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偽りの魔女に、誓いの口づけを~この魔法、敵国の思い通りにはさせません!  作者: 咲夜
第二章:聖女と呼ばれた姫と、王子の覚悟
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闇夜の道しるべ

儀式の夜の、レオニスの大胆な一手は、国王の逆鱗に触れた。

城に戻るや否や、レオニスは父の執務室に呼び出され、私は侍女たちによって、今まで以上に厳重な、離宮の最も奥まった一室へと移された。

扉の前には、国王直属の近衛兵が二人、常に立っている。

レオニスからの便りも、完全に途絶えた。


(レオニス…)


彼が、王から厳しい罰を受けているであろうことは、想像に難くない。

自分の行動が、彼をさらに追い詰めてしまったのではないか。

不安と孤独が、再び心を覆い始める。


そんな絶望の夜が、数日続いた頃。

その夜は、一段と月が美しい晩だった。

部屋で一人、眠れずにいると、扉が、音もなく、本当にごくわずかに開いた。

入ってきたのは、リリアだった。

彼女は、強い意志を宿した瞳で、私に手招きをした。


「アイリス様、こちらへ。王子殿下がお待ちです」

「…え!?でも、見張りの兵は…」


「今夜、この時間だけ。扉の外におりますのは、殿下を支持する者たちです。彼らが、見ないふりをしてくださる、ほんのわずかな時間しかありません。さあ、早く!」


リリアに手を引かれ、私は息を殺して部屋を抜け出した。

扉の前には、二人の近衛兵が、まるで石像のように、まっすぐ前を向いたまま微動だにしていない。彼らは、私たちが見えていないかのように、その存在を黙殺してくれているのだ。

彼らもまた、命がけの覚悟で、ここに立っている。


私たちは、壁のタペストリーの裏に隠された、冷たく湿った石の通路へと足を踏み入れた。

どこへ続くとも知れない、暗い隠し通路。

時折、壁の向こうから、別の場所を巡回する兵士たちの話し声が聞こえてきて、そのたびに心臓が凍りつきそうになる。


「…大丈夫です。この先の通路は、アラン様たちが警備の目を逸らしてくださっています」

リリアの言葉だけが、頼りだった。

どれくらい歩いただろうか。

やがて、リリアは一つの扉の前で足を止め、私にだけ聞こえる声で囁いた。


「…私は、ここまでです。どうか、ご無事で。交代の兵が来る前に、必ずお戻りください」


そう言って、彼女は、来た道を引き返していく。

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