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エンドレスフロンティア  作者: 紫音
第一章 始まりの街のメロディア
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第3話 初めての狩り

 エンドに見送られた次の瞬間に私は街中に立っていた。

 煉瓦作りの建物がずらっと並び、道は日本よりも広い。

 それでも辺りは人でごった返していて、この人達も私と同じプレイヤーなんだと思うと、意味もなく凄いと思ってしまう。


 っと、いけない勇気と待ち合わせしてたんだった。

 ウジウジして時間を潰した分勇気を待たせてる。早く合流しないと、リアルとこの中は時間の流れが違うんだから、1時間30分はまたしてる筈急がなきゃ。


 他人との距離が近い為、走る事はせずに歩いて人と人との間を抜けていく。待ち合わせ場所はログインした場所から歩いてすぐの噴水で迷わずに見つける事が出来た。

 うん。本当にリアルで水を見てるのと変わらないぐらいリアルなんだ。

 昔、勇気が水のグラフィックは難しいって言っていたのを覚えてたから本当に水にしか見えないのが凄いと、って私さっきから凄いしか思ってない気が……頭の弱い娘に思えるから少し気を付けよう。


 お、勇気発見、噴水の縁に腰を下ろしてる。幼馴染兼クラスメート兼居候の身だからね。髪色とか変わっていても一目で分かったよ。

 あっちも私に気付いたらしく、軽く手を振ってる。


 しっかし、金髪ねぇ、驚く程違和感しかないや、昔に勇気が金髪に染めた事あったけど、1日で叔母さんに丸刈りにされたからね。

 それ以来、髪を染める事がなかったから、私の中で勇気のイメージは黒髪黒目である。

 まぁ、多分あっちも私に同じ事を感じてるんだろうなぁ。


「ごめんね。待ったよね」


「ま、予想はしてたし、問題ない。最悪来ない事も想定してたしな」


 そう言われると返す言葉がないんだけどさ。


「大丈夫か?」


 こういう時、幼馴染って不便だと思う。私が部屋でダウナーに入りかけた事を正確に理解して、尚且つ気遣ってこっちの方で待ってるとか、勇気の癖に私の方が2日とはいえお姉さんなんだぞ。


「大丈夫。無問題よ無問題。大丈夫じゃなきゃここにいないでしょ?」


「それもそうだな。あ、こっちではブレイブって呼んでくれ」


 ブレイブってまんまなのね。


「分かった。私はメロディア」


「はは、随分と懐かしい名前を引っ張り出してきたな」


「覚えてたんだ」


「忘れるわけねぇだろ? お前と初めてゲームやった時の名前だぞ?」


 ああ、もうさっきから本当に、勇気の癖に、頬が動きそうになるの堪えるの大変じゃない‼


「つーか、減らしたんだな」


「だって邪魔なんだもん。本当はもっと減らしたかったんだけどね。これが限界値だって、それともおっきくした方が良かった?」


 セクハラをかましてきた事と先までの仕返しを込めて誂う。さぁ慌てふためくがいい。


「ん? 別に大きくても小さくても、それがメルなら関係ないな。どっちでも問題ない」


 な、まさかのクロスカウンター貰った……だと?

 く、悔しいけど、これ以上は私の方が堪えられそうにないので無理矢理話を変えてしまおう。


「真顔で何言ってんのよ。それでこの後はどうするの?」


「そうだな。フレンド登録してから軽く狩りにでも行くか? あ、狩りって戦って経験値稼ぎに行く事な」


 あ、そうなんだ。てっきり狩猟民族的な事をするのかと思った。また誂われるから言わないけど。


「ん、了解」


「ほい、フレンド登録っと」


 私の前にウインドウが出てくる。


───────────────


ブレイブからフレンド登録の申請が来ています。許可しますか?

許可/不許可


───────────────


 えっと許可っと、うんリストにブレイブの名前が登録された。


「よし、じゃあ行くか」


「うん」


 ブレイブと並んで噴水から街の外へと向かい歩き出す。


「色んな奴がお前の事を見てるぞ?」


「ずっと無視してたんだから言わないでくれると嬉しかったんだけど?」


 そんなもの、エンドと別れた瞬間から感じてるんだから言わなくていいのよ。

 大半が私の顔か胸か背丈のどれかしか見てないんだし。


「それを言うならブレイブだて見られてるじゃない。主に嫉妬の感じる視線だけど」


「そいつぁ言わない約束だろう」


「そんな約束知らない」


「おっと、そう言えばパーティー登録もしないとな。ほれ」


 露骨に話を変えてきたし、まぁいいか、ここは素直に流されてあげましょうかね。


「OKパーティーに入った」


「なら次は互いのステでも確認しとくか、公開モードにしてくれ」


「了解」


 操作が終わると同じくらいにもう1つウインドウが出てくる。内容はブレイブのステータスだった。




CN ブレイブ

MP 80/80

ST 90/90

筋力 9

体力 9

器用 9

精神 8


残り経験値 0

残りSP 4

所持金 1000ペロン


装備スキル

【剣Lv:1】【盾Lv:1】【集中Lv:1】【服Lv:1】【立体機動Lv:1】【採取Lv:1】【魔術の心得Lv:1】【火魔法Lv:1】【武器の心得Lv:1】【腕力強化Lv:1】


