咲子の人生
ここは愛知県の田舎町。周りは畑、山に囲まれて、空気は澄んでいるけど、退屈。うちは6人兄弟で、おまけに貧乏。私は下から2番目だから、いつも姉のお古を着せられる。不満はいつも私の心の中にあった。
「おーい。貧乏咲子!お前の姉ちゃん、結婚するんだってな。」
「変なあだ名で呼ばんといて。くそガキ健太。」
近所の健太はいつも私をからかってくる、たわけ。
「 咲子の姉ちゃん、顔は綺麗だからな。怒るとお前にそっくりだが。」
「一言余分だわ。」
そうだ。私の姉は先日結婚が決まった。隣町の男の人と。お見合いだった。小さい町だから、すぐに話は広まる。それも私がこの町を嫌いな理由だ。私はこの話をされると少々へこむ。大好きな姉が家から出ていってしまうからだ。
母が忙しい分、面倒を見てくれるのはいつも姉だった。友達と喧嘩をした時も、貧乏と馬鹿にされた時も姉には素直に話せた。正直、一緒についていきたいぐらいだった。
「お前のきっつい性格じゃ、もらってくれる人はおらんな。」
「余計なお世話。高校を卒業したら、都会の素敵な人と出会うんだから。」
健太は、無理だと思ったのか馬鹿にしたように笑った。