火災
19:15分。
俺がトイレで用を足している真っ只中、事態は起きた。
普段、絶対に鳴ることの無いベルが鳴る。
どんなに爆睡してても絶対に起きるくらい、けたたましい音だ。
(……マジか!)
ションベンしてる場合じゃねぇと、慌てて備え付けてあるパソコンの画面を見やる。
現地で火災が起こると、その建物に付いている火災感知器が作動し、ここに信号を飛ばす。
ちなみにパソコン上では火災が発生した箇所を表示しており、連動してハゲ、アインシュタインの携帯にもアラームが鳴るよう設定されている。
「発生現場は…… オイオイオイオイ!」
今夜、絶対に火災があってはならない場所。
モニターには地図が表示され、焼き肉大王が赤く点滅していた。
「ざけてんじゃねぇぞ……」
俺は壁に掛けてある消防服に身を包み、ポンプ車の鍵を手にした。
ポンプ車に乗り込み、サイレンを鳴らしながら現場へと急行。
ハゲ、アインシュタインには直接現場に向かうよう電話で伝えた。
(クソッ、急げ急げ!)
今夜この時間、丁度おやっさんが焼き肉大王で飯を食っていたハズだ。
もちろん、他の街の人らだっているし、みんな顔見知りで家族みたいなもんだ。
だが、特におやっさんが心配だ。
大分年がいってるし、火に巻かれたら一環の終わりだろう。
(焦るんじゃねーぞ、俺)
赤信号を突破して、警報から約7分で現場に到着。
「……!」
路肩に車を止めると、焼き肉大王の前に人だかりが出来ていた。
建物は1階と2階。
内部はかなりの広範囲まで火が回ってるように見える。
「危ないからどいて!」
俺は声を張り上げ、ポンプ車の脇に設置してあるホースを手に取り、消火栓を探した。
伊達に28年もこの街にはいない。
体が勝手に動いて消火栓を探し当てると、そこにホースを繋ぐ。
ポンプ車に戻り、ポンプの起動ボタンを押して水を汲み上げると、ハゲとアインシュタインが合流。
「オイ、急いで防火服に着替えろ!」
服は車に積んである。
すると、ハゲが言った。
「何でこんな火の回りが早いんスか!?」
ベルが鳴ってからものの10分で建物内部を焼き尽くす勢いの炎。
俺は、さっきの地震が関係している、と推測を述べた。
「さっきの地震で老朽化してたガス管が破裂したんだろう。 消防点検の時に指摘項目で上げてたハズだが、まだ改修されてなかったんだ」
「クソッ……」
火災が発生した際、火が延焼する前に速攻で消すのがセオリーだが、これでは全焼は免れないだろう。
とにかく、時間との勝負だ。
「ハゲ、俺に付いてこい。 中の人らを救助に向かう」