表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドレスフロンティア  作者: 紫音
二章 過去と悪意あるイベント
38/63

第33話 決闘

仕事が休みですが、雨が降っていた為、一日中家の中で執筆してました。

「これは、いったい何の騒ぎだ?」


 リズ達に響の過去を話終えた俺は気分を替えに外へと出たんだが、やけに人が多い。


 ふと、騒ぎの中心を見ると、おおぅ、幼馴染兼クラスメート兼意中の相手であるメルがいた。

 そのメルの前に立つのは、やべぇ知りあいだ。つか、スリーピン何してんだよ。ツーワンとワンソウも止めろ。

 近付いていく事に二人のやり取りが聞こえてくる。


「やだよ。私にメリットがないし」


「良いじゃネエカ。ケチくせぇコト言うなヨ」


「第一、弱い者イジメみたいで気分が良くないから」


 あ、スリーピンの額に青筋が浮かんだ。


「弱い者イジメ、ネ。ツカ、スリーピンとあんまり替わらナイ背格好デ良く言うゼ。アア、そうカ、デカイのハその脂肪のノ塊だけじゃなくて、自信もデカイんだナ」


 ビギィ、そんな音を俺は聞こえた気がする。いや、実際には聞こえていないんだが……

 それとスリーピン、そこまでにしておけ、響に胸の話題は自殺行為だから。


 壮絶な舌戦を繰り広げる二人を止められるのは……

 はぁ、俺くらいか。


 後、いつの間にかギャラリーとかしているリズ達にはもうつっこまないでおこう。拠点から出てきてなかった筈なんだが……ああ、気にしたら敗けだな。


「メル、スリーピンあまり、街中で騒ぐなよ」


 最大限の勇気と笑顔で二人へと諫めの言葉を掛ける。


「烈剣ハ黙ってロ!!」

「勇気は黙ってて!!」


「マム、イエス、マム!!」


 笑えよ。慌てて逃げ出したさ。笑えよ笑いたければな。


 でも、大半のヤツはあそこで逃げ出すよりも失神するか、失禁するぞ、それほど恐かったからな? しっかし響の奴、年々母さんに似てきてるんだけど……


 あのまま、あそこでピーチクパーチク騒いでいたら、間違いなく二人に殺されていたうえにイベント中及びリアルに戻っても飯抜きになる可能性が高かったからな。恥も外聞もなく逃げ出したさ。

