第7話 げに恐ろしきは
本当に書き溜めが消えてしまった。
次からは、出来次第の投稿になるので、少し遅くなると思います。一日の半分職場にいたら書けないよ……orz
少し手なおししてます。
装備名はドイツ語で優美な天使です。
テッタの言葉に打ち拉がれた私はブレイブと二人でプレイヤー達が出している露店を巡っている。
クラウド達三人はポーションとかの準備で別行動中。
初期防具が珍しいのか、私は周囲の視線を集めてしまい、こんな事なら早めに装備を変えておくんだったと、軽く後悔をしている最中だ。
それにしても色んな人が露店を出している。ポーション類やアクセサリー、防具、武器、他にも用途の分からないアイテム等が並んでいた。
「メルが持ってる防具スキルは服だったからあっちの方がいいのある筈だ」
「なら行こう、ぐぁ!?」
ブレイブの指差した方へ向かおうとした瞬間、横合いから衝撃を受けた。続け様に何か柔らかい物に拘束される。
うそ、街中とはいえ、私が気配を察知出来なかった?
「キャーなにこの娘‼ 超可愛い‼ おまけに初期防具って、完全にあたしを誘ってるよね? そうだよね? 任せてこのマグマの如く熱き滾る思いを胸にお姉さんが腕によりをかけて作っちゃうから!!」
顔を拘束されて相手を見る事が出来ないけど、間違いなく女性で私は今胸で拘束されているらしい。
何か物凄い興奮してるけど、まずは放して欲しい。息が、息が苦しい。
「じゃあ、お姉さんと一緒に組合所に行こうか」
「興奮するのは構わないけど、いい加減メルを放してやってくれリズ」
「ん? ああ、誰かと思えば君か少年、あたしに何か用かな?」
「用って訳じゃないんだが、俺の連れを放してやってくれ、マジタップしてるから」
「ん? ああ!! ごめんごめんついつい我を忘れちゃった」
し、死ぬかと思った。初めての死に戻りが街中で窒息死とかになるところだった……
「ああ、もうね超ラブリー、完全にお姉さんの事を誘惑してるよ」
この人、目が危ない気がする。
「と、こ、ろ、でぇ、こんなかわゆい娘とどんな関係なのかしら烈剣くん? お姉さん通報した方がいいのかしら?」
あー見た目小学生に見えるから勘違いされてるパターンかな? それに烈剣って、ブレイブの事?
「リズ勘弁してくれ、俺とメルは幼馴染だよ。それと見た目小学生だけど、俺と同い年だから通報せんでいい」
「メルちゃんって言うんだ。あたしはリズ、可愛いもしくは美人な娘専門の裁縫師だよよろしくね」
リズと名乗った女性は手を取ると握手をしてとてもいい顔で笑った。
「それじゃあメルちゃんの装備を作りに行こっか」
え、いつの間にそんな話になってるの? 私の手を引いて歩き出してるし。
「え、えぇ、ちょっと、ブ、ブレイブ、助け……」
「あー、暴走したリズは止まらないから頑張れ、まぁ、腕は一流だから安心していいぞ」
いや、腕は一流だからって安心出来ないよね。この人の目って性犯罪者のそれにしか見えなかったよ。今も鼻息荒いし、なまじ美人なだけに物凄い残念臭がする。
「リズー、この後狩りに行くからちょっぱやで頼むわ」
「まっかせなさい! 今渦巻くこの熱いリビドーは不可能を鼻で笑って可能にするからぁ!!」
あれよあれよと組合所に連れていかれて私は手持無沙汰に椅子に座っているだけである。
「ねえリズさん」
「リズでいいよ」
こちらに目を向けず布を縫っていくリズの手は一定のリズムで動いている。
「じゃあリズ、採寸とかしなくていいの?」
リズは組合所につくなりインベントリから布と針を取り出して作業を始めてしまったのである。私でも知ってる工程を幾つか飛ばしている。
「え、服の上からでも正確にスリーサイズを見抜けるから必要ないよ?」
「え、じゃ、じゃあ、型紙は?」
「そんなモノはロマ〇キャンセルしたから、大丈夫」
大丈夫なのそれ? しかも古い格闘ゲームネタだ。
そんな風に私と会話してもその作業は淀みなく進んでいく。
「えっと、ペロンはいくらくらいになるんですか?」
「いらない」
「……え?」
聞き間違え、た?
