第24話 夜
今回はかなり短めです。
廃都に戻ると、廃都には似つかわしくない喧騒で満ちていた。
探索を優先したプレイヤーや拠点作りを優先したプレイヤー、私達と同じように役割り分担したプレイヤー等、皆一様に何かを話していた。
その大半が【料理】スキルを持ってない、どうしようだったのは言うまでもないだろう。
パーティーメンバーの居場所を示すマーカーを頼りに進むと、周囲と比べると一軒だけ明らかに新築と謂わんばかりに綺麗な一軒家の前に着いた。
ドアを開いて中に入ると、中も元廃虚とは思えない程に綺麗になっていて、リズ、ゴードン、ぱるぷんての他に、ブレイブ、クラウド、テッタ、リリウムの姿があった。
「ただいま戻ったけど、予想外のお客人だね」
「おかえり二人とも、いやー、周囲の調査をして帰る時にばったりあってね。探索を優先した結果、寝床や晩御飯の用意もないって話だったからさ。男二人はどうでもいいけど、流石に女の子二人を野宿させるのは、ね。だから拾って来ちゃった」
テヘっといった感じで舌を出すリズ、拾って来ちゃったって猫や犬じゃないんだから……
「寝床はともかく、ご飯は【料理】もしくは【行動制限解除】があればなんとかなるでしょ?」
そう言うと、目の前にいる全員が私から目を逸らした。隣を見るとサンゴも明後日の方向を向いている。
………………
「いや、ほら、お姉さん料理得意じゃなくて、ね?」
頼むから胸を張って言わないで。
「……我輩もである」
も、じゃない。
「何度も包丁で指を切ったんだヨ!!」
包丁を持った事があるだけ、どっかの幼馴染よりはマシなのか?
「僕も料理は、ね。調薬なら得意なんだけれどね」
…………
「お、お母さんから台所に立たないでと懇願される程でして……」
懇願されるって、テッタ何をやらかしたの?
「こ、コンビニさえあれば生活できるもんね」
それは否定はしないけど……
「た、玉子掛けご飯ならなんとか作れるのですが……」
……そこはせめて目玉焼きって言ってほしい。
「あー、包丁持ったことないし、な?」
な? じゃない。ギルティ。
「……はぁ、台所は?」
何も言う気力がわかなかった。それよりもさっさと作ってしまった方が楽だと判断して、私は台所へと向かった。
元々が廃虚だった場所に料理器具なんて上等な物はある筈もなく、手持ちのアイテムを流用して手軽な物しか作れなかった。
普段で考えれば手抜き料理もいいところだけど、リズ達は美味しそうに食べてくれたので作った甲斐があったというものだ。
何故か数人がブレイブの事を睨んでいたけど……
食事が終わると情報の共有をする事になって、結果をまとめるとこうなった。
廃都の周りは広大な森で囲まれていて、所々に遺跡みたいな建造物がある。
イベント開始地点はパーティーそれぞれで、今判明してる中では、廃都、森、川辺の三ヶ所ある。
イベントエリアには住人はいない。
mobの強さは比較的ニ陣向けである。
食べ物は基本調理しないと食べられない物ばかり。
独特な名前のmobが数種類いる。こんなところだろう。
夕食と情報共有が終わると既に22時を回っていて、今日はお開きという流れになった。
男性は一階、女性は二階で寝る事になったんだけど、いざ寝ようとした時にリズが待ったをかけた。
何事かと思えば、パジャマに着替えなきゃ駄目とか言い出すリズ、私達がパジャマなんて持ってないからと言えば、彼女は不敵に笑い、こんな事もあろうかと等と叫びインベントリから人数分の着ぐるみパジャマを出してきた。
それを全員に渡すと早く着替えるように急かしてくる。私達は互いを見て、しょうがないかとため息を吐くとそれぞれ着替えていく。
リリウムは黄色のアヒル、テッタは茶色のリス、サンゴは黄金色のキツネ、リズは黒色のネコ、私は桃色のウサギの着ぐるみパジャマだった。
「ああ、もう幸せ、あたしは今死んでも、あたしの生涯に一片の後悔もないわ」
着ぐるみパジャマに着替えた私達をスクリーンショットで撮っているんだろう。リズの表情はいつもよりも数倍だらしなく緩んでいる。
それにしても悔いがないって、着ぐるみパジャマくらいで大袈裟過ぎる気がする。
リズはまだ騒いでいるけど、明日の朝食の事も考えなくちゃ、いや私が作る事になるんだから早めに寝るとしよう。
流石に寝具は無かった為、リズが鞣した毛皮を下に敷いて、上にも毛皮を掛けて目を閉じる。
明日は何をしよう。流石に十日間もお風呂に入れないのは嫌だから、お風呂の浴槽になる物でも探そうか、それとも遺跡でも調べに行くか、まぁいいや、明日の朝考えよ。
リズの騒ぎ声やテッタ、リリウムの会話も次第に聞こえなくなっていき、私の意識は深い闇へと沈んでいった。
着ぐるみパジャマが書きたかっただけです。後悔はしていない。




