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エンドレスフロンティア  作者: 紫音
三章 共鳴を始める鼓動達
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第47話 ドラム缶

各章にタイトルをつけてみました。

 ふぅ、汚物の処理終了っと。


 存分に八つ当りしたからか、気分がすっきりとした。さてと、場所を変えてバカンスの続きでもしようかな。


「あ、あの!!」


 そんな私を止めたのは先程助けた姉の声だった。

 目の前で残酷なショーを繰り広げたから、声を掛けてくる事はないと思っていたんだけど、いったいなんの用だろう。


「何?」


「助けて頂いて、ありがとうございます」


 キッチリと頭を下げてお礼を述べる彼女の姿は、ああ、善良な人なんだなと思わせる。


「別に、さっきも言ったけど、あれはただの八つ当りだから、お礼を言われる事じゃない」


「それでも、私たちは助かりましたから」


「そう、なら良かった」


「私はファラ・ソニエです」


 別に訊いてないんだけど、ああ、でもなんか無下にするのも違う気がするし、別に今の装備の私をメロディアだと認識する事はないとだろうし、バレたら逃げればいいか。

 

「私はディア」


「ディアさんですね」


「ああ、もう姉さん!! 何普通に話してるのさ!!」


 先程まで呆けていた弟の方がファラに、あんな仮面を着けた不審者と何を普通に話してるのさと詰め寄っている。


 気持ちはわからなくもないけど、姉であるファラの対応を見た後だと失礼な礼儀知らずにしか思えない。


「リオ、助けて貰ったらお礼を言うのは当然でしょ?」


「俺は助けてくれなんて一言も言ってねえし」


 +ガキンチョのようだ。


「リオ、あのままだったら私達は大変だったでしょ?」


 ファラは諭すように言うけれど、それは逆効果だと思う。


「そんな事ねえし。あんな状況俺はどうとでもできたし」


 ほらね。しかし、面白い冗談だ。ファラの後ろに隠れている事しかできなかった分際でよくもまあ、そんな言葉がついて出てくるものだ。


「ファラ、ガキンチョのお礼なんて別にいらない」


 そも誰かに強要されたお礼などなんの価値もない。


「な! 俺がガキンチョだと!?」


 本当の事を言われてムキになるところが特に。


「庇ってくれたのはファラ、お礼を言ったのもファラ、貴方は何もしていない。ただピーチクパーチクと囀ずってるだけ、それをガキと言わず何と言うの?」


「煩い! だいたいガキって言ったらそっちこそガキだろう。俺は中3だぞ、小学生がタメ語使ってるんじゃねえよ!!」


 はぁ、背丈が高かったから、高2辺りかと思ったけど、中学生だったとは……ある意味納得、でも私をガキと言った事は納得できない。


「ふぅ、一つ良い事を教えてあげる。無能の血筋自慢と、年齢話は滑稽だから止めた方がいいよ。それしか相手に勝るものがないと自分で公言しているのだから」


「どういう意味だよ」


 正直まとも相手をするのが面倒になってきたので手早く黙らせる事にしよう。言葉が通じないなら肉体言語しかない。

 決してガキと言われた事への仕返しじゃない。じゃないたらじゃない。


「俺が無能だ、と!?」


 大太刀を抜刀し首の薄皮一枚を切ってやる。

 それだけでビビったようだ。顔が青ざめている。


「理解した?」


「……あ、ああ」


「そう、首を落とさなくてすんで良かった」


 鯉口の音と共にリオと呼ばれた少年が崩れ落ちた。


「リオがすみませんディアさん」


「ファラが悪い訳じゃない。それと外見であまり人を判断しない方がいい。私は高3」


「「え!?」」


 ファラ、そのえって何かな? いやわかるから言わなくて良いけども。


「それと、重ね重ね申し訳ないんですが、第一の街はどちらでしょうか?」


 本当に申し訳無さそうに体を縮こまらせているファラ、その姿はボロボロで、同じ女性として同情にたるものだった。

 また何処かで隠れていようかと思ったけど、拾ったなら最後まで面倒を見るか……

