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親友の妹はなぜスト子なのか?  作者: 南条仁
第1シリーズ:親友の妹はなぜスト子なのか?
28/90

第27話:さぁ、準備OK? 反撃開始だよ!

 いつものバスの車内で、八雲は朝から和奏に腕に寄り添われていた。


「おい、スト子。俺に抱きつくのはやめないか」

「嫌です。先輩が私を本気にさせたんですよ?」


 昨日の件がうやむやになるわけもなく。


――いくら落ち込んでたとはいえ、いきなり手を出すか、俺。


 正常な判断の元で行われた行為ではなかったと、昨夜に反省しきりの八雲だ。

 物事には順序があり、告白もせず、行為に及んだ自分は責められても当然だろう。


「先輩の愛は受け取りました。もう私たちはラブラブですね」

「ま、待て。落ち着け」

「落ち着け? まさか、先輩。昨日のキスをなかったことにしようとしてません?」


 彼女は至近距離の八雲に甘える口調で、「してませんよね?」とさらに追い込む。


「私を可愛くて素敵でいい女だと言ってくれました。迷わずお嫁さんにしたい、と」

「そこまでは言ってねぇよ」

「では、今言ってくださいな。貴方の言葉で、貴方の本心が聞きたいです」


 キラキラと輝くような目線を向けられると、視線を逸らすしかない。


「そ、それよりも、昨日の件だが……」


 と強引に話をすり替えようとする。


「昨日のキスの件ですよね? 私のファーストキスを奪われたコトでしょう?」

「ぐぬぬ、話がすり替わってないし」

「先輩がその件をうやむやにする気満々の様子なので。私、こーみえても、ねちっこい性格をしてますから。何もなかったことにはしませんよ?」

「……しませんか」

「しませんねぇ。私にとっての最大のチャンスですもの。先輩がまだ曖昧な態度をとるならば、昨日、私の純潔を散らされたことを世間に暴露します」

「じゅ、純潔!?」


 話が違う方向で大きくなりつつあった。


「純潔って……違うだろ。そっちの手は出してない」

「あら、私にとっては大事なファーストキスです。心の準備もする間も与えずに奪われてしまったんです。もちろん、先輩に奪われるのなら大歓迎ですが」


 ぐいぐいと迫られるのも困りものだ。

 わざとらしく胸元を腕に当ててくるせいで、その膨らみを感じさせられる。


――ちくしょう。強引に離せねぇ。


 男としての弱点を的確についてくる。

 彼女に対して八雲が取れる手段はひとつ。


「……デートまで先延ばしにさせてください」


 逃げる、ただ先延ばしと言う一番やってはいけない行為で逃げ切る。


「そう来ますか。分かりました」


 保留の件は何とか受け入れてもらえたようだ。


「デートの楽しみが増えました。最後はラブホテルの予定を入れておいてください」

「お前はそればっかりだな! このエロ娘め」

「あら、だって思春期ですもの。男の子ばかりがエロいとは限りませんよ? 女の子にだって人並みくらいの性欲はあるんですからね?」


 真顔で言われると恥ずかしいだけの話である。


「ちなみに私は一日に二回はする方ですが」

「何をだ!?」


 あまりにも猥談になりつつあるので、八雲は強引に話の流れを今度こそ変えた。


「彩萌の事だけどさ」

「彩萌先輩? 気になされるのはそちら?」

「え? あ、いや、あの……」

「へぇ、そうなんですか。言われっぱなしの那智先輩ではなく、自爆で嫌われた彩萌先輩の方を八雲先輩は気になされてるんですねぇ。ふーん」


 思いっきり棒読みなうえに、拗ねていると誰もが分かる不機嫌っぷり。


――やばい、失言だったかも。


 彩萌にまだ気があるのではないかと疑われている。


――もう今さらどうにかなるとは俺だって思ってないさ。


「彩萌先輩がそんなにいいんですか? 見た目は可愛らしいですが、ビッチ的な性格ですよね。清楚ビッチ。あの人、男の子に愛されたいだけの人ですよ? 相手が先輩じゃなくてもいいんだと思いません?」

「び、ビッチ? いろいろ言い過ぎだ!?」

「ゆるふわ系で天然。あれが素だと言うのなら、同じ異性としては苦手です。ああいう、あざと可愛いのが先輩の好みなんですか」

「……アイツが可愛いのは認める。男なら誰でも好きだろ」


 アイドルっぽい容姿に性格、男を魅了する魅力が溢れている。


「私も彩萌先輩みたいな性格なら先輩から愛されちゃいます?」

「……スト子には似合わないだろ。キャラのタイプが違いすぎる」

「そんなことないよーっ。アヤはぁ、男の子なら誰でもいいんだ。たくさん愛されたいだけなのぉ。だってアヤはぁ、エッチでドMなんだもんっ」


 わざとらしく声真似をする和奏。


「お前、彩萌をバカにしてるのか? あん?」

「ご、ごめんなさい。調子に乗りました。怒らないでください、ぐすんっ」


 彩萌のことをディスられて八雲が不愉快さを示すので素直に謝る。


――無駄に彩萌の声真似が似てたのも、余計に腹立つ。


 元カノへの複雑な想い。

 何とも言いづらい男の悲しい気持ちが見え隠れする。


「……うぅ、まだ未練ありまくりじゃないですか」

「だから、違うっての。彩萌の事はいいとして、那智はどうにもならないだろう。アイツに言われたことに反撃することもできず。俺にできるのは彩萌への対策ってだけだ」


 元恋人がひどい目に合う前に何とかしてやりたかった。

 その結果は見るも無残な結果だったわけだが。


「ふむ、先輩。では、こうしましょう。私が那智先輩を血祭りにあげて」

「――ッ!?」

「こほんっ。もとい、お仕置きをしてくるので、それが成功したら私と心置きなくお付き合いしてくれるという方向で検討してください」


――今、平気な顔をして血祭りって言いましたよ、この子。


 言いなおした所で、やっちゃう意味自体は変わっていない。


「ムカつく相手ほど、倒した時のすっきりとした気持ちは快感ですよね?」

「快感って笑顔で言われても、やろうとしてることはひどいからな?」

「あちらが喧嘩をふっかけてきたのなら、受けて立つまで。私、昨日は黙ってましたけど、今日はやる気満々ですよ。念入りに作戦まで考えてきました、えへへ」


 満面の笑みで答える和奏が本気で怖い八雲であった。

 バスの車内の片隅だけが重すぎる空気に包まれている。


「何を企んでやがるのですか?」

「それは秘密です。ですが、暴力行為ではないですよ。私も暴力は苦手なので。ですが、精神的にはトコトン追い詰めていきたいと思っています」

「……那智の擁護をする気はないけどさ。その、やりすぎるなよ?」

「やりすぎるな。つまりは心を折りまくって不登校に追い込む真似はするなと?」

「どこまで追い込むつもりなんだよ、お前は!?」


 逆に那智が心配になってきた。


――相手の心配をさせるほどに、こいつが本気なると恐ろしい気がする。


 和奏はそっと自分の手を八雲の手に重ね合わせて、


「頑張れ、と言ってもらえれば、私は狩猟犬並みに頑張ってきます」

「……が、頑張れ?」

「はい! 先輩の望む通り、那智先輩をコロコロしてきますね(はぁと)」

「やっぱりダメだ、頑張るな。コロコロするはやめろぉ!?」


 不穏な空気を漂わせる恋する乙女。

 恐ろしすぎる反撃が今、始まろうとしている。

 


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