第25話「新しい舞台(ステージ)」
Atelier Étoileの休業が明けた朝。
営業再開の日。
みらいたちキャストは、開店前の店に集まっていた。
まだ看板の灯りはついていない。
けれど扉を開けた瞬間、店内から小さな歓声が上がった。
「すごい……」
昼のコンセプト、「星の工房」に合わせたテーブル席。
木目を生かした温かなデザインに変わっていた。
天井には星のように小さな照明が散りばめられ、やわらかく店内を照らしている。壁のあちこちには、星空を模した装飾と、落ち着いた木の香り。
どこか、静かな工房のような空気だった。
「めっちゃ変わってるやん」
「かわいい……」
キャストたちの声が弾む。
そして店内奥。
カウンター横には、以前より広くなったスペース。
照明に照らされた、ステージが設けられていた。
夜のコンセプト、「星のステージ」。
床には星を模した装飾が散りばめられ、天井のスポットライトで輝いている。
昼と夜。
二つの顔を持つ店。
そして、入り口近く。
みらいが提案した場所。
——星のギャラリー。
壁際に設けられた棚には、星のモチーフの装飾が施され、
スポットライトが静かに空間を照らしていた。
まだ空っぽの棚が、作品を待っている。
店内奥では、ひかりが腕を組んで店内を見渡していた。
その隣で、直人が最終の変更点の説明をしている。
「ここの導線を少し広くして、ステージ側にもお客さんが回れるようにしました」
「なるほど」
ひかりはゆっくり頷いた。
その表情は、満足そうだった。
「おかげさまで、思ってた通りの感じになりました。お疲れ様です」
ひかりが言うと、直人は少し照れたように笑う。
「いえ、コンセプトがはっきりしていたので、やりやすかったです」
そこへ、みらいが少し遠慮がちに近づく。
「……三浦さん」
三浦さん、という呼び方が少し照れくさい。
前に会った日とは、少し違う距離だった。
「ギャラリー……素敵です」
直人は振り向いて微笑んだ。
「ありがとうございます。みらいさんの作品、飾ってみましょうか」
「はい。今日、持ってきたので……」
みらいは鞄からスケッチブックを取り出す。
課題で描いた静物画。
そして、キャラクターのイラスト。
棚に一枚ずつ並べてみる。
光に照らされた絵が、壁に静かに並ぶ。
「なんだか、こうやって見てもらえるのって、照れくさいですね」
みらいが言うと、直人は絵を見ながら頷いた。
「素敵な作品ですね」
少し間を置いて続ける。
「見てもらえるって、作品も幸せだと思いますよ」
「僕も、こうやって手がけたお店がお客さんでいっぱいになれば、すごく嬉しいです」
みらいは、直人を見て頷いた。
「さーて」
ひかりがぱん、と手を叩く。
「それじゃ、開店準備!」
キャストたちの視線が集まる。
「みんな、新しい舞台で頑張っていこう」
店内が一気に動き出した。
テーブルの確認。
メニューの準備。
ステージ照明のチェック。
みらいも、新しい制服に袖を通す。
鏡を見ながら、リボンを整える。
開店時間。
入口の灯りがついた。
Atelier Étoile、営業再開の日。
ほどなく、扉が開く。
「あ、みらいちゃん」
常連の一人が笑った。
「新しい制服、似あってるやん」
「ありがとうございます」
さらに店内を見渡して言う。
「おお、めっちゃ変わってるやんこの店」
「そうなんです。改装したんですよ」
みらいが答えると、別の常連が壁の棚に気づいた。
「これ、誰が描いたん?」
「実は……私です」
少し恥ずかしそうに笑う。
「えー、めっちゃ上手いやん」
「ちょっと照れるんですけど、見てもらえるの嬉しいです」
店の中に、少しずつ人が増えていく。
笑い声。
グラスの音。
新しくなった店の空気が、ゆっくりと動き始める。
みらいは店内を見渡した。
ステージ。
工房。
そして、ギャラリー。
ここはもう、自分の居場所だ。
新しい舞台 (ステージ)が始まった。




