表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よみがえるエトワール  作者: yoshinoya ussie


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/19

第8話「ひかりさん」

 店内は、いつもより少しだけにぎやかだった。


 カウンターの端で、

 ひかりが、常連の男性客たちと談笑している。


 三人とも、年齢はばらばら。

 でも共通しているのは、

 ひかりのエトワール時代からの推しだったということ。


「いや〜、やっぱりこの店来ると落ち着くわ」

「ひかりちゃんおると安心するし」


 そんな言葉に、ひかりは肩をすくめて笑う。


「もう“ちゃん”はやめて言うてるやろ」

「今は店の人やねんから」


 口調は軽いけど、どこか距離をきちんと保っている。


「せやけどさ」

「リーダーやった頃と全然変わらへんな」


「変わったで?」

「前はこんな立ち仕事、毎日してなかったし」


 そう言いながらも、笑顔は自然で、無理がない。

 ファンだった頃の思い出話になっても、ひかりは過去を美化しすぎない。


「楽しかったけどな」

「しんどいことも、正直あったし」


 それでも、三人はどこか誇らしそうだ。


「でも、こうしてまた会える場所作ってくれたんやから」

「それだけで、俺らは嬉しいわ」


 ひかりは一瞬だけ言葉を止めて、それから、少し照れたように言う。


「……大げさやな」

「ただ、居場所があったほうがええ思っただけや」


 少し離れた場所で、みらいはその様子を見ていた。

 トレイを持ったまま、ほんの一瞬、足を止める。


 ——ああ、って思う。


 ひかりさんは、『元アイドル』だからすごいんじゃない。

 “今もちゃんと信頼されている人”なんだ。


 昔のファンと話していても、

 距離が近すぎない。

 でも、冷たくもない。

 相手の気持ちを受け取りながら、

 線は、きちんと引いている。


 ——簡単そうで、たぶん一番むずかしい。


 ひかりがふと視線を上げて、みらいに気づく。


「みらい、次いける?」


「はい、すぐ行きます」


 返事をしながら、みらいはもう一度だけ、ひかりを見る。


 元ファンに囲まれていても、浮つかない。

 懐かしさに流されない。

 それでいて、その場の空気は、ちゃんとあたたかい。


 ——なんか、いいな。


 そう思いながら、みらいは再び仕事に戻った。


 カウンターの向こうでは、ひかりが変わらない笑顔で、今日も店を回していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