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とある少女の偶像

突発的に始まりました!


悪役令嬢モノです。


 殊更何を求めるでもなく。

 優れることなく。

 秀でることなく。


「はふ……」


 私は退屈な人間だ。


 生まれのスペックからして劣っていた。なんというか、人と感性がズレており、友人を作る能力に欠陥があった。人見知り……というにはちょっと自虐が強かったけども。

 おかげで学校では孤立し、孤立すれば当然虐められ、虐められれば同年の人間はまぁ離れ。


 そんな負のスパイラルで私は愛と勇気だけが友達だった。

 いや自己愛と蛮勇が正しいのかも知れないけど。

 読書が趣味で、能力に展望は無く、人徳は成長も見せず、親は私に期待することを諦めた。


「――――――――」


 ジャージ姿で学内を歩いていると嘲笑が聞こえてくる。うちの学校の指定ジャージはダサいことで有名だ。ちなみにいつもの制服は、体育の授業が終わってロッカーを覗き込むと牛乳まみれになっていた。教科書やバックと一緒に。


「今更だけどね~」


 自分を弱者と認めてしまえば心の安寧は得られる。

 何も期待しなければ裏切られることも無い。

 こんな風に孤立して学校を卒業し、大人に成って細々とサラリーマン化し、色もモノトーンな人生を送るのだろう。恋も夢も知らない。そういう前向きさは既に捨てていた。

 もっとこう不幸っぽいオーラならまた違っただろうけど、私の場合はそんな負の遺産すら持っていなかった。


 普通で平凡で、勉強も運動も容姿も特筆しない。

 病気で動けないことも、儚げな雰囲気を持つことも、悲恋の果ての人間不信にも関係がない。

 たんに普通に劣って、普通にダメで、普通に健康で。だから学校の先生らも私が問題児だという意識も持っていなかった。


 どこか不器用な普通の女の子。


 そんなわけでイジメも発露せず、友達もおらず、大人も護ってくれず、奪われ、虐げられ、嘲られ。


「いいんだけどさ」


 嘆息。

 ジャージ姿で下校の帰路につく。

 訝しげな視線も受けた。ジャージ姿の女子高生なんてたしかに珍しいだろう。しかも駅の構内ならば。髪を染めて、スカートは短く、スマホを弄って友達と仲良く。そんな女子高生から私は対極に居る。スマホ持ってないしね。


 趣味は青空文庫と童話の読書。無料で読める物語は私の心の栄養だ。イジメを受けているので図書館で不用意に本を借りられないし、スマホ持っていないので登下校でアクセスする事もできない。

 結果、家の自作パソコンで楽しむのが私流。憂鬱な学業の時間は心が摩耗する。家でダラダラ読書している方が私の心のサンクチュアリ。


 そんなことを思っていると、


「え?」


 ドンと背中が押された。


 意図的か。


 偶然か。


 ソレはまぁ警察のお仕事で。線路に飛び出した形の私はその高低差で足を挫き。ついでにちょうど良く特急電車が駅を素通りする形。ドクンと心臓が高鳴った。電車事故って奴は……どうしても文明にでも無くならないカレーうどんの染みのようなもので。今日も何処かでデビル……ではなく今日も何処かで起こっている。きっと私の家族は鉄道会社から苦情を受けるのだろう。


「んー……まぁ……ざまーみろってことで」


 パアァンと電車の大気を裂く音が聞こえた。


 南無観世音菩薩。


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