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よみがえるエトワール  作者: yoshinoya ussie


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第9話「もりっち」

 みらいがAtelier Étoileに入店して三ヶ月ほどが経った、七夕の夜。

 普段よりも賑やかな店内は、スタンド花や飾り付けでひときわ華やかだった。


 この日は、みらいにとって初めての生誕イベント。

 テーブル席は、見慣れた常連の顔と、最近増えた“みらい推し”たちで埋め尽くされていた。


「……こんなに、来てくださるなんて」


 胸がいっぱいになるのを必死で抑えながら、みらいは一人ひとりに頭を下げる。

 嬉しい。

 けれど、どこかくすぐったくて、少しだけ恐縮もしてしまう。


 そんな熱気の中、ふと入口がざわめいた。


 みらいの視線の先に立っていたのは、見慣れない男性。

 落ち着いた雰囲気で、派手さはない。

 けれど、ひかりのすぐ隣に立ち、静かに店内を見渡している。


 ——誰だろう。


 その男性の隣で、ひかりは珍しく力の抜けた表情をしていた。

 仕事中の張りつめた顔でも、チーフとしての顔でもない。

 どこか、素のままの笑顔。


 気になって、休憩の合間に他のキャストへ小声で尋ねてみる。

 すると、返ってきた答えは意外なものだった。


「オーナーの森下さんやで」

「元エトワールのマネージャーで、ひかりさんの旦那さん」

「普段ほとんど来ることないけど、今日は生誕やから来てくれたんちゃう」


 ——旦那さん。

 胸の奥で、その言葉が静かに響く。


 解散後に事務所から独立して、この店を立ち上げたらしい。

 たぶん……ひかりのために。


 生誕イベントが無事に終わり、少し落ち着いた頃。


「もりっちー」

「みらいもー、こっちこっち」


 ひかりに手招きされて、みらいはその男性の前に立った。


「こちら、星野みらい」

「最近、すごく頑張ってくれてる子やねん」


「……森下誠司です。はじめまして」

「今日は、おめでとうございます。素敵なイベントでしたね」


 低く穏やかな声。

 多くを語らないけれど、その一言に、きちんと人を見ている温度があった。


 ひかりは、当たり前のように彼を「もりっち」と呼ぶ。

 その呼び方に、長い時間と信頼が滲んでいるのが分かる。


 ——ああ。

 この人が、ひかりさんが本気で好きになった人なんだ。


 そう思った瞬間、自然と納得がいった。

 静かで、揺るがなくて、でも確かにやさしい。


「……素敵ですね」


 そう口に出しかけて、みらいは胸の中に言葉をしまった。


 いつか、自分も。 誰かと、こんなふうに並んで立てる恋愛ができたらいいな。

 祝福の余韻の中で、みらいはそっと、そんな未来を思い描いてみる。


 短冊が、静かに揺れていた。

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