 正直、そろそろ帰らないとリズの反動がヤバそうだし。


「いいよ。案内してあげる」


「本当にありがとうございます」


 別にいいよ。私も憐れな子羊が手に入ってWIN・WINだしね。


「ほら、リオもお礼を言う」


「あ、ありがとう……ござい、ます」


「なら、準備を始めようか」


 インベントリから鋼で作ったドラム缶と容器に入った水を取り出す。


「あ、あの準備って何を」


 ちんぷんかんぷんといった表情をしている二人の姿は控えめに言ってボロボロ、悪くいえば汚ならしいといったところ。


「そんな薄汚れた格好で街に戻るの?」


 ここの運営は本当に無駄に優秀だから困ったものだった。

 この間のバージョンアップで色々と細かく追加された。

 その一つがリアルと同じように汗を掻くように仕様が変更になった。今までは装備や体に付着した汚れも放っておけば消えていたのに、洗濯や磨いたりしないといけなくなった。

 もちろん体に付着した汚れを落とすならお風呂しかない。そんなわけで私はドラム缶風呂を用意してる最中だった。


「あ」


「ゲームなんだから別によ、あだっ!!」


 アホな事を言ったリオの頭に凸ピンを叩き込むと地面にのたうち回る。


「お前は黙って何処かに行ってろ。それとも姉のお風呂を覗く気か?」


 大太刀をチラつかせながら脅せば、脱兎の如く駆け出していった。のたうち回っていたのが嘘のようだ。


 さて、準備準備、インベントリから水着を取り出して手渡す。


「これに着替えて」


 簡易更衣室を取り出してファラの背を押し中へと入れる。


「アウラ来て」


「ふむ。いつものようにすればいいのだな?」


「お願いね」


 アウラと小声でやりとりをしてお湯を沸かしてもらう。

 その間に私も用意を済ましてしまおう。


「【スタイルチェンジ・海水浴】」


 先の戦闘で使ったクイックチェンジと同じように、新しいスキルから得たオリジナルアーツで着ていた装備が一瞬で水着に切り替わった。インベントリから仕舞われてしまった仮面を取り出してつけ直す。


「マスター終わったから戻る」


 アウラが召喚石に戻ると、ファラが更衣室から出てきた。ナイスなタイミング。


「ディアさん着替えが終わりましたって、なんでディアさんも水着を着てるんですか?」


「何故って、私も入るからだけど?」


 むしろ、それ以外に何があるのかとこてんと首を傾げれば、何故か顔を赤くして目を逸らされた。


「さ、冷めないうちにさっさと入る」


「あ、はい」


 流石に体を洗うものまではないので、入浴を薦めて一緒に湯に浸かる。


 ふぅ、毎度の事ながら、アウラが沸かすお湯はいい湯加減。いつもは一緒に入っていんだけど、今日はファラがいるから、ごめんねアウラ。


「ついでに汚れを落としちゃおうか。【クリーン】」


 ファラを淡い光が包むと、汚れが嘘のように落ちている。

 これがバージョンアップに伴って需要があがったスキルの一つ生活魔法だ。

 これがあれば、火を起こせ、汚れを落とせ、乾燥ができ、と生活に必要な魔法が使える。


 え、汚れを落とせるならお風呂は必要ないじゃないかって? そんなの私がお風呂好きだからに決まってるじゃない。


 リオが帰って来たらクリーンで汚れを落としてお仕舞いにするつもりだけど。


「気持ちいい。でもディアさん」


「ん」


「お風呂に入る必要は……」


「私が入りたかったから、それにこうお湯に浸かってると、少しは忘れられるでしょ?」


「あ……」


「よく頑張ったね。怖かったでしょ?」


 ゲームとはいえ、人に悪意を向けられるのは怖いものだ。その悪意は本人が気付かないうちに心を蝕んでいる事もある。

 だから、解さなきゃいけない。ファラの事を抱き締めて、背中をさする。


「……はい。はい」


「弟ならいないから、好きなだけ弱音を吐くといい」


 ポツポツと語り出したファラに相槌をうち、背をさすり慰める。

 結局、ファラが落ち着いたのは、二人揃って逆上せる寸前になる頃だった。


応援ありがとうございます。励みになります。

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