第5話 罪の重さ
軽いグロ描写あります
イコリティ教会へ向かって走る。前方にアイクス騎士団の騎士達が横一列に並んで道を塞いでいる。全員が俺へ剣を向けて立っていた。複数の殺気が飛んでくる。
「ははっ」
笑いが漏れた。口元が緩んでしまう。
そうだな。そうだよな。俺に相応しいのはこういう戦場だ。血が騒ぐ。本当に最悪な気分だ。
「全員、殺す」
地面を思いっきり蹴った。
「貫け。疾風の矢」
剣を引いて、前へ突き出す。剣から凄まじい突風が吹き出す。風は矢となり、敵の体を貫く。前方にいた騎士たちは、宙を舞い上がり、地面に叩きつけられた。
倒れた騎士達を避けながら、教会へ向かう。扉を蹴破ると、無数の矢が飛んできた。
「なるほどな。天井が高いのは、そういう事か」
教会の天井は尖っていた。三角形を描いている。天井の左右からは無数の四角い棒状の岩が飛び出ていた。数十個の岩の上には、信徒たちが矢を構えて立っている。
「このサンテス王国は、君には合わなかったか?」
ゼロがゆったりとした足取りで、俺に向かってくる。
「そうだな。不気味で気味が悪い」
「ふむ。ならば、仕方がない」
ゼロが黒い本を、懐から取り出した。表紙に天秤が描かれている本だ。
「大義のために、死んでくれ」
床から、四角い岩が飛び出してきた。体が上へ飛ばされる。同時に信徒たちの矢が襲いかかる。
「飛べ。暴風の鳥」
体を捻って剣を振る。緑の風は翼の形となり、信徒たちを吹き飛ばす。信徒たちは地面へ落ちていく。風は羽根となり、ひらひらと宙を舞った。
「岩の山」
ゼロの声とともに、岩が下から飛び出る。俺は迫り来る岩を避けていく。宙を舞っていた風の羽根が、ゼロの体にまとわりついた。
「羽根よ、花と散れ」
空へ飛び上がる。空中で体をひねった。指を鳴らせば、風の羽根が花火のように爆発した。
「くっ!」
ゼロがよろめいた。俺は重力のままに、下へ落ちていく。刀をゼロに向かって振り下ろす。だが、ゼロは飛び退いた。俺の刀が床を抉った。
「邪神サマから、力を借りてるんじゃないのか?」
「君は強いな」
「お前が弱いんだよ」
ゼロは深くため息をついた。ゼロの口から、赤い吐息が出てきた。床からも赤い煙が出てくる。
この気配は邪神のモノか。なるほど、ようやく本気になったわけだな。
「俺の本気を見せよう」
床から、巨大な天秤が現れた。ゼロは天秤の竿の部分に座っている。右の皿には岩が乗っている。左の皿は空だった。
「君の罪をはかる」
床から、鎖が飛び出てきた。咄嗟に上へ飛ぶが、右足首を捉えられた。
その瞬間――
意識が飛んだ。
これは……
「ノクス! 剣の打ち合いをしよう」
レオンとの記憶だ。
「ノクス、空って何でこんなに広いんだろうな」
そうだ。レオンはいつも笑顔だった。どんな時でも、俺に笑いかけてくれた。
「ノクス、ごめんな……」
俺が、俺のせいで……
俺は地面に倒れるレオンを見ている。雨がレオンの体を濡らしていく。彼の目は固く閉ざされている。黒髪の男性が剣をレオンに振り下ろした。
「やめてくれ……」
レオンの腕を、足を、切り落としていく。
「見たくない」
男性はバラバラになった彼の体を、邪神の像の前に置いた。
『邪神様。どうかノクスの力を、より高めてください』
「ああ……」
男性の声が耳の中で響く。
『この村が安泰しますように』
心が冷えていく。
「全部、俺のせいだ……」
後悔の波が、脳で揺れている。痛い。胸が痛い。何もできなかった。何も知ろうとしなかった。だから、失った。
あの時、俺は怖くて動けなかった。
『これが、君の罪か』
ゼロの声が頭に直接届く。
天秤が傾く音がした。




