第29話 調査
だいぶ遅くなってすみません。
ぶち抜いた行き止まりの先は、荒野から一転して、どこか近未来的な感じの通路だった。
遺跡を調査という事で、私達は蛍光が照らす通路を真っ直ぐに進んでいく。
時折、風化した衣服と白骨がある事から、この遺跡は人が住んでいて、あの壁によって閉じ込められたのかもしれない。
「なんて言うかさ、今のところ、罠も無ければ、何もない通路が続いているだけだね?」
恐らく私達全員が思っている事をリズが口にした。
「結構な数の白骨死体がありますし、居住地か、シェルターの可能性がありますわね」
「うむ、それならば罠が無いのも頷けるのである」
確かに、自分達が生活する場所、もしくは避難する場所にわざわざ罠を仕掛けるなんて、アニメや漫画の中だけだろう。
そのまましばらく進むと、開けた空間に出る。
ショッピングモールのような円状の吹き抜け式の造りで、どうやら地下へと続いているようだ。下は見えない程深い。
「うわー、深いね、どうしよっか?」
「六人で調査するには少々広過ぎるかもしれませんね」
テッタの言う通り、六人で調査するには少しばかり広い、だけど、それは隈無く調査した場合で、普通に見て回る分にはなんとかなるだろう。
「取り敢えず、目を惹くような物があれば調査しつつ、下を目指しましょう。この手のモノは最奥に重要な物があると、相場が決まっておりますわ」
特に反対意見が出る事もなく、私達は道なりに下へと下りつつ、途中にある部屋等を調べていく事にした。
所々脆くなっている場所があるけど、物売り場らしき場所や、マンションのような居住スペースばかりで、特段これと言って怪しい所はなかった。
それも地下十五階くらいから変わってきた。今までのが一般人達のスペースだとしたら、地下十五階からは研究施設とでも言うべきだ。
SF映画等で人が入っているような大きな水槽が規則正しく並んでいたり、大きな液晶モニターに、それを操作するためのコンソールがあったりと、一般人ではまず使わないであろう設備が沢山あった。
水槽の中には裸身の女性や男性、猫、犬、はては蜥蜴、蛇等の爬虫類等が緑状の液体の中でたゆたっている。
だけど、そのどれもが、異形と言うべきで、この施設が何をしていたか理解するのに足りた。
猫に鳥のような羽、爬虫類の尻尾等ないし、犬の鼻先にサイのような角はない。蜥蜴に木の実のような物がついている筈もなく、蛇の頭がキング〇ドラのように三股になっている訳もない。
ましてや、人の女性に天使を思わせる翼や、男性に悪魔のような尻尾に羽等、断じてない。
キメラ研究、そう言うしか思い浮かばないような代物だ。正直胸糞悪い光景に不満を覚える。
他の皆も同様のようで、各々顔を歪めていたり、テッタや、シェスカのギルメンの女性、アルカは酷いと目を背けて俯いている。
何ヵ所かそんな施設を見て歩き、しばらくすると、未だに稼働してるコンソールパネルを見付けた。
シェスカがそれを覗き込むと、首を振って私を見る。
「どうやら、古代語で書かれているようですわ。メルさんお願いできますか?」
まぁ、古代の遺跡なら現代語ではなく、古代語で記されているのも頷ける。装備スキルを入れ換えてコンソールパネルを操作する。
おおよそ予想通りの情報が記されていた。
ここにくるまでに見た水槽の中身は実験結果によってできたキメラであり、あの施設はそれを造る為にあった。私とサンゴが見付けた調味竜も此所で造り出されたキメラのようだ。
「どうやら、イベント専用mobを造ったのは古代文明という設定なのであるな」
「そうみたいだね」
ゴードンの呟きに頷きつつ、パネルを操作すると、レポートらしき物を発見した。それを呼び出して読んでいく。
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DM紀1507年〇月◆◆日
どうやら、私の後輩が私の事を小説のネタにし始めたようだ。自分が未婚だからといって、新婚の私を妬むのは止めて欲しいものだ。
なんでもMTRとか、いけない午後とか、訳の解らない単語をぶつくさ呟いていた。
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何この出だしは……
読み上げていた為、他の皆もどう言った反応をしていいのか戸惑っているようだ。
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DM紀1507年〇月◆◆日
戦争は激しくなっていくばかり、永久の焔があるとは言え、此処も安全とは言えなさそうね。
DM紀1508年〇月◆◆日
私達研究者にある命令が下った。私はふざけるなと声を大にして言ってやりたかった、だけど、生まれたばかりのイワンの事を話に出されて、頷く事しかできなかった。
弱い母親でごめんなさいイワン。
DM紀1508年〇月◆◆日
悪魔の研究と言っても過言ではない研究は思いの他順調に進んでいた。
今は猫等に鳥や蛇等を掛け合わせるぐらいしかおこなえていないけども、でも、何時かは人体、同じ人にそれをやらなきゃいけないのよね。気が滅入るわ。
DM紀1509年〇月◆◆日
とうとう、人体実験の日が来てしまった。正直逃げ出したい。いつもはへらへらと笑っている後輩も、今日ばかりは辛そうに顔をしかめている。
ああ、秩序の女神エンド様、慈愛の女神レス様、闘争の女神フロン様、創造の女神ティア様、どうか、どうか、罪深き私達を御許し下さい。
DM紀1509年〇月◆◆日
人体実験は成功と言えば成功だった、だけどもキメラとなった人は著しく知能が低下する傾向にあるようだ。これをどうにかしなければ、魔族との戦争に出す訳にはいかない。
DM紀1509年〇月◆◆日
もう嫌よ。嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌、こんな種族滅んでしまった方が、いっそ世界の為だわ。
国は知能が低下するなら、知能が発達していない新生児を使えばいい等と愚かな事決めた。
人間って本当に救いようのない種族だわ。
イワン。ごめんなさいイワン。お母さんもう駄目みたい。あの人も戦争で死んでしまった。もう頑張らなくてもいいわよね?
あなたがキメラの材料にされるくらいなら私は…………
DM紀1510年〇月◆◆日
やってやったわ。特殊合金で造った壁で入口を塞いでやった。後は毒を流せばこの施設は終わりよ。
ただ、一つだけ心残りがある。永久の焔の事だ。
もし、もしも後世の人間でも、新種族でもなんでも良い、もしもこの日記を読んでいるのなら、この施設の最奥に捕まっている永久の焔を開放してあげて欲しい。
それは私にはできない事だから。
ああ、オーク、イワン、私頑張ったわ。そっちにいったら抱き締めてくれるかしら? それとも馬鹿者って謗られるのかな? 私も今から……
ナタリー・E・シュトラスブルク
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日記はそこで終わっていた。
「………………」
「………………」
「……なんというか」
「やるせないであるな」
「……そう、ですわね」
遺跡の静寂さと相まって、既にお通やのような雰囲気が場を支配している。
そして、そんな雰囲気を壊すようにポーンっと、いつもの無機質な音が鳴る。
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隠しCクエスト2/3 遺跡を調査せよをクリアしました。
隠しCクエスト3/3 遺跡の最奥に向かえを開始します。
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本当に空気を読まない告知音だけど、なんとも言えない雰囲気は薄れた。だから、今だけは感謝しても良いのかもしれない。
私達は無言で頷きあい、最奥目指して歩き出した。
次話かその次の話でようやく書きたかったものが書けると思うと、少し感慨深いですね。
なるべく早く更新したいと思ってます。




