第4話 弟子入り
ブックマークありがとうございます。
昨日はあのままあの狼(後で調べたらトリニティーウルフって言う名前だった)を夕方になるまで狩った後、街の宿に泊まって一夜が明けた。
オープン記念とかで、しばらくの間エンドレスフロンティア内の時間の流れかたはリアル時間の三倍に設定されているらしい。
その為、宿に入った私は一旦ログアウトをしてお夕飯の下準備を済ませてから、再度ログインした訳だ。
再度ログインすると、既に10時を廻っていて、こっちでの今日はブレイブと別行動になっている。
特に目的の無い私は、昨日の狩りの成果を確認しながら街中をブラブラとしていた。
CN メロディア
MP 30/30
ST 80/80
筋力 12
体力 8
器用 12
精神 3
残り経験値 47
残りSP 2
所持金 900ペロン
装備スキル
【斧Lv:5】【腕力強化Lv:3】【脚力強化Lv:4】【服Lv:1】【行動制限解除━】【集中Lv:2】【】【】【】【】
控えスキル
無し
服以外のスキルは順調にレベルを上がっているようで安心した。何でレベルにばらつきがあるのかブレイブに訊いたら、スキルはそのスキルにあった行動をすると経験値を得てレベルアップするらしい。
昨日は結局二人とも敵の攻撃に当たらなかった為服のレベルが上がらなかったのだ。
後、ステータスを上げるのもかなり苦労する事が判明した。
登録の時には一律5経験値で1ステータスを上げられたのに対して、今ステータスを上げようとすると、1上げるのに100経験値もかかるらしい。
私もブレイブもそれを見てゲンナリとして、昨日の狩りは終了した訳だが、帰り際にブレイブはこの経験値量はある意味納得だなとか言っていた。
ステータスの上がりが早くなれば早く成る程、ゲームとしてのバランスが取り難くなるうえ、ステータスでゴリ押しが出来るようになるとスキルの大半がゴミになってしまう為だろうと。
なのでステータスの事はしばらく放置する事にして、次に何のスキルを選んだ方がいいか悩んでいる最中だ。
空きは四枠あるから出来れば早急に全ての枠を埋めたいけど、使わないスキルを持っていてもしょうがないので、吟味する事も大切である。
個人的には拳や脚でも良いかなと思っている。胸部装甲が邪魔だけど身体を動かすのは得意だしね。
でも、ずっと血生臭く狩りばかりと言うのも、なんだか味気がない気がして、それなら生産スキルでも取ろうかなっと思ったんだけど、生産スキルは一律消費SPが2なので、どれか一個取ったらそれで終了になってしまう。
もしも私に合わないスキルを取ってしまったらどうしようかと思ってしまって、いまいち踏ん切りがつかなかった。
そんな折にふと何か甲高い音が聞こえた。
あ、また。
なんだかとてもキレイな音だ。
足を止めて、辺りを見回してみると、あるお店が目に入る。
お店の奥を覗くと、筋骨粒々の強面の中年男性が真っ赤になった金属をハンマーで叩いていた。
男性は無心といった様子で金属を叩き続けていた。その度にキレイな音がなる。音の正体はこれだったらしい。
赤みが消えてきたら、多分炉かな? に金属を入れて、また真っ赤になったらハンマーで叩く。それだけを繰り返している。
ふと、男性の腕が止まった。こちらを見ると歩いてくる。
無断で見てたのがいけなかったかな。怒られるかもそう身構えて、だけど言われたのは思いがけない事だった。
「さっきから熱心に見てるが、楽しいか?」
随分と低い声だった。顔には困惑とした感じが見える。
「うん。とっても、それに音がキレイだなって」
「音がキレイって、ただ鉄を鍛えてるだけなんだがなぁ」
「もっと近くで見てもいい?」
「構わないが、変わったお嬢ちゃんだ」
そう言って作業に戻っていく。後をついていって間近で見学をする。
鉄が形を変えていく様を見て、私はただ魅せられた。「終わったぞ」っと言われて初めて気付くらいに。
そして、気付いたら口を開いていた。
「私もやってみたいな……」
「本当に変なお嬢ちゃんだな。お嬢ちゃんは異邦人だろう?」
ただやってみたかっただけなんだけど。そんなに変かな?
「うん。そうだよ。オジさんは原住民だよね?」
そう言うと余計に困惑された。
「本当に変わってるなぁ。異邦人って言えや、俺達の事をNPCとか物みたい扱ってくる奴らばかりだってぇのに、鍛冶屋に来て武器を買わないし、鍛冶を見たいとか言い出すし、他の異邦人とは違って横暴な態度でもないし、ましてや女の身で汗臭いイメージのある鍛冶をやってみたいときたもんだ」
え、だって武器を買うお金はないし、鍛冶は見てて面白かったし、昨日の時点で私はNPCって概念を捨ててるし、面白そうならやってみたいと思うのが普通だし。
どこも変わってないと思うんだけど……
「えっと、気に障った?」
「いんや、むしろ気に入った。異邦人の中にもお嬢ちゃんみたいな奴がいるんだなってさ」
あ、良かったよ。
「街の連中も異邦人の横暴さには呆れてたからよ。お嬢ちゃんみたいな奴がいるって知れば少しは色々と思い留まってくれるだろうしな」
こっちでの時間1日で住民の人達に呆れられるってどれだけ横暴な事をしてるんだろうね。それと最後の方に物々しい雰囲気を感じたんだけど……気のせいだよね?
「俺はガンテツ」
「私はメロディア」
「おう。メロディアがよければ俺が鍛冶を教えてやろうか?」
「いいの?」
私としては渡りに舟だけど、私がガンテツさんに出来る事ってないよ?
「おう。教えてるって事は弟子にするって事だからよ。色々やってもらう事もあるがそれでもよかったらな」
「私異邦人だから居ない日もあるけど、それでも?」
「あん。うんなのは分かったうえで言ってんだ。取り敢えず宿代が勿体無いから、この工房に住み込みでやるか? 住み込みの場合は料理が出来れば食事の用意とかしてもらいたいけどな」
なんと言う事だろうか、至れり尽くせりとはまさにこの事だろう。
家事全般は得意分野だし、これなら少しはガンテツさんに恩を返せる。
「住み込みでよろしくお願いします‼」
「おう。よろしくな」
そして私はガンテツさんの弟子になった。