第46話 八つ当り
今回の話は少々暴力的ですので、苦手な方はご注意ください。
足音の方へと森の中を駆ければ、すぐにプレイヤーの集団を発見する事ができた。
念の為、暫く様子を伺った感想は、汚物の方が処理をすれば残らないだけマシといった感じだ。
追われていたのは男女の二人組、二人とも私と同い年くらいだが男の方が姉さんと呼んでいた事から二人は姉弟だとわかる。
二人は初期装備だったので始めて間もないだろうから、ステータスやスキルもそこまで育っていない筈だ。
それなのに三十人程の集団から逃げられているということは明らかにあの集団がわざと逃げられるように調節していたんだろう。
なんと悪趣味なと思いつつ、目の前の集団をどう蹴散らすかを考えていると、状況が一変する。
弟の脚に投げナイフが刺さり、その場に転がった。
その弟を庇うように前に立つ姉。
PKの連中はそんな姉をも甚振りじわじわと追い詰めていく。
それは明らかに弱者を甚振って悦に浸る顔をだった。
これ以上確認の必要もないくらい初狩りの光景に呆れて私は隠れていた場所から出ていく。
「はっは、あの女ブルってますぜ」
「後ろの男を見ろよ。あの情けない面をよ」
「うわ、ヒデェ、姉ちゃんが甚振られてるのに何にもしねぇなんて、男失格だろう」
「お姉ちゃんもどうだい、こんなクソみたいな弟を見捨てて俺達とキモチイイ事しない?」
「十八以下でも同意と倫理コードを解除すればそういうことできるんだぜ、ああん」
ガサガサの音をならして出てきた私に気付いたのか訝しげに此方を見る数人。
「おいおい、なんだよ道にでも迷ったのかガキンチョ」
「いや、待て、ガキにしてはいい乳をしてやがる」
誰がガキか、不躾な視線といい下品な言動といい、本当に不愉快な奴らめ、幾らゲームの中とはいえ些かモラルが低すぎないだろうか、いやもとよりPK行為、それも初狩りをしようとしてる汚物以下の存在に道徳を説いても意味はないが。
この手のやからは口ではなく体でわからせるしかないのだ。自分達がやってる事がどれだけ惨いのかを。
初狩りの集団を無視して震えながらも弟を守る姉の前に立ち、インベントリからサンゴ特製のポーションを二つ出して渡す。
「ごめんなさい出てくるのが遅れた。もう大丈夫、後は私に任せて」
「え、え? 貴女は」
突如現れた私に困惑する姉、まぁ、当然の事だろう。しかし、私が言ってる事を理解したのか、今まで恐怖に抗っていた脚から力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「さて」
くるりと向き直れば、初狩りの集団が私の事をニマニマと見ていた。
大方人数が多い自分達に私が勝てるとは思っておらず、私が何時啼いて止めてと懇願するのかを想像しているんだろう。
「おいおい、お嬢ちゃんよ。俺達に勝てると思ってんのか?」
「だとしたら、笑える冗談だ」
「途中で止めてといても知らねえぞ」
やっぱり、こういう奴らが考えそうな事なんて、所詮こんなもんだ。ありきたり過ぎて面白くともなんともない。
「俺達は三十人もいるんだ。止めるなら今のうちだぜ?」
「ふふふ」
「あん?」
急に笑いだした私を訝しむように見てくる男達。
「幾つか勘違いをしてるようだから正しておく、一つ、三十人”も”と言ったけど、もじゃない。たかだか三十”しか”いないの間違いだ」
こんな隙だらけの奴ら、それこそ後50倍の人数がいても余裕で蹴散らせる。
「二つ、これから始まるのは狩りじゃなくて、理不尽な八つ当りだということ」
もとより、ここには私のバカンスタイムを邪魔した奴らを処しに来ただけだ。
「そして最後に、啼いて止めてと懇願するのはお前達だということ」
その宣言を合図に私は駆け出した。目標は私の事をガキンチョとほざいた汚物だ。
闘気を使用した踏み込みについてこれず間抜けな顔をした目標の脚を鞘から抜いた大太刀で両断する。
虹の軌跡に両足を両断された汚物は重力に従い落下、その間に右肩をバッサリと斬り捨て、ついでに左手も肘から先を落とす。
ここで漸く私の居場所がわかったのか、周りの汚物達が臨戦態勢をとろうとした間に四人を同じように達磨にし、続け様にオリジナルアーツを放つ。
「【瞬華咒刀】」
八つ虹の軌跡が閃き、更に戦闘不能者を出していく。
「な、なんで、何がどうなったんだよ!?」
「し、知らねえよ!!」
「お、俺が知るかよ!!」
「い、いでぇよ!!」
「足がぁ!! 俺の足がぁ!!」
「僕の腕が、腕が無い、こ、こんなの夢だよ」
さて、これで残り半分、想定より更に弱い。弱い者苛めをするやからなんてこんなもんか。
「お、俺は逃げる、ぞ!?」
逃げ出そうとした一人に大太刀を投げ左脚をを付け根から両断、汚物は転がり地面に汚れをばら蒔く。
私が武器を投げた事によりチャンスだと感じたのか、三人程突っ込んでくるが……
「【クイックチェンジ】」
イベントが終了してから手にいれた新しいスキルのアーツを使い、手に大鎌を呼び出す。
黒い大鎌をそのまま振り抜けば、他の奴らと変わらず、脚のない汚物ができあがる。
大鎌を肩に担ぎ、残った汚物達を見れば、そこには既に戦意の欠片もなかった。
「わ、悪かった」
「何が?」
汚物の一人が地に頭をつけて謝ると、それにつられて他の奴も地に頭を擦り付け始める。
「あ、あんたに失礼な事を言ってすまなかった」
「で?」
「もう初狩りなんてしねぇ」
「だから?」
「頼む。見逃してくれ!」
「嫌だ」
「マジで俺達が悪かったから」
「私は悪くない」
随分と虫のいい話だ。自分達が敵わないから許してくれだなんて、ここで見逃しても、どうせ私の知らないところで同じことをやるに決まってる。
だからさ、教えてやらなきゃいけない。理不尽に襲われる事の恐怖を、苦痛を、これでもかってくらいこいつらの足りない頭に刷り込んでやらなくちゃ、だって。
──ダッテ、イタミノナイキョウクンナンテ、イミガナイモノ。
──ソノタメニ、コロサナイデアゲタンダカラ。
「大丈夫、リアルと違って痛みは半分だから」
あ、でもサンゴがくれた痛覚を強化する薬、絶叫薬をつかうから、半分じゃないかもね。どうでも良いことだけど……
その後すぐに森には汚物達の懺悔にもにた絶叫が長時間響き渡った。
明日から少し更新が遅くなると思います。




