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48.幸せな二人

 エドワードの成人の儀式が王宮の大広間で行われた。


 白に金の刺繍があしらわれた礼服に赤いローブをまとったエドワードは、その衣装にも負けないくらいの精悍で、かつ美しい顔立ちをしていた。

 アイリーンはエドワードを見て、胸の鼓動が高鳴るのを抑えられなかった。


 成人の儀式を終え、婚約式に移った。

 エドワードはアイリーンのドレスとお揃いの衣装に変え、大広間の扉の前でアイリーンが来るのを待った。

 アイリーンが侍女に手を引かれて来た。エドワードはその美しさに言葉を失い見惚れていた。


「殿下?」


 エドワードはアイリーンの手を取り、口付けた。


「これからはエドワードと呼んでくれ……とても綺麗だ」


 アイリーンは照れながら言った。


「エドワード様もとても素敵です。成人式のときは見ているだけでドキドキしました」


「惚れ直したか?」


「はい」


「わたしもだよ」


 エドワードはアイリーンの手を自分の頬に当てた。


「愛しているよ、アイリーン」


 大広間の扉が開いた。二人は堂々とした態度で大広間に入った。

 国王両陛下の前まで行くと二人は会釈をした。国王が立ち上がった。


「王太子エドワードとバクルー公爵令嬢アイリーンの婚約を正式に認める!」


 大広間全体が拍手と歓声の渦に包まれた。

 エドワードはアイリーンの肩をだき、二人は顔を見合わせて微笑んだ。


「ここでもう一つ皆に伝えたいことがある」


 国王が言うと大広間は静まり返った。


「第二王子であるアーサーは二年後の成人を迎えると同時に、モントロール大公として王宮を出て領主になることを報告しておく。また、側妃ナターシャの姪でもある聖女エリシアもアーサーの婚約者として共に領地を治めてもらう」


 再び大広間に拍手が巻き起こった。

 アーサーは戸惑うエリスの手を取り額に口付けをした。さらに大きな拍手と歓声が起こった。


「どっちが今日の主役かわからないな」


 エドワードは笑いながら言った。


「気取らず素直に表現できるところが王子殿下のいいところですわ」


 アイリーンはアーサーとエリスを笑顔で見つめていた。


「そういえば、アイリーンはアーサーとやけに親しげだったな。アイリーンもアーサーみたいな方がいいのか?」


 エドワードは少しむくれ気味に言った。


「わたくしがエリス様だったから親しげにしてきたのですわ。わたくしは本当に困ってましたのよ。でもエリス様の気持ちを知っていたので無下にできなかっただけですわ」


 そして、アイリーンは少し俯いて上目遣いでエドワードの顔を見ながら恥ずかしそうに言った。


「わたくしはエドワード様の方が断然好みですわ」


 エドワードはその不意打ちの言葉に目を見開き、アイリーンの手を引いて柱の陰に行き、唇を重ねた。



 二年後。

 アーサーは成人の儀式を終え、アーサー・フォレスト・モントロール大公になった。

 成人の儀式と共にエリスとの婚約式も行われた。翌年のエリスの成人を待って結婚式をあげる予定だ。


「おめでとうございます。モントロール大公様、エリス様。お二人ともとても素敵ですわ」


 アイリーンは心から祝福した。


「僕はまだまだだって今日思ったよ。二年前の兄上はなんか、こう、威厳があるというか、堂々として輝いていた」


 アーサーはエドワードの全身を眺めながら言った。


「今日のおまえもなかなかだったよ。わたしに比べればまだまだだがな」


 エドワードが言うと、アーサーが意地悪そうな顔をしてお返しに言った。


「二年前は主役の二人が途中で見当たらなくなって、大騒ぎになったよね?」


 エドワードは咳払いをし、アイリーンは顔を赤く染めて俯いた。


「兄上もアイリーン嬢も変わったね。前はお互いのことよりも国や家の方が大事みたいだったけど、なんか今はとっても想い合ってる感じがするよ」


「そうだな。二年前の事件のことでお互い、いろいろあったからな。アーサーを見習わないとと思ってな」


 そう言ってエドワードはアーサーにウインクした。


「わたくしもエリス様を見習わないと思ったのですわ」


 アイリーンもエドワードを真似てエリスにウインクした。

 そして、二人は顔を見合わせて笑った。

 アーサーは首を傾げてエリスを見た。エリスは含み笑いをアーサーに向けた。


「一か月後はお二人の結婚式ですね。楽しみにしています」


 エリスが言うと、アーサーが面白そうに言った。


「結婚式当日に二人だけでばっくれないでよ!」



 一か月後、エドワードとアイリーンの結婚式は滞りなく行われ、凱旋パレードは大勢の民に祝福された。

 エドワードとアイリーンは披露宴でダンスを他の人と踊ることなく、何度も続けて二人で踊っていた。

 そのうちいつのまにかいなくなっていた主役のことは、後々まで語り継がれることとなった。


次回完結です。

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