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一枚の布から  作者: 松田
1/3

シャワーを浴びて浴室を出ると洗面台の上にバブが置いてあった。

なんで入るとき気がつかなかったんだろう、と、今更後悔。

そして、面倒がって風呂に入ろうとも考えなかったことにも後悔。

今日は本当に1日を長く感じた。経理課の安永裕子が子犬を拾ったはいいが、自分の家はペット禁止だからと引き取り手を探していた。私もそれを手伝って一日中社内をうろうろしていたから、もう足が痛くてしょうがない。

体を拭いて、部屋着を着る。

リビングのテレビをつけてとりあえず一息着く。

私は裕子に電話をかけ、捨て犬の事を、その後どうなったか聞いてみた。けれどなかなか探すのは難しいみたいで、引き取り手が見つからない事を嘆いている。後ろで子犬の吠える音が聞こえた。

私はそれだけ聞くと「それじゃあ、明日早いから」と言って電話を切った。

そして、一度洗面所に行き歯を磨きながらリビングに戻りテレビを見る。

そこでは、いつものようにサンマが暴れ回っている。

歯を磨き終えると洗面台に行き、口をゆすいだ。そして、私は見ていた番組もそこそこに、切って寝室でベッドに潜り込んだ。

朝になってみればまためんどくさい。髪をとかして。歯を磨いて。部屋着を脱ぎ、スーツに着替える。ウイダーを飲んで家を出たら、満員電車に乗らなければならない。

私はいつも、この時点でほとほと疲れてしまう。

私は、とりあえずいつもの電車に乗れたことにホッとした。

ん?なんか変な感触。お尻の上で何か大きなものがせわしなく動いているきがする。

大きななにかはするりと足の方に落ちたかと思うと今度はスカートの中に入ってきた。

そこでようやく、私は痴漢だと気がついた。

痴漢は私のあそこに無理矢理指を入れてきた。

痛い・・・。怖い・・・。

こういう時に怖くて何も言えなくなるって、本当なんだな。

私はただただ怖くて、助けを求めようにも声が出なかった。

すると、痴漢が「えっ!?」と、ものすごく小さい声で驚いていて。

「お前、もしかして・・・ごぶっ!」

痴漢が何かを言おうとした時、私は自然と肘を振っていた。

後ろをむいてみると、みぞおちに入ったらしく、苦しそうに呼吸をしようとしている痴漢の姿があった。

あまりにも、ちっぽけで陳腐な存在に見えたので、私は近くの男性に「この人痴漢です」と、伝えた。

次の停車駅につくと、痴漢は無理やり下ろされた。

「お話を聞きたいのであなたもよろしいですか?」

痴漢に会うのは今日で3回目。

こうなることはわかっていた。

私は「はい」と答えて素直に電車を降りて、駅員と痴漢と私とで、取調べ室のようなところに行った。

会社は完全に遅刻決定だな。






「ちょっと真里、大丈夫?」

「いや、全然。まだあそこが気持ち悪い気がする」

「真里も災難だったねー」

こいつ、本気で同情する気あるのか?

