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オピオンの卵    作者: 猿くん
16/18

オピオンの卵 その15

すみません、どうやらだらだらし過ぎたようです。

題名変えました。もし前の方が好きっていう人がいたらごめんなさい

 2060年6月1日

 ファジー島

 ブレーズ隊第1部隊アスラー・アスワド先任軍曹

 翌日、ジゼルは無事、戦線に復帰し第1部隊へ編入した。これで実質、第3部隊は消滅したことになる。ブレーズ隊は現時点で12名、攻撃隊のベクター隊は16名となった。




 その一方で、FCLは予備機を含め戦闘型と攻撃型がそれぞれ20機あった。また、弾薬も4回戦闘ができるほど残っており、問題なのは人員だけであった。




だが、そんな問題を戦争が配慮するわけがなく、容赦ない出撃命令が下るのであった。




これでFCL隊は計4回以上の出撃となった。だが、今回ばかりの戦闘はパイロットたちは眉をひそめた。その理由はスクアラが言った作戦の内容であったのだ。




「俺も今知らされたことなんだが、支援を行うはずであった第10、第11艦隊が作戦を中断し撤退したと思われていたが、どうやらファジー島後方にあるカレニア島に攻撃を仕掛けているらしい。




 そこからはまあ、想像通りで敵の小型艦隊が両艦隊の後方に出現したから出ばなを挫いてほしいそうだ。・・・・まあ、思うところはいろいろあるが俺たちは軍人だ。




 国に忠義を尽くし、国のために死ぬ。俺たちはどんなに疲れてようが、人不足だろうが敵を薙ぎ払う義務がある。今回も同じだ任務に疑問を持つな、ひたすら飛び続けろ。以上」




「ふっざけんな! こんのくそキチ」

「待て馬鹿! 俺のさっきのやつ聞いてたよな? アスワドお前、少し自我を抑えたほうがいい」




 スクアラの作戦説明を聞いたアスワドの率直な意見はスクアラ自身によってかき消される。




 彼らは既にFCL内に待機しており、作戦説明を受けてからいつも通りに出撃の号令がかかるまで待機していた。そしていつも通りのおしゃべりタイム。




「ありえなくないですか? 敵の仕返しならまだしも、何で意味わからんことしてる奴らの手助けなんてしなきゃあいけないんです?」

「命令だからって言っただろう」




「確かに、支援するはずだった奴が逆に支援されるのはさすがにこの作戦案を練った人の頭を疑いたくなるわね」

「命令に疑問を持つな」

 アスワドとジゼルはスクアラに全く配慮せず、思い思いの愚痴をこぼしていく。




「お前ら、新人のくせにでかい顔しすぎじゃないか?」

「まだ、現場の空気に押しつぶされていない若者の貴重な意見ですね」

「アスワド、お前調子乗ってるだろ」




「いや、切れてるんですよ。無意味な戦闘ばっかでぶっちゃけ味方を殺しているようにしか思えない」

 スクアラは黙る気配がしないアスワドに少しひるむも、何とかこの生意気な口を叩かなければと思う。




「生意気な口をきくな。さっきも言ったろ国に忠義を尽くせと、軍に入った時点で俺たちは武器で、トップにしてみれば俺たちは数字でしかない。要は俺たちに私情はいらないんだ。いくらつらかろうと黙って戦うそれが俺達兵士だ」




 アスワドはスクアラの言葉に納得できてしまうところがあったので一瞬黙ってしまう。そこからまた反抗するのも決まりが悪いので黙っておくことにする。だが、内心の感情は変わっていなかった。




「おら、分ったらお前ら、今は戦闘の事だけを考えろ。さすがにこんな連戦続きじゃあ俺達も危険だ。カバーなんてあてにすんなよ」




 スクアラの警告に仕方なく、アスワドは怒りを奥底に沈めて数回深呼吸をして何とか緊張を高める。酷使により若干震える手で左右にある操縦レバーを握りしめる。




「これ、もちろん給金はずみますよね?」

「さあ、直談判でもして来い」




 そんな軽口をスクアラと交わした後、アスワド達は甲板に上がり何度目かの大空へ飛ぶ。そこから編隊を組み目標へ向かい、敵のFCLと会敵しようとした時、そこでアスワドの意識は途絶えた。




アスワドが目を開けると、見知らぬ天井ではなく見知った顔が彼をのぞき込んでいた。




「瞼が動いたと思ったら、やっと目覚めたのね。久しぶり」




 ジゼルは体を起こすと、船医を呼びに行こうとする。アスワドは彼女を呼び止めようとしたが、うまく声が出なかった。体全体が倦怠感にかられ、体を起こすこともままならなかった。




