第1話 少女は妹の身代わりで嫁がされる
もう少し妹の嫌味とかそれへの復讐をしっかり書きたくなったため、連載版を開始しました。
第1話より加筆してみたので、よかったらご覧ください。
もちろん溺愛も多めにします。短編はある意味ネタバレにもなるので、連載版からそのまま読んでくださっても大丈夫です!
「フルーツ……?」
フォークもなく少女は手でそれを口に入れる。
しかし、次の瞬間少女の眉間に皺が寄り、入れたばかりのフルーツを吐き出した。
「あはははっ! ほんとにコイツ食べたわ! あーおもしろ。それは腐った苺よ! あ~少しはスカッとしたわ! 聖女だからって建国式典の日にかき氷しか食べちゃダメなんて、ほんといつの時代の話なのよ!」
少女の醜態を笑った彼女は、少女の妹である。
屋根裏部屋に幽閉されている姉を嘲笑いに来たのだ。
「シンシアお姉様の食事なんて残飯で十分でしょう?」
「はい……」
妹にひどい扱いをされても何も言い返さない。
(大丈夫。今日も我慢していれば終わるわ……)
シンシアは心の内でそう思い耐える。
そんな彼女の耐え忍ぶ態度が気にくわなかったのか、妹サマナは不機嫌な顔になり彼女に近づく。
「全然応えてないようね、じゃあこれはどう……?」
「待って、それは……!!」
シンシアが大事にしているネックレスを引きちぎると、そのまま小窓の外へ投げた。
「あ……」
絶望の色を見せるシンシアに、サマナは不敵な笑みが止まらない。
「あはっ! あははははは!!!! 最高っ!! その顔が見たかったのよ!!」
「お願いします! あれだけは、あれだけは返してください!」
「知らないわよ。自分で取りに行けば? あ……お姉様はこの屋根裏部屋から出られないんだったわね! ごめんなさ~い!」
彼女がここまで虐げられているのには理由があった。
姉のシンシアは生まれた時には両親である国王と王妃に愛されていた。
しかし、三年後に妹サマナが生まれると態度は一変する。
サマナはバルジア王国の暦で最も聖なる日とされる、八月八日に生まれ、さらに占い師によればこの国の守り神である太陽が最も輝きを放つ、正午に生まれた。
サマナは聖女としてこの国の象徴とされて彼女の笑みは人々を幸せにするとされることとなる。
サマナの神聖化だけであればよかったのだが、ここからシンシアを奈落の底へと突き落とす出来事が起こる。
元々、占い師の家系に生まれた王妃が、シンシアの誕生日に国が滅びる夢を見たことをきっかけに、シンシアを忌子として幽閉してしまう。
こうして、姉シンシアは忌子、妹サマナは聖女として扱われることとなった──。
わざとらしく高笑いをして去っていくサマナは、扉を開けた時に「あっ」と小さく呟いて戻ってきた。
そして、姉に冷たい視線を送ると、残酷な命令を下す。
「あんた私の代わりにヴァーリス帝国に嫁にいってちょうだい」
「え……?」
「あの残虐皇帝、王女をよこせってうるさいらしいのよ。うちはあいつの国から輸入してる氷がないと夏を過ごせないし」
サマナは腕を組みながら高いヒールを鳴らしてイライラとしている。
しかし、今度は笑みを浮かべて姉の髪を乱暴に掴むと、骨ばった貧相な姉の体をじろりと見つめる。
「幸いにも髪色も私そっくりだし、瞳も青。ふん、ドレスさえちゃんと着てベールをして婚姻の儀にのぞめばバレないわ」
「でも……」
「口答えするの……?」
「……いえ」
シンシアの返答を聞いたサマナは満足気に笑みを浮かべ、部屋を後にする。
(サマナの代わりをしなければ……)
どう思いながらも残虐皇帝に嫁ぐと聞いて震えが止まらない。
ヴァーリス帝国の人間は野蛮で気が荒く、そして皇帝ルナリドはミスした部下を殺したり、敗戦国の皇族は皆殺されたりとまさに残虐という名が相応しいと、シンシアは妹より聞いていた。
それゆえ、そんな国に嫁ぐのはとても恐ろしいのだ。
(でも、ここにいるよりはマシなのかも……)
一生を牢で暮らすなら、彼に嫁ぐなり殺されるなりしたほうが楽かもしれない。
そうシンシアは思った。
シンシアの婚姻の儀は三日後に行なわれた。
そして、ついに皇帝ルナリドと対面を果たすこととなる。
第1話をご覧いただきありがとうございました!
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