第2話 キャラクターメイク2
「エンドレスフロンティアでは職業及びキャラクターのレベルがありません。その代わり多種多様なスキルと戦闘で得た経験値を使ってのステータス強化でキャラクターを強化していく事になります。SPを20お渡ししましたので、リストの中から初期スキルを選んで下さい」
私の前にあったウインドウがステータス画面からスキルのリストに切り替わる。
リストの中にあるのが全てのスキルじゃないと思うけど、かなりの数があるみたいだった。
「リストの上にも書いてありますが、装備可能スキル数は10になります。それ以上のスキルを持つ場合、控えに回されて任意にスキルを入れ換える事が出来ます。また、この場でSPを使いきらなくても残ったSPは後で使えますので、無理に使いきる事はないですし、またSPはスキルレベル10周期で1手に入りますよ」
成る程、なら無理に悩まず最低限のスキルだけ選んで残りは後で使おう。
な、に、に、し、よ、う、か、な。
沢山有りすぎて悩む。武器系のスキルだけでも剣、槍、斧、鈍器、棒、鎌、紐、杖、弓、拳、脚等があり、魔法も火属性や光属性、闇属性等から始まって、毒魔法や麻痺魔法、付与、混沌魔法等面白そうなものまである。
他にも裁縫や鍛冶、立体機動、腕力強化、脚力強化、気配察知や潜伏等、リストの中にずらりと並んでいた。
そんな中、私は一つのスキルの所で画面のスクロールを止める。
行動制限解除、他のスキルが消費SP、1から2、多くても3なのに対して、このスキルはSP10も要求される。
一体どんなスキルなのかタップしてみると━━
【行動制限解除】
特定該当スキルがなく制限されている行動の制限を解除する。
*このスキルにはレベルがありません。
*その為レベルアップボーナスはありません。
*このスキルは制限を解除するだけです。各スキルについている補正やアシストはありません。
なんとなく理解した。つまりコレ1つあれば殆どのスキルは要らないって事だよね。
よし、まずは一つ決定で、後は潔く脳筋仕様で行こう。
「決まったよ」
「はい。それでは確認させて頂きま……す!?」
素頓狂な声を上げる程ではないと思うんだけど……
CN メロディア
MP 30/30
ST 80/80
筋力 12
体力 8
器用 12
精神 3
残り経験値 0
残りSP 4
装備スキル
【斧Lv:1】【腕力強化Lv:1】【脚力強化Lv:1】【服Lv:1】【行動制限解除━】【】【】【】【】【】
控えスキル
無し
完全な物理仕様です。
「行動制限解除……ですか」
「あ、驚いたのはそっちなんだ」
「あそこまでの物理ビルドを見てれば想像はできましたから、ですが、このスキルだけは予想外ですね」
「でもこのスキルってそこまで驚くもの? 確かにSP10は多い気がするけどさ」
「そうですね、簡単に言うならこのスキルはゲームで制限されている行動を出来るようにするだけのスキルですから」
「ようはリアルで出来る事をそのまま出来るようにするスキルでしょ?」
「はい。その認識で問題ありません。ただ、他のスキルについている補正やアシストがまったくありませんので、全てプレイヤーのリアルスキルに掛かっている事と、スキルレベルがないのでSPを回収出来ない事、最悪SP10を溝に捨てた事になりかねないスキルですね」
「なら、無問題だよ」
私の想像通りのスキルならまったく問題ない。
「そうですか。でしたら最後のアバター作成に移らせて貰います」
アバター、要はゲーム内での外見作りだよね。なら早く済みそうだね。なんたって私は二つしか要望ないからね。
「ウインドウの画面を切り替えましたので、アバターを作成してください。デフォルトはリアル割れに繋がる為、なるべく控えるようにお願い致します」
あ、ステータス画面から変わってアバター作成画面に変わった。
ウインドウ内にリアルの私が映って隣に変更可能項目が並んでる。
ん? ちょっと待って、変更可能項目の中に私の要望の一つが入ってないよ?
うん。もう一度、しっかりと見たけどないね。
何でないの? あはは、嫌がらせかな?
