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8.嘘の証言

 エリス姿のアイリーンは離宮の庭園を散歩しながら考えていた。


(早く犯人を探し出さないと……まずはあの毒入りのお茶を運ぼうとしていた侍女を探すべきね。それには王子殿下に会わないと……ん?王子殿下がその侍女のことご存知なのだから、侍女も取り調べ受けているはずよね?)


 そこへエドワードが来て声をかけられた。


「エリス殿、散歩かな?」


「王太子殿下にご挨拶申し上げます。少し風にあたりながら考え事をしたくて」


「邪魔したかな?エリス殿にきちんと礼を述べてなかったと気づき探していたんだ」


「礼ですか?」


「ああ、アイリーンのこともあって、バタバタしていて言えてなかった。わたしと王妃の命を救ってくれてありがとう。そしてアイリーンを庇ってくれて、無実だと言ってくれてありがとう。陛下から話は聞いた。エリス殿のおかげでアイリーンは酷い扱いをされずに済んだ。感謝してもしきれない」


 エドワードはエリス姿のアイリーンに頭を下げた。


「いえ、王太子というお立場の方がそのように格下のものに簡単に頭を下げないでください。」


 エリス姿のアイリーンは続けて言った。


「アイリーン様は絶対に無実です。わたしが犯人を突き止めて必ず無実を証明してみせますわ」


 エリス姿のアイリーンの言葉にエドワードは微笑んだが、すぐに心配そうな顔をして言った。


「ありがとう、気持ちは嬉しい。だが、エリス殿が危険な目にあってはいけない。そのことはこちらで探っているのでエリス殿は無理をしないで欲しい」


「お心遣いありがとうございます。無理せず犯人探しをしますわ。……ところでお茶を運んだ侍女はどうなりました?」


 エリス姿のアイリーンはエドワードが知っていると思い聞いた。


「お茶を運んだ侍女?……なんの事だい?」


 アイリーンは戸惑った。取り調べのときにブーリン卿に言ったし、当然アーサーやエリスからも聞いていてもおかしくないと思ったのだ。

 エリスとブーリン卿の名前は出せなかったのでアーサーの名前を出した。


「第二王子殿下から何もお聞きになっていませんの?」


「アーサーから?」


「はい。あの事件の日アイリーン様が入れたお茶は第二王子殿下が侍女から引き取って運んできたのです。」


 エドワードは驚いた顔して言った。


「なんだって!そんな話は聞いていない。こちらの調べではアイリーンが直接厨房に来て持って行ったと……」


「そんなはずありません!誰がそんなことを……」


(おかしいわ。取り調べで話したのに……よく調べもしないでわたくしを犯人と決めつけたのね)


「もっと詳しく聞きたい。中に入ろう」


エドワードとアイリーンは離宮にある書斎に入った。側近と護衛には外で待つよう伝えた。


「ここなら誰にも聞かれないだろう。どういうことか詳しく聞かせてくれ」


「第二王子殿下とは談話室のドアの前で会いましたの。談話室に行くからついでに持って行くと言って侍女から預かったそうです。アイリーン様もちょうどいらして、第二王子殿下がエリ……わたしに用があるからと言ってアイリーン様が中へ運んだのです」


「それでアーサーは?」


「わたしと……お、お話をしていたのですわ!」


 アイリーンは困った。アーサーとエリスがどこで何をしていたのかまではわからなかった。


「その、あまり話ができないうちに事件が起きたので、その後の第二王子殿下のことはよくわかりませんわ」


 アイリーンは取り調べをしたブーリン卿が怪しいとエドワードに伝えたかったが、エリスが知り得ない情報なので言うわけにはいかなかった。


「そうか……先ほども言ったが、直接アイリーンが厨房に来たと侍女が証言したらしい」


「誰がそのような嘘をついたのですか?」


 アイリーンの問いに、エドワードは何か考えている様子だった。


「……わたしが直接その侍女に聞いたわけではない。アイリーンの取り調べをした者がアイリーンの供述と照らし合わせたと言っていた」


(ブーリン卿が……なぜそのような嘘を……絶対怪しいわ)


「エリス殿、ひとつ聞いてもいいか?」


「なんでしょう?」


「エリス殿は今まで誰にもそのことを話していなかったのか?」


 アイリーンは困った。アイリーンが罪人として死刑されるのにエリスはそれを誰にも言わずになぜ黙っていたのか、それとも誰もエリスに聞いてくる者がいなかったので、そのことに関してはアーサーが伝えているだろうと思っていたか。

 アイリーンは後者を取った。


「誰も聞いてこなかったので誰にも話していません。わたしはてっきり第二王子殿下がお話になっているものだと思っていましたわ」


「そうか……ではアーサーに話を聞こう」


 エドワードは部屋の外にいる側近に、アーサーを執務室に呼ぶように伝えた。


「わたしもご一緒させていただいてもよろしいかしら?」


 エリス姿のアイリーンはエドワードにお伺いを立てるように聞いてみた。


「ああ、構わない」


 エドワードは即答した。

 エドワードとエリス姿のアイリーンは離宮を出て、本宮にあるエドワードの執務室に移動した。


 エドワードとエリス姿のアイリーンが執務室に着いてしばらくすると、衛兵の声と共にアーサーが執務室に入ってきた。

次回の投稿は11/11の予定です。

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