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第七話:影を断つ銀の拳

 黒い影が蠢き、空間そのものが歪む。

 イクリプスレイスが静かに手を掲げると、闇から無数の黒い人影が湧き出した。


「……さぁ、交渉人。

どこまで耐えられる?」

「私の仕事は交渉だけじゃない……。

不本意だが、こうなることも想定済みだ」


 アレックスの声は低く、静かだった。


「行くぞ、ハウ!」

(了解……。

エネルギーに余裕は無いけど、やるしかない)


 次の瞬間、銀の鎧が唸るような音を立て、層を重ねるように厚みを増す。

 イクリプスレイスは笑う。


「影は無限に増える。

こいつらは自我を持たない殺戮の獣だ……」


 意識なき影たちが、猛スピードでアレックスに襲いかかる。


「……!」


 アレックスは足を踏み込むと、正確無比な拳を放つ。

 一撃で影を砕き、次の瞬間には二体目、三体目をも叩き潰す。


「数で押せば勝てると思ったか?」


 影の群れを突き破り、アレックスは一直線にイクリプスレイスへ向かう。


「ほう、悪くない。

だが……」


 イクリプスレイスが手で合図をすると、先ほどとは違う影が姿を現した。

 不気味に瞳だけが赤く光る。


「赤い瞳の影、こいつらは違うぞ......。

さぁ、どうする、交渉人?」

「それが、どうした......!」


 アレックスは息を吸い込むと、拳を構える。


「……叩き潰す!」


 次の瞬間、アレックスは赤い瞳の影の群れへと突撃した。

 イクリプスレイスが言った通り、先ほどの影とは違う。

 闇雲に本能のまま襲いかかってきた影たちとは違い、アレックスの攻撃をかわし、その隙をついてくる。

 先ほどの影が獣なら、この影は思考を持った人のような影と言える。

 しかし、アレックスはすぐさま、その動きに対応した。

 一体目の影が鋭い爪を繰り出すが、アレックスは寸前で身を翻し、その腕を逆にへし折った。


「……次っ!」


 二体目の影が背後から飛び掛かる。

 だが、ハウが伸び、銀の鞭となって影の首を切り裂く。

 アレックスはさらに速度を上げ、残る影を一体ずつ正確に潰していく。

 だが、その動きの中でイクリプスレイスは静かに見ていた。


「さすがだな……だが、そろそろ限界か?」


 アレックスの呼吸が荒くなっていく。


「……ハウ、持つか?」


 ハウも苦しそうに声を漏らした。


(もう限界だ……でも、最後まで付き合うさ)


 アレックスは最後の力を振り絞り、イクリプスレイスに向き直った。


「何としてでも仕留める、それが今の私たちの役割だ」


 イクリプスレイスは嘲笑う。


「ならば、やってみるが良い」


 黒い影が一斉に集い、巨大な闇の獣と化す。


「……ふっ」


 アレックスはゆっくりと拳を握った。


「貴様の影など、私の光が貫く!」


 全身の銀の鎧が収束し、アレックスの拳に全ての力が集まる。


「吹き飛べぇぇぇッ!!!」


 その一撃は、まさに渾身の一撃だった。

 巨大な影の獣を正面から撃ち抜き、貫通する。


「なっ……!?

影が……!」


 イクリプスレイスの目が見開かれる。


「これが私の……最後の手段だ」


 銀の拳が闇を裂き、空間ごと貫いた。

 響き渡る破壊音。

 黒い獣は悲鳴すら上げられず、霧散する。

 アレックスは膝をつきながらも、ゆっくりと顔を上げた。


「......これが、交渉決裂の結末だ」


 イクリプスレイスは、初めてわずかに表情を崩した。

 アレックスは振り返り、美秀の方へ視線を向ける。


「美秀……ここから先は、君の役目だ」


 戦いの流れは、美秀へと託される。


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