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エンドレスフロンティア  作者: 紫音
二章 過去と悪意あるイベント
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第41話 Wクエスト・決着

いつもご指摘等ありがとうございます。

  天高く伸びた炎の柱が消えて、しばらくすると馴染みのある告知音が鳴る。


 ああ、ブレイブ達が勝ったんだ。

 そう思ってクエスト内容を報せるウインドウを開いて驚く。


 さっきまで戦っていたトイメイカーや、それを止めにきたティーダも私と同様に動きを止めた。


───────────────

クリア条件変更

悪魔デュークの自爆を阻止せよ。


*自爆の阻止に失敗した場合、盛大なペナルティーがありますので、頑張って阻止してください。

───────────────


 自爆の阻止、盛大なペナルティー、いったい何が起きているの?


 廃都の方を見ると、すぐに色々なマギアが空に向かって放たれている。

 ほぼすっからかんになっているSTをポーションで回復して【闘気】で視力を強化すると、オレンジ色をした小さな球体が浮かんでいる事が見えた。


 もうちょっと強化すると、オレンジ色の球体は半透明で中に人の形をした何かがいる事がわかった。

 どうやらあれはバリアみたいなもので、それを壊してあの人影を倒そうとマギアを放っているんだろう。


「少し待て、掲示板で状況を調べよう」


 廃都へと走り出そうとした私をティーダが制止する。

 確かに慌てて行動してもしょうがないか……


 でもただ待つだけというのは手持無沙汰感が凄い。そんな折り、座り込んで浅い息を繰り返すトイメイカーが目に入った。


 やっぱりトイメイカーを見ると、言い知れない悪感情が沸々と胸の内から溢れ出そうになる。

 だけど、一応はティーダの知人ということだし……物凄く痛め付けた後だけど……この後で必要になるかもしれないし……性格には難があるけど、実力だけは折り紙付きだから……

 そう、これは必要な行為だと、誰に言い訳するのか、自分に言い聞かせてサンゴ製の回復ポーションをインベントリから取り出す。


「あは、何かな? 私、いま虫の息だから、放って、おいて、欲しいなぁ」


 癪に障る笑い方に思わずトドメを刺そうかと思ってしまったけど、なんとか踏み留まる。

 ああ、駄目だ。どうにもトイメイカーを前にすると沸点が低くなりやすい。

 それでも、我慢してポーションを投げ付けるだけにしたのは誉めてほしい。


「サンゴ製だからよく効く」


「さぁーんきゅ」


「疑わないの?」


「んく、んく、ぷはぁー、ラムネ味っていいセンスしてるぜぇい」


 疑う事もせず、瓶の中身を一気に呷る。


「だって、君が私を殺すのに、毒なんて使う必要ないじゃないか?」


 さも当然と言い切るトイメイカーに思わず二の句がつげなくなってしまった。

 トイメイカーは、そんな私を構うことなく、うわ、これが等級6以上のポーションかぁ、回復が速くて気持ち悪るぅ等と言ってる。


「…………」


「まぁ、深い理由なんてないよ」


 そんなもんだろう? 人間なんてっと続ける相手に、思わずため息を吐かずにはいられない。


「あっそ、それとその気持ち悪い演技をやめて欲しいんだけど、後何のスキルか知らないけど本当の姿を見せたら?」


「あは、気持ち悪い演技は酷い。確かにボクは意図的にしゃべり方を変えていたけどさ? 全部が全部演技って訳じゃないんだよ?」


 嘘をつくコツは虚実を混ぜる事だからね。等と訊いてもいないことをのたまう。


「でもさ? ボクが本当の姿を見せていないって根拠はどこにあるのかな?」


「タコ殴りにしたとき、感触がおかしいところが何ヵ所かあった」


「それだけじゃ弱くない?」


「後は触れた時の肉質、男の肉付きじゃなくて、女の肉付きだったって言えばわかる?」


 男の姿をとっているけど、その正体は女だろうと告げれば、トイメイカーは肩を震わせて、クツクツと笑う。


「あは、あはは、ふひ、ふひひ、いやはや、それだけの情報でボクの正体を暴いた事に驚けばいいのか……それだけの情報をあの戦闘中に得ていた事に驚けばいいのか……わぁからないねぇ」


 あの笑い方は素なのか……


 彼女が指を鳴らすと、その姿はローブ姿の男から、トランジスタグラマーとでも言うべき女性の姿に変わる。


「【幻影(ふぁんとむ)】っていうスキルで、ある程度実体のある幻影を纏えるスキルなんだけど、君には効果がなかったねぇ、因みに、この姿はほぼボクのリアル準拠だからね? 中々の美人だろう?」