 四肢を動かしてみると、左腕に固いものがはめられていることに気付く。見てみようと腕を持ち上げようとするも、その固いものによって阻まれる。アスワドは手錠をはめられていると何となく察する。




 また、右手には点滴がされてあって、半分ほど減っていた。最後の記憶をたどってみるも、支援艦隊の援護のためにFCLに乗り込んだところまでしか思い出せない。




 そして、この倦怠感とジゼルの言葉、何よりも腕の手錠。何が何だかがさっぱりであった。というより、考えようとするも頭がうまく働いていなかった。




 混乱しているアスワドの元にジゼルが船医を連れて戻ってくる。

「おい、これ、どういう、ことだ?」

 アスワドはとぎれとぎれになりながらも、現状の説明を求める。




「まあ、落ち着きなされ、なんていったって、1週間も眠ってたんだ。ジゼル、こいつを起こしてやれ」

 船医は白衣に片手を突っ込んで、淡々と語る。アスワドはジゼルに上体だけ起こされると、船医に男とは思えない細い手でアスワドの脈や瞳孔を軽く検査する。




「ほれ、水だ。一気に飲むなよゆっくりとだ」

 アスワドは介護されてる気分になりながらも、ジゼルが持ってくれているコップにささったストローを咥える。体が久しぶりの水分に喜ぶ。




「で、どうなってんだこれ?」

 アスワドは一息つくと、本題に入る。

「まあ、気になるか、後で嫌になるぐらい聞かされると思うが、ざっくり言ってやろう」




 まとめると、アスワドはジゼルとは似て非なるような常識を越えた動きをし、戦艦まで戦闘不能にした。その後、なぜか支援艦隊の方へ向かおうとした途中で停止したのであった。




 艦長はその行為には悪意があったのかもしれないと見て、一応の拘束をしたのであった。そして、今現在は補給隊が到着したので第9艦隊は帰還しているのであった。




「ってことは、あれか? お前みたいに敵を殺しまくったのか」

「いや、私の時はそんなに知らないけど、あんたあいつらの動きをとめてた」

 ジゼルの説明によるとそれは、最初気のせいと思っていたのだが、アスワドは覚えてないが当時ははっきりとした声で「邪魔だ!」といい放ち、FCLの動きを止めたということだった。




「マジか、そんなん強すぎるだろ」

「といっても、ほんの一瞬だけだったけど、まあ、気が一切抜けない戦場では十分チート級ね」

「得体の知れんことが起こったのに楽観すぎだろ君ら。で、体調はどんな感じだ?」

 若干、引いている船医にアスワドは全体に倦怠感があることを伝える。ジゼルもそうであったようでうんうんと頷く。




「後遺症? が同じならほとんど同じことが起こったって考えてもよさそうだな。待ってろ艦長と部隊長を呼んでくる」

 そう言って船医は頭を掻きながら出ていく。




「あ、そうそうあんたが眠っている間に、ちょっと、いや結構なビックイベントがあったのよ」

 ジゼルは再び椅子に座ると楽しそうに話し出す。




「なんだよ、それって?」

「亡命者よ、しかも技術者」




 ジゼルの話はこうであった。アスワドが暴走してから翌日、作戦は成功したので補給隊を待ちながら通常の警戒をしていると未確認のFCLが艦隊に急速接近しているのを偵察隊が発見したのだ。




 直ちに迎撃しようとブレーズ隊が出撃しようとしたのだが、間に合わず未確認機はネウケン2世の甲板に着艦する。船員たちは武装してその機体を取り囲むと、出てきたのは白旗を持った20代前後の東洋人の女性であった。




 彼女は自分は国から逃げてきた亡命者であることを説明し、保護を求めた。司令官のテイクは上官に相談し、本国まで護送することになったのだ。




「すごいのは、彼女が乗ってきたFCLよ! アメリア軍のFCLよりスペックを凌駕してるのよ!」

「そいつはすげーや、俺たちは今度からそんなハイスペックな相手とやり合わないといかないのか」




 ジゼルはアスワドの返答が予想と違ったのか少しだけ不機嫌そうな顔をする。

「違うわよ! 彼女が軍のFCL開発の設計者になれば私たちがハイスペックなFCLに乗れるわけ! つまりFCLの時代が始まるのよ!」




 アスワドは亡命してきたやつがいきなり軍の機密でもある新兵器の開発に携わるのかは疑問に思ったが、もしそうなるのならジゼルの言っていることは正しかった。




 今はまだ主力を補うには心もとないFCLだが、近い将来FCLが戦争の主役になる。そう考えると体が熱くなった。

「悪くないな」

 そう言ってアスワドはジゼルと一緒に笑った。

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