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第一章-side_A- 3 死なない

「ふん、気に入らないツラだな。貴様みたいな奴は、こいつを見せれば少しはビビるものだが」


「ひっ」


 悲鳴を上げたのは、欣乃介の傍にいる少女だった。

 この国での一般人は滅多に本物を見ることはなく、その先を向けられれば無条件で両手を上げてしまうようなモノを、その男は取り出したのだ。

 拳銃。見事に銃口はこちらを向いている。

 だが欣乃介は臆さない。

 こういうのも――見慣れている。


「ふん、度胸はあるようだな」


「ちなみに聞いておきますけど、当てられるんですか、この風の中で?」


「心配するな。これはそういう類の拳銃じゃない」


「ッ」


 欣乃介は思わず舌打ちをしてしまう。しまった。もうこんなところまで技術は浸透し、扱われるようになってきていたか。


「画期的な技術は、まずは武力目的で応用されるのだよ少年」


 ――この世界には『超能』と呼ばれるエネルギーが存在する。

 魔宝石という鉱石の発見が世界を変えた。

 超能は技術となり、世界に受け入れられたのはここ数十年の出来事。


「つい最近まで人が両腕で抱えなければならないような物にしか備わっていなかった『超能』だが、時計の針は刻一刻と針を刻んでいる。ついにここまで小型化が進んだのだ。コレはデータ採集のための試験用だが、試し撃ちをしてみるとなかなかのものだったぞ」


 流暢に、男は調子よく話す。だがその間も、銃口は欣乃介たちから目を離さなかった。


「超能、ね…………知ってます? 昔は魔法って呼ばれていたんですよ」


「小耳にはさんだことがあるな。魔宝石発見前の伝説だとか……噂に過ぎん」


「噂じゃないですよ――僕はそう呼んでいましたから」


 少年は強風の吹く中、一歩前へ足を出す。同時に少女へ後ろに下がっておくよう手で合図をする。


「ほう、向かってくるか」


「こうすることで、彼女に銃弾が当たる可能性は低くなっていく」


「その代わりに貴様は死ぬぞ」


「いいえ、死にませんよ」


 にらみ合う二人。一触即発――まさしくそんな空気だった。

 そして――緊張の糸が切れる。


「――フッ!!」


 勢いよく駆け出す少年に対して、男はただほんのわずかな動作をするのみ。ある程度の照準を合わせ、その引き金を引いた。

 轟音とともに射出されたのはただの銃弾ではない。超能の加護を負った、風を纏った一撃。

 銃弾はその威力と速度を纏う風とともに上昇させ、吸い込まれるように少年の右肩へ向かう。

 次の瞬間、耳を疑うような音が周囲に広がる。


 ガキィン! と、まるで金属や鉱石同士が衝突したような甲高い音が鳴ったのだ。


 間違いなく少年の身体へ銃弾は直撃した。当の少年もまた、左肩の部分から後方へ体勢を崩しかけている――しかし。


 踏みとどまる。


 警備服の目を疑う光景がそこにはあった。

 出血がない。傷も存在しない。まるでそこには何も当たっていなかったかのように、彼の身体に変化は見られなかった。


「痛てて…………ね、死なないでしょう」


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