表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7. 二人の本心

目を覚ますと、私はレオニス様の腕の中にいた。


なぜ…?必死で、最後の記憶をたぐり寄せる。

(私が、近くにいてほしいとお願いしたから…!)


「…レオニス様……」


「目が覚めたのか?気分はどうだ」


そう言う彼は、私の目を見ようとはしない。


(なぜ……このお方は一体、何を考えているの?優しく抱きかかえてくれていると思ったら、今度は目も合わせてくれない)


ぃゃ…っと小さく呟くと、手で彼を押し、体を遠ざけようと試みたが、彼の体は1ミリたりとも動かなかった。


「勘違いをするな。朦朧(もうろう)としたお前が離さないから…仕方なく、こうしていただけだ」


(そうでしょうとも。目を合わすことですら、嫌で仕方のない相手なのですものね!)


そう叫びたいのを、喉元で(こら)えて、私はある質問をした。


「あなたは、なぜ…私と夫婦(めおと)になろうと思われたのですか?」


これは、私がずっと心に抱えていた疑問だった。


無口で無愛想ながら、誠実だと思えた。あの王子は仮の姿で、ここでの彼が、彼の本心であり、素なのだと気がついた時から、ずっと不思議に思っていたこと。


「なぜ…?その質問の意図が()せぬな。陛下がお前を(めと)るよう命じたので、それに従おうとしたまでだ」


きっと、彼に自分の意思はない。彼を信じようと思った自分が間違いだった。


「いくら陛下からの命令だとしても、これから一生を共に生きていく伴侶なのですよ?そこにあなたの意思や、将来への希望はないのですか?」


「ふっ…馬鹿らしい。お前は政略結婚の意味を知らぬのか?それとも、お姫様とは総じて結婚に夢を見る生き物だと言うのか?お気楽で何よりだ」


「レオニス様…!先ほどから、なぜ私の目を見てくださらないのです!

なぜ……そこまで私を毛嫌いするのに、こうやって抱きかかえたりして優しさを見せるのです!」


ついに私の口から、本心が溢れ出す。


「私は……私はっ…!エレドーラの姫としてではなく…一人の女性として……誠実なあなたとなら…共に歩んで行きたいと…」


自然と涙が溢れ出す。


「では…お前こそ!なぜヴァルトリアから…俺の元から離れようとしたのだ!」


そこで彼の鋭い視線が、私の目を真っ直ぐに捉えた。


「自分の言っていることが支離滅裂だと気付かぬのか?」


語気は強いが、彼の手は未だに私の体を優しく抱きかかえていた。


「自分から離れて行ったと思ったら、今度は側にいてくれと懇願し……更には、共に歩んでいきたいなどと戯言(たわごと)を!そうやって、お前は今まで何人の男を(たぶら)かしてきたのだ!」


(ひどい…!私のことを、そんな風に見ていたなんて!)


窓の外では、物質が存在するはずもないのに、まるで混沌が渦を巻くように、何かが無秩序に入り乱れ、とてつもない嵐が来ているようだった。


そして私は、あの日見た光景を…彼の父、ヘラルド皇帝陛下の裏の顔を、包み隠さず伝える決心をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