 確かに男好きしそうな肉付きといい。私よりは高いけど、今の平均からすれば低い身長、中間的と言うか、美人と可愛いの良いとこだけをとってきたような顔の造形。

 世の男どもが彼女にしたいと群がりそうだ。この破綻した性格さえなければだけど……


「性格は最悪だけどね」


「あは、手厳しいねぇ」


 はぁ、やっぱり好きになれそうにないな。


「好きでもない相手に優しくするほど、お人好しじゃないから」


「あは、そりゃそうだぁね。でも残念。ボクは君の事けっこう好きなんだけどねぇ」


「あれだけタコ殴りにして、どこに好かれる要素があるのかわからないんだけど……」


「ふひひ、それはボクのみぞ知るってねぇ、ま、君がボクに嫌悪感を抱くのは当然だろうしね」


 本当に知った風な口をと思うけど、今はそれどころじゃない。

 トイメイカーとの会話を打ち切ろうかと思っていた頃、タイミングよくティーダが状況を調べ終わったようだ。


「取り敢えずだが、状況がわかった」


 ティーダの説明によると、マギアによる攻撃に効果は見られず、弓等の物理攻撃も届かなかったり、威力が弱すぎて使い物にならず、八方塞がりのようだ。

 ならば、攻略するためのアイテムがある筈だと、一部のプレイヤー達はそのアイテム探しに躍起になっている。


「色々と推測はできるが、どれも決定打に欠けているな」


 確かに、もうちょっと情報があればいいんだけど……情報、情報ね。

 ……アウラ何か知らないかな?


 火の十二帝だし、封じられたとはいえ、このイベントエリアの事を知っていたし……

 迷っている時間はなさそう……


「来て、アウラ!!」


 不死鳥の紋章が刻まれた紅玉、アウラの召喚石を持ってアウラを喚ぶ。

 召喚石から焔が溢れ、渦巻き、その中からアウラが姿を現した。


「何用だマスター?」


 ティーダとトイメイカーが何か言いたそうだけど、今はそれどころじゃない。


「アウラ、悪魔の自爆阻止の仕方わかる?」


「悪魔の自爆の阻止? わかるが……そういうことか」


 アウラは廃都の方を見つめ、おおよその状況を理解したらしい。


「上位悪魔は自爆するとき、周囲に魔法を吸収する障壁を展開する。この障壁の嫌らしいところは吸収した魔法を魔力に変換、自爆の威力に変えるところにあって、あの障壁を壊すには、それなりに威力のある物理攻撃じゃないと駄目だ」


