24話
セーレ、マーク、ビィシャアは、満月亭からほど近い距離の飲食店で夕食を楽しんでいた。
「乾杯!!」
ジョッキ片手に、発泡酒の安酒が進む。
セーレはあっという間に飲み干すと二杯、三杯目とハイペースだ。
四杯目に入って、彼女はべろべろに酔っ払っていた。どうやら、アルコールには弱く酔いが回りやすいらしい。
「そのくらいにしておいた方が……」
「あたし、まだ酔っ払ってねぇーわよ!」
(うん……酔ったセーレは新鮮な感じね。可愛い……)
ジョッキを飲み干し、セーレはおかわりを要求。しかし、マークはそれを却下。
「なんでよ〜アンタ。はじめてぇ会ったときもケチだったわね」
「飲み過ぎだよ」
マークは、セーレのジョッキを奪い取り、自身のジョッキ近くに置いた。
「何すんのよ〜返しなさいよ」
「はい、水」
マークは、グラスに入った水をセーレに手渡した。不機嫌そうな顔でグラスの水を飲み干した。
「わかったわよ〜。アンタが気になってる、この街のこと話してやるわよ」
「えっ……」
「あれはね、戦時下のときに」
◆◇◆◇
エドモンドの死の一週間前。
セーレは夜の王城にいた。王城へ来た目的は「神器回収」だ。そもそも神器とは、王城の職人達が作った「最高傑作」であり、誰も使いこなせない「無用の超物」だった。
――忍び寄る影達。侵入者が現れた。
人数は六人。
影は神器回収のため、王城の商業地区にある下水の排水口近くに集合した。
威圧する口調で、銀髪の女性に文句を言った
「おい、セーレ! お前が何で一緒なんだよ」
「テマ、私は味方よ。そんな言い方しなくても……」
「はぁ、良い子ちゃんみたいな言い分だね」
「もん、私はあなたに何か酷いことしたかしら?」
「いや、お前みたいな綺麗な顔の女を見てるとムカつくんだよな。同じ女なのに、こうも違うのかって」
――なんなのよ、まったく呆れた。
「そうなの、ムカついても同じ仲間よ。協力はしましょうよ」
「冗談じゃね」
テマは、持っていた槍をセーレの顔目がけて、突き刺そうとした。髪が白髪から銀髪となり、瞳の赤色も強く輝いた。
「ちっ、私の手を操作しやがったな」
「それが、どうしたの?」
「気にいらねぇな」
テマは槍をブンブンと振り回し始めた。背中は逆三角形、髪型は黒のショートカットで男性のような体つきだ。
「あなた、本気なの?」
「その反抗的な目。ますます気にいらねぇな」
「そう。なら、ここで力の違いをわからせてあげるわ」
「望むところだよ」
二人が一触即発しそうな場面を止めたのは、ルーサーであった。
「テマちゃん、セーレちゃんも落ち着きなよ。我慢できないのなら、後でベッドで可愛がって、あ • げ • る !」
「いや……いいや」
「……キモい」
ルーサーの発言に、セーレとテマは気持ちがいっきに冷めた。二人の争いをあたふたしながら見ていた歩兵部隊の三人も、ほっとしていた。
「こほん。取り敢えず、私が眷属にした動物達によれば、潜入ルートと見張り番はここですね」
ルーサーは、軽いデッサン調で王城の見取り図と、各地区の見張り番の配置を描いてみせた。
「お前、非戦闘員なのに、こんな得意技あったんだな」
「ほんとね、絵が上手でわかりやすい」
「セーレちゃん、ほんと嬉しいな……」
「私たちは何をすればいいかしら?」
――彼女は反応しない。ルーサーに興味がないようだ。
「……そうだね。神器の回収は、私が操る眷属のカンガルーたちがやってくれるよ。君たちは、カンガルーとオオワシ達が王城へ潜入する間、門兵を行動不能にしてくれれば問題ない」
テマは血の気が多く、暴れたがっている。
「そんな役回りか、あたしは暴れたいね」
「堪えてくれ。この作戦は見張り連中の洗脳と行動不能が目的だ。つまり、君たちが適任なんだよ。そうだろう、見えざる断罪者であり洗脳のセーレ。そして、夢の世界の誘い者であり眠りを誘発させるテマ」
――お互いの顔を一瞬見て、すぐに前を向く。
「そう、任せておいて」
「あぁ、コイツより格上ってことを証明してやるよ」
その言葉を聞き、ルーサーは目を閉じる。
別付近に待機していたオオワシの背中にカンガルーが飛び乗り、王城を目指し飛び立った。
「さて、私達、たちも行動開始ね」
セーレとテマは、下水道の排水口から、それぞれ別方向へ飛び出していった。
歩兵部隊三人には、眷属を操る無防備なルーサーの護衛を担当させた。
◆◇◆◇
「ここが、王城の行政地区ね」
セーレは、歩きながら見張り番と思しき人物達に洗脳をかけた。
能力は、相手さえ視認できれば発揮できる。
勿論、目が合っていれば、より強く絞ることも可能だ。操れる人数の限界は、百人程度だと思われる。また、洗脳以外にも人体の細胞に関与し、相手の体を爆散させる応用攻撃もある。
その頃。
別地域では、テマが能力を発揮していた。
「さて、お前らは寝ちまいな」
一方のテマは、霧を操る能力を持っていた。その無味無臭の白い霧に触れた者は眠りを誘う。その便利な能力ゆえ、王政地区を任された。唯一の弱点は、霧は風の流れに左右されやすいのだが、本日は無風とベストコンディションだ。
「さて、王城の連中は寝たかな。後は……」
一方、セーレは、行政地区の見張り番の洗脳が完了。
ルーサーが用意した眷属動物たちは無事に王城へ潜入できたようだ。
セーレは、道に迷わず対応できた自分に驚きつつも安心し、行政地区の誰もいない公園のベンチに腰を下ろした。
――そこに、何かが近づいてくる気配を感じ、身構えた。
「何であなたがここに?」
「よう。やっぱりお前とは、決着をつけないと気が済まねぇんだよ」
行政地区の公園で、仲間内のいざこざが始まろうとしていた。
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