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エンドレスフロンティア  作者: 紫音
第一章 始まりの街のメロディア
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第17話 四姫エンドの憂鬱

ブックマーク、感想ありがとうございます。励みになります。

「次の要望ですが、チュートリアルをつけて欲しいと要望が多数寄せられています」


 私は今、プレイヤー達から日々寄せられる意見、要望を私達の生みの親で、変態達の元締め開発部長、通称室長へと報告しています。


「あー、そう言う奴等にはこう言っておけ、人生にチュートリアルは無いだろうって」


 確かに人生にチュートリアルは無いかも知れませんが、これはゲームなのでは? そんな事を言っても聞く耳を持つ方では無いので、私は黙って次の報告をします。


「生産の難易度が高過ぎて、ゲームが進まない、どうにかしてとの事です」


「かぁー、最近の若いのは堪え性が無いねぇ、実際に同じ条件で☆6作ってる奴等がいるんだから、素直に腕を研けよ」


 あの方達五人はもはや変態の枠に片足どころか腰まで浸かっているので、一緒にされる一般プレイヤーの方々が可哀想です。それと貴方まだ、三十前でしたよね。


「まぁ、しゃーねぇか。少しアシストのレベルを上げるとするかね」


「いえ、その前に、アシスト付きでも☆6以上を作れるようにするべきでは?」


 このゲームでは生産スキルのアシストを使うと、☆5までしか作れないと言うストッパーが存在します。それを取り払えば少しは攻略も進むと思うのですが、目の前の変態ときたら。


「あ? そんなんアシスト使わない奴等との区別があって当然だろうが、スキルレベルを上げたから俺最強とか、クソゲー以外の何物でもないだろ、第一同じ条件で作れてる奴等がいるんだから、甘えんじゃねぇよ」


 先程までの弛い雰囲気から一転、真剣な雰囲気で唾棄すべきものとでも言わんばかりに吐き捨てた。


「いいかエンド、おいちゃん達の仕事はプレイヤー達のバランスをとる事でも、ご機嫌を伺う事でも無いのよ。おいちゃん達がやるべき事はプレイヤー達に公平な機会を与える事だ。断じて平等に扱うことじゃない」


 それで何を掴むかはプレイヤー達次第だと、室長は言った。


「ま、後は、強すぎるスキルとかの調整はするけどな。それ以外は俺達はノータッチなのが一番だよ」


「それだと、不公平になるのでは?」


「それの何処が悪い?」


「室長、さっきと言ってる事が違いますよ」


「あ? 一緒だよ」


 公平なのに、不公平を許すって矛盾してる。すると、室長は頭を掻きながら、心底面倒臭そうにため息を吐いた。


「ちったぁ、自分で考えろ。お前の演算能力は飾りか? おいちゃんは公平な機会を与えるとは言ったさ、でも、公平に扱うとは言ってない」


「…………」


「例えれば、クエストがそうだな。全体で一回しか受けられないクエストがあったとする。その報酬は二つと無いレアアイテムだった。一人がクリアすれば当然後は誰も受けられない。これは公平か不公平か?」


 そんなの不公平に決まってます。私の顔を見た室長は嗤い、私の答えと逆を答えた。


「答えは公平だ。そんな顔をするな。説明はしてやる」


 そ、そんな顔って、貴方が作ったんじゃないですか。


「エンド、お前さんはプレイヤーの観点から見過ぎだ。俺達は運営なの、わかるか? そりゃあ、プレイヤーからすれば不公平に感じるだろうな、だけど、俺達は公平に機会は与えた訳だ。誰か一人を依怙贔屓してクエストの場所を教えてたりしなければ、な。それをいち早く見つけた奴の頑張りは肯定されるべきであって、否定されるべきものじゃない。イベントだってそうだろ、全員に参加する機会は与えてる。それに参加するもしないも、そのイベント中にどんな行動をするも、プレイヤー達の自由だ」


「つまり、運営側から手をだしたりしなければ、それはすべて公平な結果だと?」


「ま、俺達の視点からすればな」


 でも、それだとプレイヤー間で余計な軋轢を生んでしまいます。


「それでGMコールしてくる事があれば、その時に正しい対処をすればいい。それだけだ。まぁ、ユニークスキルやユニークアイテムとかは公式イベント以外で配る気はないけどな」


 余計な仕事を増やさない為にも、色々と大変なんだぞとまたため息を吐いている。


「話を戻すか、だから頑張った奴等の結果を否定しないようにアシストのストッパーはそのままだな、アシストの機能が上がって生産が☆5をコンスタントに作れるようになれば、ある程度状況も変わるだろう」


「……分かりました」


 確かに、室長の言う事も一理ありますね。


「でだ。第二陣を入れる際、調整を行うスキルに関してだが、生産スキルのアシスト向上と、ステータス強化系スキルの下方修正だな」


「ステータス強化系もですか?」


 ステータス強化のスキルは特に異常がなかったように記録しているのですが……

 そんな私の困惑が伝わったのか室長は、若干ばつの悪そうな顔をして。


「あー、杉崎の奴が若干設定をミスってな。予定より補正値が高いんだよ。おまけあの野郎、誰にもそれを言いやがらなかったから、こないだの動画を見るまで気づかなくてなぁ、おいちゃん達の怠慢ではあるんだが、そんな訳で、告知して第二陣の合流と共に修正するかって話だ」


 あー、またあの方ですか、腕はいいんですけど、失敗を隠す癖があるんですよねぇ、それのせいで何回私達が後始末をした事か……

 思い出したら、沸々と怒りの念が、あの人のシークレットフォルダーを表に流出してやりましょうかねぇ~


「了解しました。後は公式イベントの準備と、オープン記念の終了準備、はぁ、仕事が沢山ですね」


「は、は、は、仕事があるってのは幸せな事だぞ」


 なんでこの人こんなに元気なんでしょうか。確か発売前から今日まで休み無しで出勤してる筈なんですけど……


「さて、公式イベントは俺達の悪意てんこ盛りでいくからな。またくたばれ運営とか言われるんだろうなぁ~」


「嬉しそうですね」


 なんでくたばれと言われて嬉しがるのか、生みの親ではありますが、変態の思考は解りません。


「おうともさ。おいちゃん達の悪意は止まる事を知らんのだぜ?」


 胸を張って言う事では無いでしょうに、貴方は幾つだと思っているんですか……


「あまり悪乗りしないでくださいよ。サイクロップスジェネラルの後、GMコールが酷かったんですから」


「あー、俺達で話し合ったらいつの間にかああなってたんだよなぁ、クリアされたし問題無いだろう」


 いえ、クリアしたのはメロディア様ですから、一般人の方ではどれだけ被害が出たかわかりませんよ。

 しかし、あの方もああいった技術を何処で覚えてくるんでしょうか? 謎多き方ですね。


「よっしゃ、後三十連勤くらいはやってやらぁ、ははははははははは」


 …………私も頑張らざるを得ないようですね。あの方達に任せきりになると、とんでもないことになるのが目に見えてますし。とても憂鬱です。

 レス達にメールして、対策をとるとしましょう。



次回から二章に入ります。

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