 後は、障壁のなくした悪魔にトドメを刺せばいいとアウラは言った。


「だが、あれはもう臨界寸前だ」


「アウラ、確認だけど、威力のある物理攻撃ならなんでもいいのね?」


「あ、ああ」


 そう、ならいける。


 アウラの背に乗せてもらって直接叩く事も考えたんだけど、臨界寸前って事は間に合わないかもしれない。


 なら、私が取る行動は一つだけだ。

 インベントリから剣を一本取り出して──


「まさか、二回目の死亡も自害になるとは思わなかった」


 自分の首を切り裂いた。


 アウラや、ティーダ達が息を飲む。目の前で自殺されれば当然といえば当然か。


 頸動脈を正確に切ったせいか、血液が抜けていく感覚が凄く速く感じる。

 元々左腕の負傷の分、すぐに失血死に至る。


 身体から力が抜けて、目の前が真っ暗になる。その後、紅蓮の焔が私の身体を包んだ。

 熱くない。むしろ優しい温かさを感じる。

 焔が霧散して目を開けると、千切った左腕どころか、装備の状態まで完全回復していて、まさしく完璧と言っていい状態だ。


「お、おい、い、いま確かに」


「あ、ああ、おそらく失血死したはず……」


「……いくら生き返るからと、自分で首を切るのか。普通? 薄々はわかっていたがどうやらとんでもないマスターに仕えたようだ」


 周りが思い思いの事を言っているけど、時間が無いしこの際放って、ブレイブへとフレンド通信をかける。


「ブレイブ聞こえる?」


『っ、なんだ? こっちはわりと忙しいんだが……』


「今すぐ、マギアの攻撃を止めて、それ吸収されてる」


『はぁ!? なんでメルがそれを知って、……アウラか?』


 さすが、ゲームの事になると頭の回転が早い。


「正解、いい、そいつ臨界寸前で時間がないから手短にいうけど、今から一回だけ私がその障壁を壊して道を開いてあげる」


 地形をクレーターだらけにしたせいで残り一本しか矢の代わりにしている槍がない。


『…………はぁ、つまり、その一回でこっちはアイツを倒せばいいんだな?』


「ええ、残り一本しか矢がないから、正真正銘のラストチャンスね」


『あいよ』


「アウラ、障壁を壊せば魔法はつうじるのね?」


「問題ない」


「ブレイブ、障壁がなければマギアも効くみたいだから、きっちりトドメを刺して」


『了解だ。こっちも今全員に伝えて準備が終わったところだ』


「そう、ターニャ先生の言葉を借りるなら、それは重畳かな」


 いや、先生ならよろしいと一言しか言わないかもしれない。そう思いながら、インベントリから暴虐弓を取り出して構える。


「いやいや、こっから廃都までどれだけ距離があると?」


 私がやろうとしてる事に気付いたトイメイカーが正気かと問うような事を言うが、私はいたって正気だ。


「無問題、どれだけの距離があろうと、そこまで矢がとどくなら、私は絶対に外さない」


 トイメイカーのように何らかのスキルで無効果されたり弾かれたりするかもしれないけど、外すことだけは“あり得ない”。

 だからこそブレイブも何も言わなかったのだから……


「どっちでもいいからバフ掛けお願い特に筋力」


「やれやれ、【ストレングスアップ】」


 薬とマギアの効果は重複しない為、サンゴ特製の鋭敏薬と増筋薬を飲み干して、試験管を放り出す。


「ありがとうティーダ」


「なに、礼には及ばない」


「さて、と──」


 インベントリから最後の槍を取り出して、弓弦へと番える。


「【猛集中】」


 集中力をあげると同時に闘気で視力をあげる。


「私の方も準備できた」


『了解』


「『3』」


 タイミングを合わせる為のカウントダウンが始まる。


「『2』」


 強化した視力で標的を見れば、爆発寸前だといわんばかりに輝き溢れている。


「『1』」


『0』


「OA【刺シ穿チ貫クモノ(ぶりゅーなく)】!!」


 放たれた槍は音速の壁を越えて、ソニックブームを発生させる。

 そのまま真っ直ぐに私の狙った標的へと飛翔し、着弾。

 オレンジ色の障壁を粉々に砕いて、中に隠れていた悪魔の下半身が千切れ飛ぶ。

 僅かに遅れて様々なマギアが煌めき、その悪魔を飲み込んだ。


 二つのスキルを解除するのと同時に、ポーンっと告知音が鳴る。


 ウインドウを開けば、予想通り、ブレイブ達の勝利を報せるものだった。


「あは、本当に当てちゃったよ……」


「たいした腕だな……」


「……私の腕だけじゃなくて、弓の性能にも助けられた」


 どんなに狙いがつけられても、そこに届かなきゃ意味がない。

 そう思うと、要望とは違ったけど、この弓を作ったぱるには感謝しなくちゃいけないかな……


「で、貴方達はどうするの?」


 Wクエストが終わった今、何をするのかと問う。


「いや、俺達はこの辺りで御暇させてもらおう。このド阿呆に再調き、もとい、拷問も違うな。とにかく教育しなおさなきゃいけないからな」


 お、おう? 今不穏なワードが幾つか聞こえた気がするけど……

 不穏なワードを口走ったティーダは好青年のような、凄い爽やかな笑顔を浮かべている。


「あは、ボク、あんなことやこんなことされちゃう」


 そっちはなんか悦んでない?


「黙れド阿呆!! 今日という今日はお前にモラルがなんたるかを叩き込んでやる」


 くねくねと気持ち悪い動きをするトイメイカーの頭を引っ叩くと、驚く程の早業で彼女を簀巻きにした。


「こいつが迷惑をかけた。後日改めて謝罪に窺わせて貰う」


「あは、またねぇー」


 ではなと言い残して、簀巻きにしたトイメイカーを担ぎ上げ去っていった。


 さて、私も廃都に戻るとしよう。

 きっと、リズ達が首を長くして待ってる。


 この時、私は知らなかった。廃都へ戻った私を待ち受ける受難を私は知らなかのだ。


この後エピローグ、掲示板、運営回をやって二章は終了の予定です。


モンスターハンターワールドが、もうそろそろ発売されますね。私もやる予定なので、しばらく更新が遅れるかもしれません。

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