 だけど━━


「あのさ、流石に指を指して笑うのはどうかと思うんだが?」


「ぷす、いや、だって、ふふ、凄く情けない顔で逃げてくるもんだから、お姉さんツボにはいっちゃって、はは」


 恨めしく睨み付けると、リズはごめんごめんと片手を前に出す。

 その間にメル達の方はさらにヒートアップしているようだった。


「弱い犬程よく吠えるって言うけど、犬は可愛いげがある分ましかもね?」


「ハン、言ってロ、どうせリアルだトそれ以下なんだロ? ゲーム内で乳盛っテ、自信も盛っテるヤツよりは、スリーピンの方ガ可愛いげガあるゼ」


 おっふ、あのバカ、自ら特大の地雷原へとダイナミックダイブしやがった。

 俺の耳には、雑巾絞りをしたプチプチにも似た勢いでメルの理性がブチブチっと切れていく音が聞こえる。


「お、おい、め、メル、と、年下の言う事で本気になるのも大人気ないだろ?」


 思わず口を挟んでしまうと、メルはぐるりと俺に向きなおって、それはもう素晴らしい笑顔を見せてくれた。

 何人か男共が固唾を呑む音が聞こえ、隣の変態リズが、いや、変態達(テッタお前もか)が頬を赤くしている。


「何言ってるの勇気? 私怒ってないよ? うん。怒ってない。ただ、失礼な事を言っているガキもとい、子には、お仕おもとい、調きょ、違った。教育的指導をしなきゃね?」


 やべぇ、完全にブチキレてマスネ。母さんが目の前にいる錯覚すら覚える。

 そして、目が笑ってねぇから、その目は、今からこのガキぶち殺すから、邪魔すんじゃねぇぞテメェと語っている。


 すまんスリーピン安らかに眠ってくれ。俺にはもう止められない。心の中で合掌して冥福を祈っておく。


「あん? 事実を言われテ怒るッタァ、日本ジャ大人気ないって言わないノカ? スリーピン日本に帰ってキテ初めテ知ったゾ」


「あはは、だから怒ってないって、ほら畜生以下に怒ってもしょうがないでしょ? むしろ滑稽だし」


 先にその操作をしたのはどちらだろうか? PVPモードの決闘が選択されたんだろう。俺達とメル達の間に見えない壁が張られる。


 決闘とは関係無いプレイヤー達が、魔法等で巻き添えを食らわない為の処置である。


 二人を囲むように張られた不可視の壁は二人が暴れても充分の広さがある。


「年下相手に本気を出すのも大人気ないから、初手は譲ってあげる。精々私を殺せる攻撃を繰り出すことだね」


 メルの奴煽ってるな。


「後悔してモ、知らネェからナ!!」


 先に動いたのはスリーピンだ。地面を蹴って驚く速度でメルへと近付き、中国拳法で言うところの崩拳を繰り出す。

 大半の相手ならそれで終わっていただろうに、運の悪い事にスリーピンのヤツが相手にしてるのはメル、響だ。


 スリーピンの崩拳はパシッと乾いた音をあげて、メルの左手の中におさまった。


「ナ!?」


「どうしたの? 私殺す気でって言ったと思ったけど? それともこれが限界?」


 驚いたのは一瞬、次には飛び退いてメルから距離をとるスリーピン。メルはそれを追撃しようとはせず、ただ、つまらなさそうに眺めている。


「舐めやがっテ!!」


 インベントリから矛を取り出すと再度突撃していく、鋭い突きがメルを襲う。けどその矛先はメルに届く事はなかった。

 矛先はメル脇に逸れ、それを引き戻す際に頸動脈を切り裂こうとするが、それも捌かれる。


「こノ!!」


 むきになったスリーピンは何度も突きを繰り出すがその全てを捌かれ、弾かれる。


 にしても響の奴、ガチで心を折りにいく気だ。

 スリーピンは強い。エンドレスフロンティアの中でもトップクラスで、それでも相手が悪すぎる。

 メルを一対一で止められるとすれば俺の母親か、その昔仲間くらいのものだと思う。


 つか、今の響はその人達の英才教育の賜物だし。


 傍目にはスリーピンがわざとはずしてるか、突きがメルから逸れていっているとしか見えていないんだろうなぁ、実際はスリーピンの突きをメルが横から拳を当てて逸らしているだけなんだが。