控えスキル

無し




 何て言うかバランスいいなぁ。

 私の精神1とは違うよね。


「メル、お前何て言う脳筋ビルドにしてんだよ。オマケ【行動制限解除】って」


「む、脳筋って馬鹿にして、どうせ私は精神が1だったわよ。そんな幼稚ちゃんだから、ブレイブのご飯何て知らないんだから」


「お、おい!? 飯を人質、じゃないな、飯質は卑怯だろ‼」


「知らないもん。私脳筋だから、うっかり一人分作り忘れちゃうんだから」


「それ、うっかりじゃないから、完全故意だからな?」


「ブレイブなんて、食パンの耳でも食べてればいいのよ」


「悪かった。俺が悪かったから許してくれ」


「知らないもーん」


 普段通りの他愛ないやり取りだ。私も本気じゃないし、それが分かっているからブレイブも笑っている。


「でも、【行動制限解除】は使えると思うよ?」


「ま、お前くらいのチートスペックなら余裕だろうけどさ」


 チートスペックってブレイブだって同じ事くらい出来るでしょうが。

 それを私だけ変みたいに言うなんて、……やっぱりご飯作るのやめようかな……


「使いきれないとただのゴミスキルだからなぁ、ま、俺も後で取るつもりだから人の事は言えないか」


「そうだそうだ‼」


「幼稚園児かよ!? あ、後集中のスキルは取っておいて損はないぞ」


 誰の頭が幼稚園児だ‼ まったく失礼しちゃうんだからぁ。

 それと集中、集中っと、あった‼ SP2かぁ、残り2になるけど、スキルレベル上げれば問題ないし、ブレイブが薦めるんだからに有用なんだろう。

 集中のスキルを取り終わるとほぼ同時に街の東門に辿り着いた。街を囲む防壁は遠目からでも見えていたけれど、真下で見ると殊更大きく見える。

 数人の門番が出ていく人達に声を掛け手を振っているのが目についた。


「驚いたか? このゲームはNPCのAIがとても高度で、名前とか表示されてないから普通にプレイヤーと勘違いしそうになるんだよ」


 うん。ブレイブの言う通り、とても人にしか見えない。

 態度のいい人と悪い人で門番の人の対応や表情等、細かく上げたら切りがないくらい違う。

 その姿はまるで━━


「まるで、生きてるみたいだよな」


「うん。そうだね」


 門をくぐると、門番の人が片手を上げて見送ってくれた。


「頑張ってなぁー」


「ありがとー‼」


 手を振り返してフィールドへと出ていく。

 既に私は彼等をNPCとして見るのをやめていた。



───────────────

 さて、門番さんに見送られてフィールドへ出たはいいけど、街の外も人が多かった。

 どの人も私やブレイブと同じ質素な服を着てるので、間違いなくプレイヤーの人達で、皆狩りに来て敵を探しているんだろう。

 このままだと取り合いになるんじゃないかな? ブレイブも同じ結論に至ったのか少し奥の方に行く事を提案してきたので、首を縦に振る。


「ここまで来れば大丈夫か」


「うん。大丈夫だと思う。少なくとも他の人の気配は感じないよ」


 街を出たばかりは街道と草原であったのだが、30分程歩いた私達は途中にあった森の中へと入って探索する事にした。


 念の為、周囲の警戒はしてたけど、特に人の気配は感じない。


「はぁ、【気配察知】のスキルを持ってないのに非常識な」


「その代わり【行動制限解除】があるから、アシストとかなくてもある程度感じられるし」


 リアルであんな容姿をしていれば嫌でも身に付くスキルの一つである。

 本当に多いんだよ? 変態って。


「しっかし、やっぱり制限されてるな、メル程じゃないけど俺だって少しは分かる筈なのに、今じゃさっぱりだ」


「早急に【行動制限解除】取れば? もしくは気配察知、索敵系のスキルが無いのは致命的でしょ?」


「だな。【行動制限解除】を取るなら気配はいらないし、早めに取るかぁ」


 失敗したかなぁっとぼやき頬ではなく、首を掻くブレイブに少し懐かしくなってしまう。

 そんな私に気付いたんだろう。ブレイブは怪訝な顔をしていた。


「どうしたんだ?」


「ううん、少し、本当に少し懐かしくなっただけ、昔、ゲームに失敗すると首を掻く癖があったから、まだなおってなかったんだなって」


「ん、そうだったか?」


「うん。斧を持ったアイテムや魔法を使わしてくれないキャラと戦った時、ヒロインの設定弄ってなくて、開始に魔法を使って闇の最強魔法食らってぼやいてた」


