第19話 大図書館
六日ぶりの休みを満喫中。
難産でした。
ブレイブの依頼を受けてからリアルで二日が経過した。昨日は朝からアップデートして、その後第二陣が来てと、大分色々とあった。
初のアップデートで、生産スキルのアシスト機能の向上、これにより鋼製の武器で☆4が出回り始めたらしい。まぁ、私には関係の無い話である。
私に関係があると言えば、ステータス強化系のスキルが弱冠下方修正された事、下方修正とは言ってもそこまで大幅ではなく、一次スキルのレベル20後半くらいの感じで、そこまで不便に感じてはいない。更に称号システムの開放。称号は自分では設定できないらしく、世界にどう認識されているかというものらしい。
私の称号? 【第一の街のアイドル】だったよ。私は何時の間に偶像になったんだろうね? 解せぬ。
後は今までは隠されていた内容で、(ブレイブ曰くマスクデーターと言うらしい)街毎の信用度が分かるようになった。
後は、ギルドを結成出来るようになったらしい。リズをお抱えの職人にしたいとかなりのギルドが勧誘に来てたけど、それを全てを断っていた。私はあの世界イベントでの活躍から戦闘員として数件勧誘があったけど、勿論全拒否した。
今は何処もギルドの人員集めに忙しいらしく至るところで勧誘がおこなわれている。そんな中、私は第三の街にある大図書館へと足を運んでいた。
入場料を払って中に入ると、ズラリと書架が並び立っていて、その中にところ畝ましと書物がしまわれている。
私がここに来たのは、もしかしたらミスリルの精練方法がわかるかも、わからなくても特性くらいはわかるんじゃ無いかと思ったからだ。
鉱石や鍛冶関係の本を探していると、不意に知らない男性から声を掛けられた。
「これはレアプレイヤーがいるものだ」
「誰?」
警戒心を顕にしながら問うと、男性は失礼したと言い頭を下げた。
「俺はティーダ、掲示板で名高き暴虐姫に出会えるとは思わなかったよ」
何その暴虐姫って……
「それは私の事?」
「ああ、犯罪プレイヤーを狩る時の君を見たプレイヤーがいてね。その時の様子が暴虐の限りを尽くすかのようだったと掲示板に書かれた事から生まれた君の二つ名だね」
世界イベントが終わってから数日、私やブレイブ達が等級の高い武器を持っているんじゃないかと予測したPK達が連日襲ってきたので、その全てを一蹴したのだが、その一部を見られたのか。
けど、何その二つ名悪意しか感じないんだけど……
「……私はメロディア、その二つ名では呼ばないで」
「了解した。しかし、ここに他のプレイヤーが来ることが珍しいんだけど、何か調べに来たのかな?」
何て答えようかなぁ、正直に言うのは論外だし、無難にいくか。
「大図書館って言うくらいだから、何か役に立つ情報がないか探しに来ただけ」
「ふーむ、役に立つ情報、ね」
ティーダは私の事をじっと見つめて、顎を指で撫でている。
「うん。ここで会ったのも何かの縁、もし有力な情報が欲しければ、【古代語】のスキルをとった方がいい。俺は此所が開放されてから大半籠っているけど、日本語、つまり現代語で書かれている本にはたいした事は書かれていなかったよ」
「何でそんなことを教えてくれるの?」
聞いてもいないうえに、ティーダには得がない。ましてや私達は今さっき会ったばかり、これと言った理由が見当たらない。
「ん? そうだね。縁は異なもの味なもの、善行は巡り巡って帰って来る、そんな感じかね? ま、信じるも信じないもメロディア次第って事かな」
嘘を言っている目じゃない。これでも人を見る目、取り分け悪意の類いには敏感なつもりだ。
目の前のティーダからは私を騙そうとするような雰囲気を感じない。
私はスキルリストを出して、【古代語】のスキルを探す。
「俺が言うのもなんだけど、そんなにすぐ信用するのは、どうかと思うけど?」
「何? 私を騙す気だったの?」
あ、あった。SP2かぁ。おまけに【行動制限解除】と同じでレベルがないタイプのスキルみたい。これだとこのスキルを取っている人はあまりいないかな。
大半のプレイヤーは戦闘系のスキルを多く取る筈だから、このようなサブスキルにSPを割く人は少ない。
私は必要になりそうだから迷わず収得する。残りのSPは12になった。
さっそく、【合成】のスキルを控えに回して【古代語】のスキルを装備する。
「そうじゃないんだが、まぁ、いいや、欲しい情報があるといいね」
「ありがとう」
ティーダはばつが悪そうに頬を掻くとそれだけを言い残して去っていった。
ティーダが去った後、私は目的の本が無いか探して館内を歩いていた。
タイトルだけを見て歩いているんだけど、古代文字はまるでミミズが走ったような線みたいなものにしか見えなかった。……これは確かにスキルがないと読めない。
スキルの恩恵で古代文字の上に翻訳された現代語が書かれている。