 お、突きがメルの心臓を狙って放たれた。


「ハハ、ウソだロ?」


「ん? お遊戯会はもうおしまい?」


 今日一番の突きは矛先を二本の指に挟まれて止まっていた。

 その指を放してスリーピンを解放するメル。その隙を逃さないようにスリーピンが足元を払うがメルは飛び退き、空中で一回転すると綺麗に着地する。


「これなラァ!!」


 メルが着地するのを見る事なく、スリーピンはメルとは反対方向へと駆け出すと、街中の家を足場にして、高く空へと飛ぶ。


「どうダァ!!」


 器用に宙で態勢を調えて手にした矛を投擲する。

 ゲーム内で強化された筋力で放たれた矛は電光の如く飛び、メルへと迫る。だがそれは悪手だ。

 自分へと迫る矛を半身逸らしただけで躱わし、その矛を掴むとクルクルと回し遊んだ後、石突の方をまだ空中にいるスリーピンへと向けて━━


「槍投げは一人でやっても効果は薄いし、警戒してる相手に投げるなら、せめて赤い魔槍みたく因果律を逆転させてからしなよ」


 投げ返した。


「っ!!」


 投げ返した矛はいまだに宙にいるスリーピンの右腿に当たる。あれは痛い。

 それによって態勢を崩したスリーンは着地できずに地面へと激突した。


 痛いとか周りから聞こえてくる。スリーピンはすぐに起き上がって今度は青竜刀を取り出して斬りかかる。

 だけど、脚が痛むんだろう。先程と比べて明らかに動きが鈍い。


 メルはスッと右手をあげ、襲い掛かる青竜刀へと振り下ろす。手刀VS青竜刀、普通に考えれば勝負にもならない。

 だが、青竜刀の腹を捉えたメルの手刀は甲高い音を発てて、青竜刀の方が砕けた。


「刃金切り」


「手刀デ金属斬るトカ、冗談キツいゼ」


「で、おしまい? それなら私から行くけど」


 しかし、ここにいる奴等の何人が気付いているんだろうか? この二人の決闘がいまだにアーツやアクティブスキルを使用してない事に……

 ほぼ己のもつ技術スペックだけで戦ってる。であるがゆえに、スリーピンは今頃理解してる筈だ。自分とメルとの間にある。圧倒的な技術の差を。


 大人気ねぇ、母さん仕込みの歩法をゲーム内のステータスでやるとか、端から見てる俺達は速い程度で済むけど、スリーピンには消えたように見えただろうに。

 そのまま背後にまわって最初の意趣返しか崩拳を放ち、反応出来なかったスリーピンを突き飛ばす。

 空缶よろしく地面を転がったスリーピンへと近付くと、立ち上がろうとしてがら空きの腹部を蹴りあげた。

 宙へと舞い上がり、落ちてきたところに回し蹴りを入れまた空缶のように転がっていく。


 よ、容赦ねぇ、周りを見ると、他の奴等も青ざめた顔で見ている。

 メルの奴死なない程度に、いや違うな。死なないように細心の注意を払って手加減してやがる。

 さながら楽しい楽しい玩具を壊さないかのようだ。


「ほら、立ちなよ? 戦場いくさばで痛がっていてもわたしは待ってくれないよ?」


 倒れてるスリーピンの腕を掴んで持ち上げると溝尾に拳を叩き込む。


「げは、げは、ごほ」


 メルが拳を叩き込む度に口から血のようなものを吐く。

 再度拳を叩き込もうとして、メルがその拳を止めた。

 スリーピンが蹴りを放ったからだ。


「へ、やっト当たっタ」


 その言葉を示すようにメルの頬から少し血のようなものが流れていた。


「……ふふ」


 あ、スイッチ入った。明らかにさっきまでとは纏ってる雰囲気が違う。擦っただけとはいえ、攻撃を当てられた事で、スリーピンを弱者じゃなくて、倒すべき相手として認めたみたいだ。


「絶招之捌、鬼哭行脚」


 満身創痍のスリーピンを相手に奥義を使うとか、マジで大人気ねぇ。


 鬼哭行脚、あらゆる武術をごちゃ混ぜにし我が母親が創ったマジカルケンポー十の奥義が一つ、相手の死角を取り続けて消えたように見せる歩法奥義だ。


「絶招之伍、叔母さんの右ストレート!!」


 正式名、星衝点貫突きせいしょうてんかんづき母さんが言うには突きと言う概念を突き詰めた只の正拳突きらしい。俺は使えないからうまくは言えないけど、響の訓練をみた時に抜手じゃなくて、グーの状態でサンドバッグに穴を開けていた。

 そんなものが人に当たったらどうなるか? 答えが目の前の光景になる。


 拳は的確にスリーピンの顔を捉え、当たると同時にスリーピンの首が一回転、次に足が地を離れ宙へと舞う。

 宙へと舞い上がったスリーピン、だが威力はおさまらず首が二回転、三回転、四回転半で螺子切れ地面に落ちる。身体の方は不可視の壁に激突し挽き肉へと姿を変えた。


 目の前で起きた凄惨な光景に息を呑む者、口を抑えて駆け出す者、ファンファーレを送る者、ブーイングをする者等多岐にわたる。

 スリーピンの死体が光になって消えると、不可視の壁が解除される。俺は動かないメルへと近づいて頭を撫でてやる。


「何よ?」


「別に、どこかこうして欲しそうだったからな」


「…………あの娘、私より強いね」


「そうだな」


 あそこまで一方的にやられたのに、スリーピンは笑顔を浮かべていた。折れない心、響はそれを言っているんだろう。


「ちょっと胸貸しなさい」


「お、おい」


 俺の返事を聞く前に俺の胸へと顔を埋めるメル。


「こういう時、黙って胸を貸すのが良い男の条件って、叔母さんが言ってたよ」


 いや、周りの視線を考えてくれよ。明らかに敵意が俺に集中してるんだけど?

 ああ、笑顔のリズが大剣を肩に担いで首をかっきる仕草をする。


 マジですか……


響は作中最強の高校生だと思います。


どんなに百合女が増えても、響のルートは勇気に攻略されルートです。

逆に勇気が響を攻略できないと、母親からの粛正ルートに突入、短い一生をまっとうするでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