第1002話 お盆とたこ焼き
城前の久慈川で夜空に開く大輪をみんなで見ている。
「真琴様、花火も昔に比べて色鮮やかになりまして、本当に綺麗ですね」
火薬の改良は早くから進めており、平成時代並とまではいかないものの、夜空には大輪が花開き、川では灯籠流し、お寺からは『じゃんがら念仏踊り』の太鼓と鐘の音が聞こえてきていた。
じゃんがら念仏踊りは、本来、茨城県北部地域と福島県の浜通りを中心としたお盆の文化だが、俺の領内では奨励して広めている。
華やかなお盆、それは俺の単純な好みだ。
「マコ~たこ焼き美味しいよ~」
「もう、はしたない、ちゃんと飲み込んでから話しなさいよね」
お江はお初に叱られると、むせっていた。
そこに桜子が潰して作った、すいかジュースをそっと出しゴクリと飲む。
「げほげほっ、ありがとう。ねぇ~なんで、たこ焼きって丸いの?お好み焼きと同じ原料なんだもんお好み焼きで良くない?」
改めて言われると本当になぜだ?
佳代ちゃんに助けを求めると顔の前で手をブンブンと振り、
「知らないわ・・・・・・って真琴君がタイムスリップした後、茨城で、超~高額たこ焼き話題になっていたけど、食べられなかったわ」
「はぁ?なんで高額?」
「原料に、もの凄くこだわったたこ焼きだったはずよ」
「ん~それは気になるな」
佳代ちゃんから謎の平成たこ焼きの話題に盛り上がると、
「御主人様、たこは大洗から取り寄せた一品、小麦も領内の良い物ですが、それより良い物が良いのですか?これ美味しくないですか?」
桃子が悲しい目をしていた。
「いや、これは美味いって。小麦ってさっ、俺の知る時代線だと国内産その物が高額なんだよ。小麦のほとんどが輸入だったから」
桃子にそう言うと一安心したのか胸をなで下ろしていた。
梅子が、不思議そうに、
「うちでは二毛作で全量領内の物でまかなえていますし、輸出にまわすくらいになっていますが?」
「色々あったんだよ。政治的なやり取りで大国から小麦を大量に買うようになって、国内の小麦が値下がりして、農家さんが栽培やめちゃうって。米は国内でまかなえすぎて余ってしまうから、生産調整なんてしていたけど」
「・・・・・・不思議な政策に感じます。御主人様。米が多く取れるのなら異国に売れば良いのに」
「そうなんだよね。栽培に適していない国々に売る、俺のやっている政策だけど、なぜにやらなかったか不思議なんだよ」
それを言うとみんな難しい顔をして考えにふけっていた。
そこを
パチンっ
と、手を叩いて、
「ほら、みんな、政治のことは忘れて今日は花火を楽しみましょう」
茶々は大空を指さしていた。