まあいいや。

「それよりさ、昨日の子犬、飼い主見つかった?」

「いやーそれが全然なんだよねー。学生が飼い主探してるわけじゃないんだしすぐ見つかるかなーと思ってたけどさ」

大家に見つかったらアウトだというのにのんびりしてるというか何と言うか。まあ、そういう裕子だから落ち着くんだろーな。めちゃくちゃ振り回されるけど。

「ねえ、なんで真里はダメなんだっけ?」

「言ったじゃん。うち猫が遊びに来るから犬は入れてらんないの。喧嘩しちゃうよ」

「そっかそっか」

あははと、笑いながら自分の頭をぽんと叩く仕草はまるでどこぞのおじさんである。

「それじゃあ日下部真里さん、今日も飼い主探し手伝ってくれるかな?」

「えー!また?」

めんどくさいなあ。

「そこはいーともーでしょーよー」

「だって疲れるんだもん。昨日どんだけ歩いたと思ってんの?」

「わかったわかった。見つかったらダッツおごってあげるから」

「それなら・・・」

「やりぃ!」

裕子はパチンと指を鳴らした。

今時ハーゲンダッツでつられる私ってどーなんだろ。

裕子とトイレを出ると、トイレの前の自販機でタバコをふかしてる男が一人。

総務部の緑大地がいた。

緑は私たちと同期で入ったくせにぐんぐん出世していったいわゆるエリートで、同じ会社に務めていてもいつからかあんまり姿を見なくなった男だ。大きな肩幅とすらっと長い脚、ピンとのびた背筋。そして爽やか系の二枚目で声も性格もいいと来たもんだから、うちの女子社員にかなり人気がある。

