新しい仕事
俺は消防士を辞め、都内近郊にある「第一百貨店」で焼き鳥のバイトを始めた。
幸い、貯金はかなり蓄えていたため、正社員じゃ無くても何とかやっていける。
というか、この年齢で普通に就職するのは厳しかった。
「葱ま1本、つくね1本!」
「あいよーっ」
オーダーが入ると、俺は冷蔵庫から葱まとつくねの実を取り出した。
ネギマはそのまま炭火で両面焼いて、つくねは手のひらで適当なサイズにちぎって串に刺す。
最後にタレか塩をまぶして完成だ。
(忙っそがしいな、オイ)
ついでに、もう一つ報告がある。
何と、以前の同僚、禿鷲実も現在、この焼き鳥屋で働いているのだ。
少し前に、俺の携帯に連絡があった。
休憩中、机のスマホがブルブル音を立てた。
「あれ、ハゲ?」
俺は携帯を取った。
「何だよ」
「あっ、ダイキさんっすか? 俺っす」
「分かってるよ。 つか、何の用だよ?」
「実は……」
ハゲはあの火災以降、自分には適性が無いと思い、本日付で消防士を辞めたらしい。
「それで、他にやりたいことが見つかるまで、そっちでバイトしたいんスけど……」
「マジか…… 分かった、聞いてみるわ」
こうして、俺とハゲは一緒に焼き鳥屋のバイトをすることになった。
「アインシュタインが来れば、また一緒のチームなんスけどね」
「あいつは辞めねーだろ」
そんな会話を何度か交わし、ある日、ハゲのヤツが慌てた感じで非番の日に連絡を寄越した。
「アインシュタインが消防士、辞めたらしいっす!」
「はあっ、何でだよ!」
家でモン○ンをやりながら、俺は耳にスマホを挟んで返事をした。
「何か、上司と折り合いがつかなくて勢いで辞めたらしいスわ。 俺に連絡があって、んで、今日店に面接に来るらしいス」




