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匠の消防士  作者: oga
消防士編
8/25

救助

 火が回るのは一瞬だった。

山田重五郎とその娘と息子、旦那の4人で焼き肉大王で食事をしていると、下のフロアで爆発音がした。

何事かと店員の一人が下の階へ向かうと、絶叫。

火だるまになりながら2階へと駆け上がり、続け様に踊り狂った炎が2階の天井を炙った。


「火事だ!」


 客の一人が叫び、みな席を立って窓際の方へと向かった。


「ど、どうしよう!?」


 娘が動揺し、旦那も慌てふためく。


(くそっ、よりにもよってこんな時に……)


 重五郎は階段を見やったが、とても降りられる状況ではない。

煙と炎が迫り、パニックに陥った客らは窓から身を投げた。


「お父さん! お父さんっ!」


「落ち着け、この街にはダイキがいる。 必ず駆けつける!」


 娘が10才になる息子を抱え、窓から飛び降りようとするのを必死に諭す。

2階から地上へはおよそ10メートル。

1階は天井が高く、飛び降りて無事では済まないだろう。


「おしぼりを口にあてるんだ!」


 旦那が息子と妻におしぼりを渡し、自分は腕で口を塞ぐ。

熱気と煙に巻かれ、もう後30秒ももたないというその時だった。

2階から誰かが駆け上がり、こちらに水を吹きかけた。


「ダイキ!」


「おやっさん、無事かっ!」









 まだ、おやっさんらは生きている。

2階の延焼は1階ほどではな無かったのが幸いした。

すぐさま俺はジグザグに水で火を消し止めつつ、おやっさんの方に向かった。


「おやっさん、大丈夫か!」


「ああ…… 娘たちだけは助けてやってくれ」


「何言ってんだよ!」


 俺は、窓から顔を出した。

そのすぐ下には、ハゲとアインシュタインがマットを敷いて待ち構えていた。

2人ともナイス判断だ。

これなら、飛び降りても死にはしないだろう。

俺は、おやっさんの奥さんと旦那にここから飛び降りるよう指示した。


「ここから飛び降りるんだ」


 2人は頷き、俺は2人の息子に向き直った。


「少し怖いかも知れねーが、できるよな?」


「うんっ」


 っし、と俺は最後におやっさんの方を向く。


「後は、アンタだな」


「ダイキ、ワシのことは…… お、オイ!?」


 俺はおやっさんを担いで背中に乗せた。


「耐えろよ、おやっさん!」


 おやっさんはここから飛び降りることはできない。

だから、直接担いで下から脱出する。

早く降りないと来た道が炎で塞がれる。

あとどれ位建物が持ちこたえられるかも分からなかった為、俺はできる限りのスピードで2階を後にした。

酸素ボンベとおやっさんを背負い、重量は100キロオーバーだ。

それでも、火事場の馬鹿力で階段を降り、炎に包まれた1階を駆け抜けようとした。

だがその時、天井からメキリ、という不気味な音が響いた。  

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― 新着の感想 ―
[良い点] 臨場感があっていいです。^^) [一言] 人は100kgを、かつげるのか・・・これがかつげるですよね。息子が自衛隊員ですが、山での訓練で、仲間&仲間の荷物を担ぐ事があるそうです。火事場の馬…
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