しかし色々な本がある。現代語で書かれている本だと【ゴブリンでも解る生産の仕組み】【ゴブリンの三分クッキング】【ゴブリンに習う基本戦闘指南】【ゴブリンでもモテるイメチェン術】【ナタリーのいけない午後】【オークと美幼女】【ローザ様が教える調教術】
……何これ、【古代語】のスキルがいらない本すべてハズレなんじゃ無いかと思うほどのタイトルしか無いんだけど……美幼女って、せめて美少女にしようよ。とんでもない犯罪臭が漂ってるから……
誰に需要があるのかわからない棚を抜けると、今度はミミズのような文字、古代文字で書かれた本がずらっと並んでいる本棚になる。
【人魔戦争記】【四姫神の加護について】【素材図鑑】【幻獣図鑑】【生産のヒ・ミ・ツ】【十二帝獣について】【魔族との確執の歴史】【人妻ナタリーのいけない午後】【魔石の真実】【ダモクロス王朝文明録】【突然変異種の実態】【歪みの向こうに】【魔闘騎士オーク】【物質の等級】何点か変なタイトルが混ざってたけど、現代語に比べて有用そうな本が揃っている。
これはティーダに感謝しないといけないね。そう思っていると、一冊の本が目に止まった。
【鉱石の特性辞典】これならミスリルについてもわかるかもしれない。私は【鉱石の特性辞典】を手に取って机の方へと向かった。
椅子へと座り、革表紙の本を捲り目録を開く。目録には知らない鉱石の名前がズラリと並んでいる。
アダマンタイト、オリハルコン、神珍鉄、神鍛鉄、黒鉄、白鉄、白霊石、虹、心命石等々、色々と鉱石の金属の名前がある中、ミスリルの名前を見つけて、そのページを開く。
───────────────
ミスリル鉱石
伝説に名高いアダマンタイトと同じような特性を持つ金属である。
上記の金属と比べれば性能は見劣ってしまうものの、十分に良質な素材であり、比較的軽いながらも黒鉄や白鉄に迫る強度がある。
単体でも十分に良質素材ではあるが、その特性を活かす事が出来れば無限の可能性を秘めており、その特性は他の素材の特性を伸ばす事である。
その代表例なのがミスリル銀である、アンデッドの弱点である銀だが、耐久性に難がある素材であり、すぐに壊れてしまうが、ミスリルと銀の合金であるミスリル銀はミスリルの強度に銀の性質を持つ為、とても有効である。
勿論ミスリルと相性の悪い素材も存在するが色んな場面で活躍できる金属であると言えよう。
だが、近年このミスリルの加工が出切る生産者が減ってきている。
このままでは加工技術が失われてしまうかもしれない。それは人類に取って大きな損失であると私は判断する。
よって私はここにそれを遺そうと思う。
願わくばこれを読んでいる者がミスリルの加工を成し遂げる事を祈る。
ミスリルは炉に入れるとすぐに溶けてしまうが、これはミスリルの特性、いや、性質のせいである。
精練のされていないミスリルはとてつもなく熱に弱い金属であり、その精練にはミスリルを魔力で覆い包む事が重要なのだ。これさえ分かっていれば加工に失敗する事は無いだろう。
後は私には分からない、何故なら私は鍛冶師ではないからである。
───────────────
最後の最後でそれは必要だったのかな?
しかし、魔力で包むのか、魔力、つまりMPの事だよね? 魔力を操作するスキルがあるのか……
スキルリストを開いてスクロールしてみるけどそれらしいスキルは無い。
うーん、リズかブレイブなら知ってるかな? 聞いてみようか。
フレンド通信でリズを選択、次にはリズが出た。
『はいはい、メルちゃんから連絡が来て超嬉しいお姉さんだよ!』
相変わらず繋がるのが早い。それにテンションが高い。
「ねぇリズ、魔力、つまりはMPを操作するスキルって知らない?」
『MPを操作? うーん。知らない事も無いんだけど……』
リズが言い淀むって事は何か問題がある?
『メルちゃん、それは生産で必要になるの?』
「多分だけど」
まだ確証は無いけれど可能性は高いと思う。
『一応言っておくけど、このゲームでスキルの構成を知られるのはデメリットしかないの』
それは分かっているつもりだ。
『それが隠しスキルともなれば尚更ね』
確かに、情報を独占出来れば大きなメリットになり得る。
『もしそれを聞こうとしたら、ある程度メルちゃんが持っている情報を渡さなきゃいけないと思う。それでも良いなら段取りするけど?』
ある程度、確かにギブアンドテイクは物事の基本だ。それはしょうがないだろう。問題は渡す情報次第だけど。
「リズお願いできる?」
『……わかった。お姉さんが段取りするから、私の店まで来て』
それで通信が切れる。私は本を元の場所に戻すと、ポータルを使ってリズの店へと向かった。
月末月初で仕事が忙しくなるため、次の更新は何時になるかわかりません。できる限り早くしようと思っています。
睡魔さんが強すぎて、何度携帯片手に寝落ちしたかわかりませんorz