「エンドさん。身長の項目がないけど……不具合だよね? 本当はあるよね?」
お願いします。不具合と言って下さい。
「……不具合ではなく、し、仕様でして、あ、あのそんな目で、そんな顔で私を見ないで下さい。わ、私ではどうにもならない問題でして……」
神は死んだ。いや、元から居なかったのだ。
でなければこんな、こんな仕打ちが許される筈が……
私のコンプレックスである低身長をどうにか出来ると思ったのに、後は胸部装甲も含めて理想の私になれると思ったのに……
「え、エンドさん。いや、エンド様お願い致します。本当にお願いします。1センチだけ、1センチだけで良いから、何ならSP消費してもいいから‼ だからお願いします。私を150センチにしてください」
もうこうなったら拝み倒すしか道は━━
「して差し上げたいのはやまやまなのですが……そも身長の項目自体がないので、どうすることも……」
なかったよ。
うん。気不味そうに目を逸らされるだけだったよ。
なんだろうね。凄い惨めな気分だよ。本当に惨め。
もう体育座りして地面にのの字を書こう。
「え、えっと、メロディア様、身長の変更は出来ませんけど、爪の長さとか、肌色とか、細かい調整部分もあるんですよ?」
「爪? 長いと気持ち悪いから深爪派ですけど何か? 肌色? これ以上白くなれと? もしくはバチグロのギャルにでもなれと?」
「あの、元気出して下さい。ほら、身長は無理でしたが、横周り、胸や腰等の調整は出来ますので……」
「む、胸‼ そうだ胸が変更出来るなら変更しなくちゃ‼」
そうだった。身長と同じくらい憎い、この胸部装甲を変更しなくちゃね。
よし気を取り直して変更を押して長押し。
━━マイナスをね。
「え? あの胸減らすんですか?」
「そうだよ‼ 大平原なぺったんこまでもってくよって、あ、あれ?もう減っていかないよ?」
どんなに長押ししても私の胸は微動だにしない。元々の胸から一カップくらいしか減量できてないからCカップくらいかな。
「ふ、普通は大きくする方が多いのですが……」
え? 身長が150以下しかないのに胸だけあるとか、そんなのが許されるのはアニメやゲームだけだから、第一に肩凝るし、座高が低いから机に胸が引っ掛かって痛いし、男達の目が気持ち悪いし、挙げ句叔母さんからは多分Eまで行くと思うけどって宣言されてるし、良い事なんてない。無さすぎる。
クラスの男子が合法ロリ巨乳って言ってたのを聞こえてしまった時の私の気持ちが分かるか? いや分かるまい。いや、分かってたまるか!!
だから私はこの胸部装甲を許さない。絶壁にしてやる。
「私は絶壁なぺったんこにしたいんだよ。いや、しなくちゃいけない根絶やしだ‼」
「いやいや、出来ませんから、それが限界値です。あまり多く減らし過ぎるとリアルに戻った時違和感が強くなるので、それが限界なんです‼」
「そん、な、酷すぎる」
もういいや、後は適当にやろう。
少しつり目気味なのを若干のたれ目に色を水色に変えて、髪の長さを肩まで色を青み掛かった銀に変更、これでいいや。
うん。もう何でもいい。
「出来た……」
「は、はい。そ、それでは登録作業を終了致しますね」
うん。最後の最後で大ダメージを食らった気分だけどやっと終わった。
「それではエンドレスフロンティアの世界に転送させて頂くその前に、最後にこの言葉を贈らさせて貰います。コホン、ようこそエンドレスフロンティアの世界へ、この世界は貴女様歓迎致します。不肖私エンドは四姫の一人として、貴女様の行く道に幸多からんことを祈っています。どうぞこの無限の未開拓地を貴女様の思うままに切り拓いて下さいませ」
その言葉を最後に私の足下に魔法陣とでも呼ぶべきモノが現れる。
コレで転送するんだねってエンドはいつの間にハンカチを取り出したのかな。
天使の微笑みでハンカチを振りながら見送ってくれるエンドを最後に私の意識は暗転した。