プロローグ
(今日も暇だなぁ~)
俺こと、ダイキ(50)は、昼間っからテレビをつけ、欠伸をかみ殺していた。
「ダイキさん、今朝の筋トレ終わりましたよ。 腹筋30回と腕立て伏せ30回」
今話かけてきたのはハゲ(30)
本名が禿鷲実だからハゲだ。
俺はオウ、ご苦労、と片手を上げて返事をした。
「じゃあまあ、昼入ってくれや。 んで、午後からは世間様アピールで街中軽く走って、3時位に戻ってくりゃいいよ」
「ウッス。 あ、一応報告ッスけど、アインシュタインのヤツがまだ残ってやってるんで、俺面倒なんで、隊長から言っといてもらっていッスか?」
「またアイツか……」
俺は、はぁ~…… と肺に溜めた空気を一気に吐き出した。
場にネガティブ・ブレスを吐くと、あからさまに嫌そうな表情でハゲが答える。
「それやめて下さいよ。 臭くなるんで、部屋が」
そういうと、ハゲのヤツは自分の机から弁当を取り出し、俺の向かいの倚子に座った。
勝手にチャンネルを回して、ミートボールを口に運ぶ。
うまそうだな、と思っていると、ハゲがこちらを振り向きもせずに言う。
「ちゃっちゃとアインシュタイン連れ戻して下さいよ」
「……お、おう」
てか俺一応隊長だぞ?
チャンネル回すのだって、回していいっすか? くらいの確認とれっつの。
そんな風なことを心の声で毒づきながら、俺はその足で外へと出た。
「ハア、ハア…… っく! ふっ!」
「アインシュタインくーん」
俺はポケットに手をつっ込みながら、地べたで腹筋をするアインシュタインに近づいた。
「……何ですか」
金髪に青い瞳のアインシュタインがこちらを見やる。
こいつは最近この部署に配属されたアインシュタイン・クロウ(22)
日本人とイギリス人のハーフで、顔立ちはかなり整っている。
消防学校ではかなり優秀な成績を収めたらしく、何でこんな退屈な部署に配属されたのか謎だ。
「もうお昼回ってるからさぁ~、ご飯、食べない?」
「……」
すっく、と立ち上がると、アインシュタインは俺の腕を指差した。
「ポケットに手つっこむの、良くないですから。 あと、別に昼食うために消防士、やってる訳じゃないんで」
寒いからと無意識にポケットに手をつっこんでいた。
この件は先月の職場会議で話題になったことで、世間体が良くないから、という理由で本部からも通達があった。
俺は慌ててポケットから手を出したが、こんなものを守ってるヤツはハッキリ言ってコイツくらいだ。
……まあ、隊長の俺が守らないのもどうかとは思うが。
「なあ、アインシュタイン。 消防士はチームワークだろ。 飯くらい一緒に食おうぜ。 これは隊長命令だ」
「オレ、一度も現場に出たことない人を隊長とは思ってませんから」