緑はこっちに気づくと手を振ってきた。

「いこっ」と裕子に誘われて緑の所へ行く。

「久しぶりだね緑君」

「だね、2人は最近どうしてたの?」

「あたしはね、経理課に配属決まったんだ」

裕子はすごく得意げでなんだか楽しそうだ。

まあ、そりゃそうか、この中で出世してないのって私だけだし。

「日下部さんは?」

私はまだ無所属だと伝えた。なんだか少し、恥ずかしかった。

「そーなんだ。なかなか上手くいかないね」

緑は驚きもせずそんなことをいう。

「どこか、希望の部署はあるの?」

「あんまりないかな」

「無欲だね、どこか着きたい部署にアピールすれば、それだけですぐ出世出来るんだけど」

「まあ、あんまり仕事に興味わかないからねー。やらされてるって感じだし」

「そんなんだから真里は出世できないんだよ!」

やれやれというふうに肩をすくめる裕子。

「でも、俺が知ってる頃の日下部さんは安永さんより仕事できたよね」

「なんですとっ!?」

「確かに」

「真里!?」

そうして、裕子をいじっている3人の笑い声が、休憩所いっぱいに広がっていた。






緑に子犬の話をしてみたところどうやら引き取ってくれるらしい。

一人暮らしだと金にも結構余裕が出るんだそうだ。

裕子は緑と子犬の引渡す場所などの打ち合わせをするというので私だけ先に仕事場に戻った。

私だけ出世しないと言ってもここにはそういう人が何人もいる。かれこれ4年も無所属の人さえいる始末だ。

あの人は終わってるな。と思うけど、やっぱりここはみんな同じだから安心出来る。

ときどきすごい熱心に出世しようと頑張ってる人がいるけど、そういう人に限ってこけてしまうのは本当に不思議だ。

頑張っても報われない世の中じゃあ頑張る気にもなれない。

子犬の件も片付いたので、今日はのんびり仕事をしてのんびり帰宅した。

おかげで大分気分がいい。

洗面所へ行き、シャツを脱いで、タイツもおろして、洗濯機にポーンと放り込んだ。今日はバブがあることも忘れていない。

湯船の中に放り込むと早速泡が出てきた。その上に足を置くとなんともこそばゆい。

だんだんとお湯の色が変わってバブも最後にはオニオンリングみたいになってお湯の中に消えていった。

どうしよう、バブを使うといつもここで迷う。タイミング的には出時なんだけどバブ溶けたばっかりだし・・・。

迷ったあげくまあいいや。と思いその後10分くらいつかっていた。

風呂から上がり、体を拭いて、パンツを履き、部屋着を着る。

ケータイを見てみると裕子からラインが来ていた。

『子犬 土曜日 上野公園』

『なんでカタコトなの?』

『なんとなくね』

なんだそりゃ。

『とにかくありがと真里。明日ダッツ奢るよ』

『バニラ味がいい』

『おっけーそれじゃあ、また明日ー』

『じゃーね』

裕子にしては珍しくすぐに切ってきた。

まあいいか。と思い、冷蔵庫から缶ビールをとり出した。

私は、眠れそうもない時はビールを睡眠薬替わりに飲んでいるのだ。

一本飲むといい具合に酔と眠気が襲って来た。

私はすぐに歯を磨いて布団に入る。

幸せなことに不眠症で悩んだことのない私はこの日もすぐに眠れた。

つぎの日、会社に行くと同期の子で同じく無所属だった子の移動が決まっていた。

今月に入って3人目。

同期で残っているのは私を含めて4人だけだった。

さすがの私も少し危機感を覚える。

このまま私だけ取り残されてしまうんじゃないだろうか。

そうなると嫌な妄想が止まらない。

仕事中、私は気分が悪くなったと言ってトイレに行った。

個室に入り。スカートを下ろして、パンツを下ろす。

そのまま少し座り続けた。

気分が大分ましになったところでスカートを履いて個室を出て、手を洗ってトイレを出た。

それでも、デスクに戻る気にはなれなくて、少し外に出たくなったので階段を降りていると下から緑が来た。

私に気がついたようで、にこやかに手をふろうとすると階段に躓いて転んでしまった。

つい、おかしくて笑いながら「何やってんの?」と言うと、こけた姿勢のまま顔をあげた緑は大きく目を見開いた。

そして、目をそらされた。

かと思うと今度は走って階段を登って来て、何も言わず私の手を取って走り出した。

一階まで駆け下り、会社をでて、近くの公園のベンチの近くまで引っ張られた。

「急になに!」

あまりの出来事に驚いた私は、つい、声を荒らげて問いかける。

すると、彼も応戦するように、声を荒らげこそしないものの、相手を竦ませるには十分な怒気を含んでこう言った。

「日下部さん・・・なんで、パンツ履いてないんだよ」






その夜。私は久々に、緑とラインをしていた。

それというのも、緑がしつこく事の真相を聞きたがるからだ。

まあ、緑なら他言するような事はしないだろうし、信用できる。

だからこの機会に、少し相談しようと思った。

『ねえ緑、私の秘密教えてあげるからさ、相談に乗ってくれないかな?』

3分ほど空いて。

『わかった、何ができるかわからないけどやってみるよ』

『ありがとう』

そこで一呼吸。大きく吸って、少しずつ吐いて。

『それじゃあ話すけど』

『こい』

『私ってね、昔からひどいストレスを感じるとパンツを脱いじゃう癖があるの。もうずっと前から。やめた方がいいのはわかってるけど・・・やめられない。やるとね、見つかっちゃうかもしれないって言うスリルがあるの。そのドキドキが私をストレスから解放してくれる。だから、いつの間にかやめられなくなった。どうしたら私のこの癖、なくなるのかな?』

『つまり、日下部さんの相談事って言うのはやめたいってことでいいのかな?』

『そうだね・・・うん、ごめん。やっぱり無理だよね。医者でもないのにそんなことできる筈ない。ごめんね、こんな困っちゃうこと言って。何もしなくていいから、せめてばらさないでくれると助かります』

『ばらさないよ。ばらさないし、そんな話しづらいことを話してもらった以上協力しないわけには行かない』

やばい、なんか泣きそうだ。

緑って、こんなに頼もしいやつだったっけ?

『それじゃあ、何が原因で今日は脱いでたのか言える?』

『今日は多分、また同期が一人無所属から抜けたからだと思う。』

『へー、ちなみに誰なの?』

『八千代さん』

『ああ、彼女か。日下部さんは八千代さんのことどう思ってたの?』

『えっと・・・なんとも思ってなかった』

『じゃあ、嫌いでもなんでもないわけか』

『そうだけど』

『じゃあ八千代さんが出世したときどんな風に感じた?』

『すごいなーって思って、いいなーって思って、また一人居なくなったなーって思った・・・かな』

自分がどう思ってたのかを話すのって意外と難しいんだなと思った。

しかし緑はこんなに質問してどーしよーというのだろう。

『ちなみにさ、同期で残ってるのあと何人?』

『私含めて4人だよ』

『だからか』

『え?』

『日下部さん』

『はい?』

『俺が面倒見るから、なるべく早く出世しよう。すぐにでも』

『え、うん・・・ありがとう』

なになに?どういうこと?

