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よみがえるエトワール  作者: yoshinoya ussie


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20/29

第18話「クリスマス」

 12月も、もう後半に入っていた。

 Atelier Étoileは、明日からのクリスマスイベントの準備のため、臨時休業。

 ひと通り飾り付けを終えたあとの、少しだけ落ち着いた空気が残っていた。


 テーブルのまわりに集まっているのは、ひかり、直人、みらい。

 直人は、みらいが提案したギャラリーの図面を持ってきている。

 みらいは今日は休みだったが、図面が仕上がったと聞いて、大学終わりに少しだけ立ち寄っていた。


 テーブルの上に、直人が図面を広げる。


「……わぁ」

 思わず、声がこぼれた。


 そこには、みらいが何枚も描いて渡していたラフスケッチが、きちんとした設計図として形になっていた。棚の配置、導線、細部の意匠まで——。


「すごい……イメージ通りです」


 みらいがそう言うと、直人は少し照れたように頷いた。


「よかったです」


 みらいが考えたテーマは、『星のギャラリー』だった。

 写真やオブジェ、絵画を並べるための棚やフレームの中に、さりげなく星を思わせるモチーフが散りばめられている。


「みらいさんのデザインが良かったので。こちらも、頑張りました」


「ありがとうございます……」


 そのやり取りを、ひかりは一歩離れたところから見守りながら、静かに頷いていた。


 ——ほんま、お似合いやな。

 心の中で、そう思う。


「じゃあ、みらいもイメージ通りみたいなので、この感じでお願いします」


「わかりました」


 直人は図面と資料を丁寧にまとめ、帰り支度を始める。


「あ、みらいももうええで」

「休みのところ、わざわざおつかれさんでした」


 ひかりが声をかけた。


「え、でも、店閉めるの手伝いますよ」


「ええねんええねん。やっとくから、はよ帰り」

「明日から忙しくなるしな」


 そう言って、ひかりは柔らかく笑う。


 みらいは少し迷ったあと、直人と目を合わせて、頷いた。

 二人はひかりに挨拶をして、並んで店を出る。


 外は、ちょうど夕暮れに差しかかる時間だった。

 少し歩いたところで、自然に二人は手をつなぐ。


「ギャラリー……ありがとうございます。ほんと、イメージ通りで、すごく嬉しくて」


「こちらこそ。みらいさんに喜んでもらえたらと思って」


 直人の言葉は、飾り気がなくて、まっすぐだった。

 その分、胸の奥が少しだけ強く跳ねる。


「このあと、どうしましょうか。みらいさん、時間あります?」


「はい。大丈夫です」


 みらいは、少し考えてから、ふっと思い出したように言った。


「あ、そういえば……」

「クリスマスマーケット、行きませんか。梅田の」


「ああ、やってますね。行きましょうか」


「じゃあ、行きましょう」


 二人は電車に乗って、梅田へ向かった。


 梅田スカイビルのクリスマスマーケットは、すでにたくさんの人で賑わっていた。

 屋台の明かり、大きなクリスマスツリー、行き交う人の声。


「ここ、高校のとき、友達とは何度も来たことあるんですけど……」


 みらいは、少しだけ言葉を選びながら続ける。


「……彼と、一緒に来てみたいなって。ずっと思ってて」


 一瞬、間が空く。


「夢が、叶いました」


 最後は、少しだけ照れたように笑った。

 直人は、隣で穏やかに微笑む。


「みらいさんの夢が叶って、よかったです」

「これからも、いろいろ叶っていくといいですね」


 みらいは、そっと肩を寄せた。

 二人はマーケットをゆっくりと歩く。

 食べ物を選んだり、飾りを眺めたり。


 その途中、みらいの視線が、ある店の前で止まった。

 星のモチーフがあしらわれた、レザーの手作りストラップ。


「これ……」


「いいですね」


 直人が、みらいの視線を追って言う。


「それじゃ、二人でお揃いで持ちませんか」


「え……嬉しいです」


 直人は迷いなく、二つ分を会計すると、ひとつをみらいに手渡した。


「わぁ……ありがとうございます」


「これ持ってたら、みらいさんが、いつも近くにいる感じがするかな、と思います」


「……私も、です」


 そのあとは、食べ歩きをして、ツリーの前で写真を撮って。

 特別なことはしなくても、ただ一緒にいる時間が、心地よかった。


 帰り道。みらいは直人に微笑みながら話す。


「今日、一緒にいられると思ってなかったので、ほんと嬉しかったです」

「クリスマスは、ずっとお店なんで……会えないかな、って思ってたので」


「僕も、今日一緒に過ごせて嬉しかったです」


 駅に着き、改札の前で立ち止まる。

 お互い手を振りながら、別れた。


 さっきまでつないでいた右手が、まだあたたかい。


 少しずつ、確かに近づいている二人の気持ちを感じながら。

 みらいは、静かな幸せを胸に抱いて帰路についた。

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