第37話 Wクエスト・邂逅
今回はちょっと短めです。
「邪魔」
森の中を走る私達の道を塞ぐ敵をディアボロッソで薙ぎ倒す。
Wクエストに進展があったのはあの仁義なき兄妹喧嘩から三時間後の事だった。
ザックやアルフレットを始めとするトッププレイヤーから協力を仰がれた私はある条件をもとにこのクエストへと参加する事になりこうして森の中を走っている。
それにしても、こううじゃうじゃと雑魚ではあるものの、何度も何度も行く手を阻まれると軽く辟易としてくる。
「まったく、Gじゃないんだから!!」
そう愚痴って、新たに湧いた狼型のmobに特製長剣を投げる。
「でモ、目的地まデ半分残ってるゾ」
並走するスーがクエストの進捗具合を見て伝えてくる。それにまた気分が滅入りそうになった。
「まだ第一段階なんだよね?」
「そのハズ、疾ッ!!」
クエストのウインドウを見ると、“強大な魔力反応あり儀式がおこなわれている場所へ迎い儀式を阻止しろ“と、簡素な一文しか書かれていなかった。マップを見ると、廃都を中心にして東西南北に一ヵ所ずつ黄色い標があり、それが儀式がおこなわれている場所なんだろう。
ザック達はそう判断して、少数精鋭の部隊に別れて目標地点へと向かっているわけだ。
私達、私、リズ、スー、ブレイブ、テッタ、クラウドの六人で以前行った事のある渓流の近くにある儀式場へと向かっている。
「wave1って所だと思うよ」
後方のリズが言う。
「儀式は力付くで止めるとして、儀式を止めた後はどうなるんだろう?」
「この手のクエストの派生はなんパターンかあるんだ」
「どんなの?」
私の左隣で剣を振るうブレイブが言う。
「まず、四つの儀式を全部止められたらそのままクリア扱いになるパターン」
「それが一番理想的なパターンですが、ここの運営がそんなものを作るわけないので、まず除外ですね」
ブレイブの説明をクラウドが付け足す。
「次に止められた儀式の数でその後の難易度が変わるパターン。これは最もポピュラーなパターンだな」
失敗すればする程、後が辛くなるのね。
「そして最後に、最も最悪なのは、最初から儀式が止められないパターンだな。ここの運営の底意地の悪さから考えて、俺はこのパターンが最有力だと思う」
「つまり陽動ってわけ?」
「ああ、プレイヤー達が目的地に着いたら特別なイベントが起きて、そのまま次の段階に進む感じじゃないかな」
なるほど、大人数じゃ行動しづらいって理由もあるんだろうけど、何が起きても対応出来るよう廃都に大勢のプレイヤーを残してるのか。
「まぁ、レイドイベントだろうし、何が起きてもいいようにするのは定石だよね」
「ああ、取り敢えず急ぐぞ」
それからほどなくして目的地に辿り着いた。
「これは……」
そこには、地面に描かれた魔方陣が光を放っている。その真ん中には生贄だろうか? mobの死骸らしきものが置いてあった。
「取り敢えず魔方陣を壊せばいいのかな?」
「だな。魔方陣の中に入るのは危険そうだし、外からマギアで壊すか」
ブレイブがマギアを発動しようとした瞬間にそれは起きた。
光を放っていた魔方陣がより一層輝き、光の柱をあげる。
遠くを見ると他にも三ヶ所光の柱が見え、次に中心にある廃都が大きな光の柱をあげた。
光の柱はすぐに消え、ポーンっといつもの告知音が鳴る。
ウインドウを開くと、クエスト内容の変更の報せだった。
「廃都に復活した魔族を討伐せよ、ね」
「あぁー、やっぱりかよ。皆急いで戻るぞ」
ブレイブの掛け声に私達は頷きあって走り出す。
廃都へ戻る途中の森の中で、茂みの向こうからする風切り音に気付き、ディアボロッソで矢を叩き落とす。
続け様に三矢放たれたのを同様に叩き落とす。どうやら狙いは私らしい。
「私が狙いみたいだから、先に行って!!」
「メル姉!?」
「メルさん!」
私達も残ると言いそうなテッタやスーを征するよう、なおも続く射撃を捌きながら言う。
「元々、不足の事態が起きたら私が露払いをするって話でしょ」
「で、でも」
「アルデバラン」
アルデバランを喚び出し、なおも食い下がろうとする二人を抱えさせて廃都に向かわせる。
「あ!」
「メル姉、スーも」
悲痛そうな顔をする二人を抱えて走る騎士の後ろ姿を追うようにリズとクラウドも駆け出す。
「頼みます」
「また後でね」
軽く片手を上げて応える。
「メル、悪い……」
まったく、この男は頓珍漢な事を。
このクエストを手伝う際、露払い等は引き受けるけど、クエストの本命にはあまり手を貸さないでもいいという条件で私はこのクエストに参加している。
やっぱり、ゲームなんだから楽しんでいる人、楽しみにしている人達の手でクリアされるべきであって、私みたく乗り気じゃない人間がクリアするべきじゃないと思ってしまったからだ。
だから、謝るのは我が儘を言っている私であって、ブレイブじゃない。
「はぁ、こういう時は違う言葉を掛けるべきでしょ?」
ブレイブは暫くきょとんとした顔をしていたけど、私が掛けて欲しい言葉を理解したのか、笑って言ってくれた。
「任せた」
そう、それでいい。それだけで十分だ。
だって、だって私は2日とはいえ、お姉さんだから……
ブレイブの楽しみにしている事を手伝うのは当然なんだから。
「うん。任された」
さて、ブレイブも行った事だし、さっきから執拗に狙ってくる相手の顔でも拝みに行くとしよう。
矢の飛んできた方へと駆け出す。
矢を躱しながら走り、しばらくすると、森の中なのに少し開けた場所に一人の灰色のローブ姿が見えた。
弓を構えているところからして、あいつが私の事を狙っていた奴で間違いなさそうだ。
私が開けた場所まで出るとそいつは大仰におどけてみせた。
「これはこれは、お初に御目にかかる。ご機嫌麗しゅう暴虐姫、私はっと!?」
芝居掛かった相手の口上を聞くつもりもない私は、即座に切りかかったのだが、すんでのところで躱されてしまった。
「まったく、危ないなぁ」
目の前の奴はプンプンっとした様子で何かを垂れているが、何故だろう? なんでこんなにも目の前の存在に嫌悪感を感じるのだろうか?
今日初めて会った。それもゲーム内の敵に対して、こんなにも気持ちが揺れるのは何故?
「それは、似た者同士だからじゃないかな?」
まるで私の心を覗いたかのように答える相手を睨み付ける。
「誰が!!」
「私もそうだから、わかるよ。初めて君を見た時にビビっときた。私と同じだって、そしてひどく惹かれた。この手で壊したいと思った」
ニターっとフードの中の口が三日月を描く。
なんで、こんなにも不愉快なのに……
なんで、私は攻撃の手さえ止めて、話を聞き入ってしまっている。
「だからさぁ、殺し愛おう暴虐姫!!」
叫び、今度は相手が私に突っ込んできた。
久しぶり書くと、自分がどうやって書いてたのか思い出せない。
第35話コレじゃないの弓の部分を少し改稿してます。