私には全く訳がわからない。なんでそんなことになったんだろう。

『え、緑。1つ聞いていい?』

『なに?』

『どうしてそんなことになったの?』

『それは・・・うーん。説明しにくいけど日下部さんのストレスを一刻も早く無くすためだよ。その為には出世してもらわないといけない』

『そ、そう』

正直なんだか良く分からない。

わからないままに今夜は、どうすれば出世できるかと言う話に進んでいって、私が寝落ちするまで話していた。

朝ラインを見ると、午前2時半の緑の『ねないで大丈夫?』で止まっていた。






少しだけ朝が楽だった。

寝落ちした次の日はだいたい辛いものだけど、不思議だ。

冷たいダッツの甘さも十分感じられる。幸せだなー。

「それってさー、緑君のこと好きになっちゃったってことなんじゃない?」

「え?それはないでしょ。別に話しててドキドキしたりとかしないよ?」

「まだその時は好きじゃなかったんだよ。昨日話してて、好きになっちゃった。みたいなさー」

「それは関係ないんじゃない?」

「えー?なんでよ?」

「なんとなく・・・かな・・・」

「んー?」

「なんかさ、好きって良く分からないんだよね」

なぜだか自分の発言に自身が持てなかった。というか、なんかずれてる様な感じがした。

「そーいえば、緑にあの子渡したの?」

「まだだよ。明後日渡すの。ついでにデートしちゃったりして」

裕子の目を細めてにんまりと眺めてくるのが、なんだかいやでつい目を逸らしてしまう。

「そーなんだ。頑張ってね」

突然立ち上がって「うん!頑張る!」と言って、裕子は自分のオフィスに戻っていった。

さて、私の昼休みまだちょっとあるし、今特に任されてる企画ないし。

暇だなーと思って背もたれにだらんと寄りかかると、椅子が硬いせいかあまり心地よくなかった。というか、やってたら首がつりそうだ。

でも、景色は良いと思う。ガラス越しに見える庭はすごく綺麗で、木漏れ日も暖かくて気持ちがいい。

トイレに行きたいと思ってないときはいつもここにきている。というか、オフィスをでたら目の前にあるのだ。椅子がもうちょっと柔らかければ良かったのに。

なんて考えていると突然頭の方からにゅっと顔が出てきた。

私は驚いて、急に顔を上げると激痛がはしった。

おでこがじんじんする。

「いったー」といってしゃがみこんでいる相手を見ると、昨日移動していった八千代さんだった。

「何してるの?」

「いや、まだ荷物の整理が済んでないから。昼休みにしちゃおうと思ったんだけど・・・・・・」

八千代さんもおでこを押さえて笑っている。

なんだか私は、またおかしく感じてきて笑ってしまった。

「真里ちゃんは何してたの?」

「休憩だよ。ぼーっとしてた」

「真里ちゃんぼーっとするの好きだもんね。前世はなまけものかもね」

「ああ、でもずっと木に掴まってるのもそれはそれで疲れそうじゃない?」

「いや、最近はそんなことしないでテレビゲームとかパソコンばっかやってるらしいよ」

「ニートじゃん!」

そっちのなまけものだったのか。

「それじゃあ、荷物移動さすから」といって、八千代さんはオフィスに入っていった。

緑は総務部で、裕子は経理課。八千代さんも所属決まって。

私は人事部と言う名の無所属でいつまでもくすぶってることを実感して。トイレにいった。

トイレを済まして、脱いでいたスカートを履いた。

パンツは履かずに。






今日は久々に会社が休みで、私は家でゴロゴロと転がっている。

土曜日、暇を持て余した。

行こうと思えばどこにでもいける。でも、家から出る気になれなかった。

裕子は緑と上野公園で子犬の引き渡しデートの予定。

