンジするジョブ」


 ぶっちゃけると、時が止まったように皆が驚いてしまう。

 ほら~、だから言い辛かったんだよ! 自分でも勇者とかおかしいもんな!


「「ゆ、勇者~~!?」」


「ぷっ、あはははは! そうかそうか、シローは勇者か!」


 やっと声を上げた皆と、可笑しそうに腹を抱えて笑うメムメム。

 メムメムが笑うのも仕方ない。だって勇者だよ? 何で俺がって感じだろ。


「勇者ですか、それはまたなんとも……」


「聞いたことないジョブだよね。ユニークジョブなのは間違いないだろうけど……」


「でもさ、士郎さんにピッタリじゃない?」


「そ、そうか? なんか恥ずかしいんだけど……」


 だって勇者だよ?

 自分で勇者って名乗るの変じゃないか? 魔王を倒す訳でもないのにさ。


 それに現実世界では平凡な会社員の俺なんかが、勇者って柄じゃないだろうに。

 う~んと頭を捻っていると、笑っていた筈のメムメムが真剣な声音で伝えてくる。


「恥ずべきことじゃないさ。それがシローの運命さだめなんだろう。ならば、素直に受け入れるべきなんじゃないかな」


「メムメム……」


「そうですよ士郎さん。確かに大きな肩書ではありますが、士郎さんが相応しくないなんてことはありえません」


「僕もそう思うよ。っていうか、そんな凄いジョブにチェンジしない理由なんてないよね」


「楓さん……島田さん……」


 皆の言葉を聞いてジーンとしていると、灯里がこう言ってくる。


「それに士郎さん、エルヴィンさんに言ってたよね。“人々に勇気を与えられる者が勇者じゃないか”って。ならもう、士郎さんは立派な勇者だよ。だって私達、士郎さんにいっぱい勇気を貰ってるもん」


「「うん」」


「灯里……皆……」


 そうだな……何で俺なんかが勇者? って思ったけど、別に誰が勇者だっていいんだ。


 今回は偶然俺だったけど、俺以外にもいるかもしれないし、今後出てくるかもしれない。それに島田さんの言う通り、強くなる為に必要なんだから迷う必要もないだろう。


「分かった」


 皆から後押しをもらった俺は、再び勇者の文字を押す。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 魔法剣士とユニークスキル【勇なる者】を統合することで、勇者にジョブチェンジが可能です。ジョブチェンジしますか?

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ジョブチェンジしますかという欄に、はいと押す。

 すると、俺のステータスが新しく更新された。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 許斐 士郎 コノミ シロウ 27歳 男 

 レベル:30

 職業:勇者 

 SP:200

 HP:600/600 MP:550/550

 攻撃力:580

 耐久力:500

 敏 捷:520

 知 力:480

 精神力:550

 幸 運:450


 スキル:【体力増加2】【物理耐性3】【筋力増加1】【炎魔術3】【剣術5】【回避5】【気配探知2】【収納】【魔法剣3】【思考覚醒】


 ユニークスキル:【勇気の心(ブレイブ・ハート)

 ユニークスキル:【想いの力】

 ユニークアーツ:【勇者の剣(ジ・ブレイブ)

 ユニークアーツ:【心刃無想斬】


 称号【キングススレイヤー】【見習い勇者】

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 使用可能なSP 200


 取得可能スキル 消費SP

【剣術6】   60

【体力増加3】 30

【物理耐性4】 40

【筋力増加2】 20

【炎魔術4】  40


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 うお……なんか凄いことになってるな。

 ステータス全般がかなり上昇してるし、ユニークスキルとユニークアーツが合わせて三つも増えている。

 それに【見習い勇者】という称号も新たに加わっていた。


 そうだな、まずはユニークスキルから見てみるか。

 俺は【勇気の心】をタップする。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

【勇気の心】:勇気の力を発揮し、パーティーに勇気を与える

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 なんだこれ?

 任意の発動ではなくパッシブスキルのような感じだけど、勇気の力ってなんだよ。それにパーティーに勇気を与えるというのも意味がわからない。

 具体的にどのステータスが向上されるとか明記されていないし、心の問題的な?


 あれかな、楓さんや島田さんが使っているバフスキルに『ファイティングスピリット』というものがあるけど、あんな感じにモンスターからの恐慌状態を軽減するとか、かなぁ。


 というか、勇気ってそもそもなんなんだよ。

 全然意味が分からないぞ。それに任意じゃないから、発動するタイミングも分からない。

 とりあえず保留にしておいて、次の【想いの力】を見てみるか。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

【想いの力】:人々の想いが力になる

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 いやなんだこれ!

 もっと分からない説明が出てきたぞ!


 人々の想いが力になるってどういう事?

 “パーティー”ならまだ分かるけど、“人々”って誰のことだよ。しかもまたパッシブスキルっぽいし……。

 ちょっとステータスさん、もう少し分かり易く書いてくれないかな。

 折角新しいユニークスキルが二つ貰えたのに、使い方が分からなければ意味ないじゃないか。


 はぁ……もういいや、次いこう。

 ため息を吐きながら、今度はユニークアーツの【勇者の剣】をタップする。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

勇者の剣(ジ・ブレイブ)】:勇者が繰り出す斬撃。

 勇気の心が溜まっているほど威力が上昇する。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 う~ん、ユニークスキルよりかは分かり易いかな。

 これはアクティブスキルみたいだし。でも勇気の力が溜まるほどって……だから勇気って何だよ!


 と胸中で突っ込みながら、最後の称号をタップする。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

【見習い勇者】:見習いの勇者。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 そのまんまかい!

 もっとこう、なんか能力とかないの? 【キングススレイヤー】みたいに、キングモンスターと戦う時に能力が上昇するとかさ~。


 まぁいいや、SPも結構溜まってるし、スキルのレベルだけでも上げておこう。

 俺は火竜戦に備えて少しでも生き残る確率を高める為に、SPを90消費して【体力増加3】【物理耐性4】【筋力増加2】の三つのスキルを取得した。


「お二人共、どうでしたか? 何か変わりましたか?」


「う~ん、ユニークスキルとかユニークアーツとか増えてるんだけどさ、どれもよく分からないんだよね。使い方がわからないっていうか」


「私も士郎さんと同じ。説明が曖昧でわかんない」


 戦女神にジョブチェンジした灯里も、俺と同じ反応だった。

 折角ユニークジョブにチェンジしたのに、嬉しいというより困ってしまう。

 そんな俺と灯里の反応に、島田さん達が感心したように頷いて、


「へ~、そんな事あるんだね。でも使い方が分かれば相当強いんじゃない?」


「そうですよ。分からなければトライ&エラーを繰り返すしかないです」


「そうだね」


「うん!」


 という事で、新しいジョブの能力を確かめるのとナマークのマントに慣れる為に、二十三階層に行って午前中の間ひたすらモンスターと戦っていたのだった。


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[良い点] 名実ともに勇者になった(見習い) [一言] 勇者つっよ! スレ民にバレたら大騒ぎだな
[一言] ついに勇者に成ったが取得可能スキルには変化が無かったのかな?
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