「ああ、あったあった。最近はメルとゲームする事がなくなってたけど、あの時は一緒にああでもないこうでもないってやってたっけ」


 小学校低学年の頃の話でよく学校終わりに勇気の家に行って遊んでいた。

 私の大切な思い出。


「まぁ、またメルとゲームしてんだし、そろそろ狩りでも始めるか」


「うん。何かは解らないけど、あっちに何かいるね。数は二、いや三だね」


「おっし、じゃあ行くか」


 ブレイブがウインドウを操作して普通の西洋剣と円盾を取り出す。

 私もインベントリから斧を取り出した。


 出てきた斧は長柄斧で、肉厚な刃に刃毀れと錆が目立つ、一目で粗悪品だと分かる。

 アイテム欄の項目をタッチして情報を出す。




アイテム名 初心者の長柄斧

等級 ☆1

品質 粗悪

スロット 0

残りスロット 0


斬撃補正 1

打撃補正 1

刺突補正 1

耐久値 ∞


発動スキル

無し


評価

 異界から来た異邦人に渡される初期武器、その品質は最低の一言、ひのき○ぼうを渡される方がマシかもしれないが、ひ○きのぼうよりは役に立つ……筈。

 早急に武器を変える事をお薦めする一品。




 評価が酷い。誰が評価したんだろう。

 まぁ刃毀れしてようと錆があろうと、少し軽いが最悪鈍器になればいいし無問題。


 気配のする方へ案内すると、藪の向こうに狼だろうか? 犬型の敵が3匹いた。

 風下にいた事もあってまだ気付かれてない。


「気付かれてないなら奇襲するぞ。行けるか?」


「私が一匹を速攻で倒して、もう一匹片付ければいい?」


「ああ、あいつらに気付かれたら牽制代わりに魔法を使うから、その間に頼む」


 ステータスの恩恵がどこまであるか解らないけど、この斧を持った感じ問題なくやれる筈。

 敵まで藪を出てから二〇メートルあるかないか、リアルの私なら3秒かからない距離、長柄斧にもつを持ってはいるけど上手くやれば6秒以内に一匹目を片せるだろう。

 私が頷いたのを見て、ブレイブが指で三カウントを始める。


 ━━3


 ━━2


 ━━1


 ━━0‼ 力強く大地を蹴り走り出す。だが、一歩目で私は自分の失敗に気付いた。

 私の想定以上に身体能力が上がっていたのだ。


「ちっ」


 力強すぎて前のめりになりそうなのを無理矢理次の足を出して、すぐに動きを修正する。

 自分の速度から修正した斧の間合いに入るまで後1秒、0、ここ!!

 大地を踏み締め腰を捻り全力を籠めて、両手で握った長柄斧を横一文字に振るう。


「どっ、か~ん‼」


 風を切り裂き、唸りをあげる長柄斧が狼の胴体に吸い込まれるように当たると、狼の躯が爆ぜる。

 振り抜いた長柄斧を止める事なく左足を軸にして回転、私へと襲い掛かろうとした一匹へ長柄斧を斜め上から振り下ろす。振り下ろした刃は狼の頭を紙切れを破るように跳ばし地面にめり込だ。

 めり込んだ長柄斧を真っ直ぐにして柄を軸に一回転、二匹目の後ろに続いていた三匹目に回転式ドロップキックを叩き込む。骨の折れる音がして三匹目が吹き飛んだ。ここまでで僅か6秒の出来事である。


「ふぅ」


 倒した狼の死体が消えていくのを見ながら、一息つくと頭を軽く叩かれた。


「ふぅ、じゃねえよ。俺の出番がねぇじゃねえか」


「あ、ごめん。つい身体が動いちゃった」


「ついって、……まぁいいや、しっかし、とんでもない速さだな」


 確かにブレイブとの筋力のステータス差は3、そんなに違いがあるとは思えないんだけど……


「ブレイブはリアルよりも少し早い程度だったよね?」


「ああ、俺とお前の構成で考えられるのは、ステータスが二桁になった際にボーナスが付くか。【脚力強化】のスキルの補正が強いかだな」


 試しにスキルを外して走ってみと言われ、【脚力強化】を外してから走ってみる。


「決まりだな」


 脚力強化を外して走った私はリアルよりもほんの少し早い程度だった。

 他にも【腕力強化】を外した途端に肩に担いでいた斧が重く感じるようになる。

 その事から身体強化系のスキルは強化値がとても高いと言う事に結論になる。


「メルが最初に転けそうになったのは速度の強化値に対して、器用のステが低かったせいだな」


 それでも、あんな動きをする私は化け物だなとかディスられたので、本当にご飯を抜きにしよう。そうしよう。

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