暇なのは私だけなことに少し寂しさを感じていた。

本当に何もする気力がない時には人間なんにも出来なくなるものだ。ということをしみじみと感じる。

友達から借りていた映画を見る気もしないし、ケータイをちらりとも見る気が起きない。どころかもう午後1時だというのに朝ごはんも食べていなかった。

朝起きたのは午前七時。そこから何もせず、気がつけばこんな時間だ。緑と裕子は無事子犬の引き渡しを済ませたのだろうか。済ませていたとして、今二人は何をしてるんだろう。

頭も体も動かないくせに、こんな事にだけは頭を働かせている。

あまりに不毛な気がするので、昼寝をすることにした。何もしようとしないよりは少しくらい生産的なんじゃないだろうか。

這い出てすらいなかった布団の中にまた潜っていって、眠りの中に潜っていった。




起きると緑からラインが『子犬を引き取りました』と来ている。

『名前は付けたの?』

『カムにしたよ』

『カム?』

『そう、よく噛むからカム』

『安直だね』

緑はさっき買ったばかりだろう新しい玩具に噛み付いているカムの写真を送ってきた。

『へー、かわいいね』

『すごい愛らしいよ、犬種はどうやら秋田犬らしい』

『なんでわかるの?』

『動物病院いったら教えてくれた』

『そーなんだ』と返して、もう一つ気になってる話題に踏み込む。

『裕子と今日遊んだの?』

『いや、今日はカムつれてすぐ帰ったよ』

『そーだったんだ』

緑とラインを一区切りつけて、私はお風呂に入ることにした。






八千代さんの荷物はすっかり片付いて、また一つ誰もいないデスクが増えた。

そのデスクを来年入ってくる新入社員が使うのを想像する。

最初は騒がしいがみんなどんどん居なくなって、今頃の季節にはオフィスも静かになっているんだろう。

そしてまた、怖くなった。

まだ仕事中だろうけど、緑にラインを送ってみようか。

返事はすぐに来た。

『わかった、昼休み少し外に出よう。いい場所知ってるから』

12時半に会社の前で待ち合わせて、2人で街に出る。

定食屋が集まっている路地に入って、しばらく歩いたところにある少し廃れた感じの定食屋。

中もやはり、外見に負けず劣らずの廃れぶり。

安いことだけが取り柄のような、ぼろぼろのお店。

でも、なぜか落ち着くし、食べてみれば美味しかった。

「こんな店あったんだね」

「いいとこだろ?」

「うん」

「ところで」といって真剣な顔になり「今日はどうしたんだ?」と緑は聞いてきた。

その目が視界に入ると、私は逃げられなくなった。

オフィスで想像してしまったことを、緑に話す。

「それじゃあ、それが怖かったんだ」

「多分」

「確かに、自分一人だけ残されるのって少し怖いよね」

といって緑は唐揚げを1つ食べて。

「じゃあ、日下部さんは出世したいんだね?」

「うん、したい。私だけ残されたくない」

「それじゃあ、俺が推薦しとくよ。もともと日下部さんは仕事ができるから、そんなにむずかしくもないよ。多分すぐにでも上にいけると思う」

「ほんと?」

「ああ、本当だ。そうすれば、日下部さんももう脱ぐ必要なくなるだろ?」

「・・・・・・」

「だから、俺も頑張るかさんを出世させる。どこか希望する部署はあるか?」

「それじゃあ、裕子と同じ経理課で・・・」

「わかった」と、緑は言って、残っていたおかずをぱくぱくと食べだした。

今まで我慢していた食欲を一気に開放したように。

食べながら、沢山話しをした。主に、裕子のことで。その中で私はなんとなく。緑は裕子が好きなんだろうと思ってしまった。

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