表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四谷天窓の月  作者: 武上渓
9/10

ー最終話



ー最終話




春菜は、物販の横の椅子の上の小銭入れのような物に気付いた。

「これ誰のですか~?」

完売で物販は終わっても、まだ四谷天窓の中はごった返していた。

誰も首を振る。

ほの子さんが言う。

「中見てみたら?名前が有るかも」

ファスナーを開けると、白いバナパスポートと書かれたカードが何枚か入っていた。お金もクレジットカードもキャッシュカードも入っていないが、JRのTOICAが入っている。

「あとは、写真かな?紙に包んである」

春菜は開いた。

「勝手に開いちゃ駄目よ。どうしたの…?」

春菜は写真を食い入るように見ていた。

ほの子も見た。若い夫婦が赤ちゃんと一緒に写っていた。

「この男の人、さっきのスーツの……春菜!」

春菜は、エレベーター横の階段に消えた。



「おとうさんっおとうさんっ!」

商店街を行き交う外国人達が振り返って見た。

商店街を抜けると横断歩道は赤だった。

その向こうにスーツの人が歩いている。

叫んでも、山の手線の叩きつけるような電車の音が、ガード下に降って来て掻き消される。


青になった。

走った。

改札の前でスーツの人は立ち止まってポケットを探った。

そして、振り返った。


春菜は両手で写真を光治に差し出した。

光治は

そうか…

と言って両手を拡げた。

春菜は赤ちゃんのように。

叫ぶように。

泣き声を上げて。

父親の胸に飛び込んだ。



四谷天窓の月完結




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