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四谷天窓の月  作者: 武上渓
7/10

ー6話


ー四谷6話



頭髪が、突風に吹き散らかされるビックウェーブの波頭のようになっている。

「先ほどですね。みや歌詞間違ってるで紹介されました、みやです。1曲目なんですが、手拍子が有るとサビ以外歌えません。合図しますのでね、出番になったら皆さんのグルーヴで盛り上げて下さい、では曲名は、そのまんまで、手拍子じゃ歌えない」

力強いストロークでくっきりしたギターに載せて、よく通る太い声が突き刺さってくる。

怯えたような目だが、その底には強い意志が光っている。たとえ納得のいかない場所からでも突き抜けて行くタイプだ。  


「今晩は!普段は関西の方でやってます。ほの子です!東京遠征と言う事でね。よんでくれてありがとう!この後の春菜さんは、会った事ないんですけど、けっこう動画で見てましてですね、今日は生で見られると言う事で、非常に楽しみにしてます。楽屋であいたいをリクエストしまして、いいよって言ってもらえました。めったにライブでは歌われないそうなのでね、言ってみるもんだなと、ラッキーですよ皆さん!では1曲目いきます!」

気弱な彼を気遣う、優しさを歌う。女の子の強さ、弱さ、迷い、願いを

切なく歌う表現力は素晴らしかった。



次に春菜の番が来た。

交代では、客席のライトも点灯して良く見える。

元妻にそっくりな仕草で、緊張しながら出てくる。 

客席のライトが消え、彼女の所にスポットが入る。

「今晩は。近藤春菜です。この間は下北沢440でワンマンをやらせて頂きました。偶然ですね、動画見てライブに来て下さった男性の方がですね、探していた彼女さんが下北沢440で働かれてまして、涙、涙の再会とですね、ライブ後にステージでプロポーズされまして、もうウルウルで。なんか、歌うって理不尽な事ばっかとか思うんですけど、歌ってて良かったなと思いました。私も会いたい人が居まして、あの~男性は男性なんですが、赤ちゃんの時に離婚で離ればなれになってるお父さんがいまして。ずっと会いたいと思いながら歌ってます。凄い辛い歌でもあるので、ライブでは歌わないんですけど、ずっと憧れてたほの子さんに、ファンです~あいたい歌ってと、フフ、言われてしまって、最後にね。歌います。はぁ~物販が有るんだけど多分無理」

客席から声がした。

「何もしなくても、あいたい歌ったら置いとくだけで完売だよ。もうスタッフもみんなお金用意して、手に持っちゃてるから、お客さん優先だから、判ってる?」

「あの、スタッフさんとかは、それ用に持ってきてます。お客さんの分は有るので」

奥から声がする。

「業務連絡は良いから、春菜始めて」

客席が爆笑した。

「と言う事で、物販はほの子さんの方で買って下さい。え~なんだっけ」

また客席が爆笑する。

「ライブやるんでしたね。こんな緊張感のない四谷天窓初めてで、調子狂います。では、1曲目いきます!」

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