「別にペロンが欲しくてやっている訳じゃないから、あたしが着せたいって思った衣装を着せたい娘に着せられればそれで満足。強いて言うなら、私が作った服を着てスクショ撮らせてくれればそれでいいの」
自分が満足するため、そう聞いた瞬間私と似てるなって思い、少しリズと仲良くなれそうな気がした。
「それでも作れって言ってくる奴らも居るんだけどね。そう言う奴らからペロンをぶん捕ってるからねペロンには不便してないの」
作業をしていた手が止まって、リズが此方を見る。その双眸には先程からは信じられない程の真剣な光りがあった。
「出来た‼ お姉さんの最高傑作だよ」
そう言って出来上がった服一式を拡げる。
真紅の布を下地に黒のフリルをふんだんに使った、俗に言うゴシックドレス、もしくはゴスロリ服と呼ばれる服であった。
手渡された装備のステータスをみると唖然とする以外ない出来である。
アイテム名 アンムーティヒエンゲル(頭部)
等級 ☆9
品質 優良
スロット 8
残りスロット 0
耐斬補正 20
耐打補正 17
耐刺補正 15
耐魔補正 30
耐久値 100/100
発動スキル
【耐久値減少軽減 Ⅱ】【対遠距離防御補正 Ⅰ】
評価
リズが作った真紅のヘッドドレス、執念と渦巻くリビドーを元に作りあげられた。げに恐ろしきは変態の執念である事を示した一品。
アイテム名 アンムーティヒエンゲル(胴部)
等級 ☆9
品質 優良
スロット 8
残りスロット 0
耐斬補正 30
耐打補正 20
耐刺補正 15
耐魔補正 36
耐久値 100/100
発動スキル
【耐久値減少軽減 Ⅱ】【対遠距離防御補正 Ⅰ】
評価
リズが作った真紅のゴシックドレス、執念と妄想の果てに作りあげられた。げに恐ろしきは変態の執念である事を示した一品。
アイテム名 アンムーティヒエンゲル(腕部)
等級 ☆9
品質 優良
スロット 7
残りスロット 0
耐斬補正 23
耐打補正 18
耐刺補正 12
耐魔補正 29
耐久値 100/100
発動スキル
【耐久値減少軽減 Ⅱ】【器用値強化 Ⅰ】
評価
リズが作った真紅のゴシックドレス、執念と妄執の限りを尽くして作りあげられた。げに恐ろしきは変態の執念である事を示した一品。
アイテム名 アンムーティヒエンゲル(脚部)
等級 ☆9
品質 優良
スロット 9
残りスロット 0
耐斬補正 30
耐打補正 22
耐刺補正 17
耐魔補正 37
耐久値 100/100
発動スキル
【見えそうで見えない】【筋力強化 Ⅰ】
評価
リズが作った漆黒のソックスと靴、執念と下心の極致にて作りあげられた。げに恐ろしきは変態の執念である事を示した一品。
えっと、等級☆9? 何コレ?
「さ、着替えた着替えた、簡易更衣室もあるからそっちで着替えてね」
お昼のバラエティーであるような輪っかに布を取り付けただけの更衣室とも呼べない物へ連れてかれ布を閉められる。
着替えるしかないか、しかし装備を変えるのに実際に着替えなきゃいけないなんて、タッチで変更してくれれば楽なのに。
特に個性のない初期防具を脱いで、アンムーティヒエンゲルへと着替えるけど、何コレ着替え難い。
悪戦苦闘しながら何とか最後のヘッドドレスを着け終わった感想としては、リアルでコレと同じような服を着てる人、本当に尊敬する。私は面倒過ぎてあまり着たいと思わない。
「初めてだから、リズこの着方であってる?」
「ら、」
簡易更衣室の布を開けて、リズに確認をとろうとしたんだけど、肝心のリズが機能停止している。
「ら?」
「ラブリー!!」
再びタックルを喰らうとは思わなかった。
「あーもう超ヤバイ、ヤバすぎるって、もうね何て言うの? どんな言葉すら意味をなさないって言うか、いや、似合うと思って作ったけどさ、まさかここまで似合うなんて!! あー鼻血出そう。リアルで出てないか心配だわ。でも今はやる事がある、そうあたしにはやるべき使命がある! さあメルちゃんポーズとって、撮影会しましょうね」
や、ヤバイって、コレ完全に犯罪者の顔だって。間違っても美人がしていい顔じゃないよ。
「さぁ! さぁさぁさぁ!! 早く早く」
こ、恐い、鬼気迫るってこう言う事を言うんじゃないかなって感じる程だ。
結局、気圧された私は逆らう事をせず何度も何度も違うポーズを決める事になった。
満足したのかホクホク顔のリズとフレンド登録をして、代金の話を再度して、遠慮するリズに☆6の鋼製の大剣と100万ペロンを無理矢理渡して組合所を出る。
流石に☆9の装備一式をただで貰う勇気はないって。
本当に恐ろしいのは紳士、淑女の執念っと言う話でした。